精神科医の名越康文が分析、ドライブと相性がいい「ポール・マッカートニーが弾くウクレレ」〈Paul McCartney, Eric Clapton / Something〉
精神科医の名越康文さんが、とっておきのドライブソング4曲を紹介!
音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを紹介します。 今月お届けする4曲の選曲を担当するのは、テレビ・ラジオ出演、文筆業、そして自身のバンド活動など多方面で活躍する精神科医の名越康文さんです。
1曲目
〈Paul McCartney, Eric Clapton / Something〉
運転中は「ほどほどに刺激的」な音楽で精神を賦活(ふかつ)!
最初にお断りしますが、「精神科医が選ぶリラックスできるプレイリスト」のような選曲だと思っておられたら、そのご期待には沿えません(笑)。ストレスが完全になくなってしまったら、逆に人間はそのつまらなさに耐えきれずにかえって死に近づいてしまいますから。よほど傷ついて、音楽を聴く余裕がない人が川のせせらぎの音に救われることもあるかもしれませんが、そういう状態の方が車の運転を楽しむ余裕があるかどうか。ドライブミュージックは、ほどほどに刺激的な音楽であるべきだと思います。
「Someting」はビートルズの中でもトップ10に入るくらい有名な曲ですよね。「A Hard Day's Night」よりは知名度が上で「Yesterday」よりは下、くらいでしょうか。オリジナルバーションではジョージ・ハリスンが美しく繊細な声で歌っていますが、2002年に行われたジョージの追悼ライブの音源ではポールとエリック・クラプトンが歌っています。しかも、ポールがウクレレで弾き語りするという新鮮さがある。徐々にオーケストラが加わってきて、リズムも変化し、本当に芳醇なほど豊かなアレンジです。そのダイナミックなアレンジに、音楽好きならリピートして何度も聴きたくなりますよ。これをドライブしながら聴けるなんて、何よりも贅沢です。
運転していると、外の音も入ってきますしエンジン音もありますから無音状態ではいられないですよね。音楽の細かいディテールは聴き取りづらいんですけど、この曲はウクレレの高くてはっきりした音とポールの声だけで始まるから、すっと耳に入ってきます。あまり情報量が多すぎる曲は運転の邪魔になることもありますけど、この曲はシンプルかつ個性的な音から入ってきて、耳が慣れた頃にドーンと世界が広がります。ライブ盤ですけど非常にドライブ向きな音像と構成だと思います。車の中にいて、ポールのライブを独り占めしているような気分にもなれますね。
名越康文1曲目 精神科医の名越康文が分析、ドライブと相性がいい「ポール・マッカートニーが弾くウクレレ」〈Paul McCartney, Eric Clapton / Something〉
名越康文2曲目 ドライブ中にこそアイデアがひらめく! 「フロー」な集中力が高まる〈Neil Young / Heart Of Gold〉
名越康文3曲目 名越康文が選ぶ、運転中の振動と「バラバラこそのかっこよさ」が絶妙に合う曲〈Junior Wells / Messin' With The Kid〉
名越康文4曲目 名越康文が称える天才、矢野顕子が生み出す豊かな「ゆらぎ」〈矢野顕子+TIN PAN Part Ⅱ / ひとつだけ〉

名越康文
なこし・やすふみ 1960年奈良県生まれ。精神科医、ミュージシャン。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪精神医療センターにて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍中。「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話https://yakan-hiko.com/nakoshi.html」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)https://nakoshisemi.yakan-hiko.com/」配信中。
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