聞き手・構成=張江浩司 / 編集=神保勇揮(FINDERS編集部)/ イラスト=若林 萌

失恋して北に向かう車中、音楽で初めて涙した夜〈CARPENTERS / I Need To Be In Love〉

アカペラボーカルグループRAG FAIRの土屋礼央さんが、とっておきのドライブソング4曲を紹介!
土屋礼央

音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを紹介します。 今月お届けする4曲の選曲を担当するのは、アカペラボーカルグループRAG FAIRのメンバーで、ソロ活動やテレビ・ラジオ出演など多彩な活動を続ける土屋礼央さんです。

1曲目
〈CARPENTERS/ I Need To Be In Love〉

土屋礼央が失恋ソングを書くようになったワケ

僕が免許を取ったのは19歳の頃。母親も同じ時期に取ったので、家族で共用の車を買ってもらいました。車種は当時藤井フミヤさんがCMをやっていた、トヨタのスプリンター・マリノでしたね。高校卒業後にミュージシャンを目指すべくフリーターになって、早稲田大学のバンドサークルに所属したり、その近くでバイトしたりしていたときで。バイト仲間とその車でしょっちゅうドライブに出かけてました。

ちょうどその頃にお付き合いしていた女の子がいたんです。初めて自分から告白した子でした。でも、あっけなくフラレちゃうんですよね。当時はポケベルでしたから、「アナタトイテモタノシクナイ」と半角カタカナでメッセージが送られてきて(笑)。いても立ってもいられなくて、真夜中に実家がある国分寺からあてもなく北に車を走らせたんです。府中街道を。カーナビもない時代ですよ。どの車にも「マップル」が積んでありました(笑)。荒川を越えたあたりからまったく知らない土地に突入したので、ビビった記憶があります。

で、埼玉県に入ったくらいでラジオからこの曲が流れてきたんです。どのラジオ局だったか定かじゃないですが、埼玉だからNACK5かもしれない。カレン・カーペンターの素敵な歌声がとにかく刺さったんですよ。涙があふれてきて、最後まで聴けずに途中でボリュームを絞ったくらい。音楽で泣いたのも初めてでした。ここで号泣したことでスッキリして、家に帰ったんです。カーペンターズがかからなければ、もっと北上していたかもしれない(笑)。

今でも基本的にはノリノリで楽しい音楽を作りたいと思っていますが、この経験が失恋ソングを書くモチベーションになっています。もしかしたらあの日の僕みたいな気持ちの、第二の土屋礼央がカーラジオで聴くかもしれないですからね。

土屋礼央

つちや・れお 2001年RAG FAIRのメンバーとして、サングラスと白いファーを巻いた印象的なスタイルでデビュー。瞬く間に学生からの支持を受け、アカペラ史上最高の動員数を全国各地で記録する。紅白歌合戦、オリコンシングル1、2位独占するなどアカペラブームの立役者となる。現在のレギュラー出演番組は「鉄旅・音旅 出発進行!~音で楽しむ鉄道旅~」(NHKラジオ)、「レジェンドの目撃者」(NHK BS1)など

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