歩行者のいる横断歩道を走り抜けていく自転車のイラスト
監修=遠藤まさ子(自転車の安全利用促進委員会委員・自転車ジャーナリスト)/イラスト=北極まぐ

信号機のない横断歩道で歩行者が横断中に一時停止する自転車は7%

現地調査で見えた自転車の「危険な実態」

信号機のない横断歩道で、歩行者が渡ろうとした瞬間に自転車が目の前を横切る……。街中でよく目にする光景だが、実際に自転車はどの程度、一時停止しているのだろうか。
JAF Mate Online編集部が行った調査では、一時停止率は約7%という結果だった。現場で起きていた危険行動、そして専門家の指摘から、自転車はなぜ止まらないのか、今日からできる対策を説明する。

※調査はJAF Mate Online編集部が独自に行いました。

目次

【調査結果】自転車の一時停止率は約7%。クルマとの大きなギャップも

横断歩道を渡ろうとする歩行者の手前で一時停止する自転車

調査場所の交差点。横断歩道を渡ろうとする歩行者の手前で一時停止する自転車

調査は、東京都内のとある駅に近い交差点で実施した。信号機のない横断歩道を対象に、平日朝の時間帯に約1時間、通行する自転車の挙動を観察・カウントした。車道には自転車専用通行帯(自転車レーン)と矢羽根型路面標示(自転車ナビライン)があり、横断歩道手前には停止線があるが、「止まれ」の標識や路面標示はない。

道路交通法上、信号機のない横断歩道を横断しようとする歩行者や、横断中の歩行者等がいる場合、車両は減速し、横断歩道の手前で一時停止しなければならない。もちろん自転車も車両の仲間(軽車両)に含まれる。

自転車が止まったかどうかの判定は「横断歩道の直前(停止線付近)で、車輪が完全に停止したか」を基準にした。停止してからの秒数や足を着いたかどうかまでは厳密に判定していないが、少なくとも横断する歩行者の手前で止まったか、止まらなかったかの傾向は捉えている。また、「一時停止しなかった」の判定には、歩行者の前を横切って横断歩道を斜め横断する自転車も含めている。

この場所は朝の通勤や通学など、クルマと歩行者、自転車の交通量が多く、交差点では駅へ向かう横断歩行者がひっきりなしに続く。クルマは停止と発進を繰り返す一方で、自転車は横断歩行者がいてもそのまま通過する場面が目立った。

結果は、歩行者が横断中に交差点を通行した自転車147台中、一時停止した自転車は11台と、一時停止率は約7%にとどまった。体感的にも「9割以上が止まらない」という印象と一致する低い水準だった。

横断歩行者のいる横断歩道における自転車の一時停止率

調査時間帯に交差点を通行した自転車147台中、歩行者が横断中に一時停止した自転車は11台、一時停止しなかった自転車は136台

調査時間帯に交差点を通行した自転車147台中、歩行者が横断中に一時停止した自転車は11台、一時停止しなかった自転車は136台

一時停止しなかった自転車の進路

歩行者が横断中にそのまま通行した自転車のうち、歩行者の正面を横切った台数は86台、背面を横切った台数は50台だった

歩行者が横断中にそのまま通行した自転車のうち、歩行者の正面を横切った台数は86台、背面を横切った台数は50台だった

参考として、JAFの全国調査(2025年) では、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとする場面で一時停止したクルマは56.7%(全国平均)。過去最高を記録した一方、まだ4割以上は止まっていない。それでも、自転車の約7%と比べるとギャップは大きい。

また、過去の特命調査団「9割以上が止まらない!? 自転車の一時停止の実態を調査!」では、「止まれ」の標識がある交差点での自転車の一時停止率を調査したが、結果は約4.3%という低い数字となった。

それと比べると今回の7%がわずかに高く見えるのだが、この数字は一時停止のルールを守った結果というより、朝の通勤通学の時間帯の交差点という歩行者と自転車が入り組んだ状況で、「このままではぶつかる」と感じて止まった“受動的な停止”が多く生じたためだろう。

【調査中に確認された危険行動】

・歩行者が横断し始めた矢先、遠いほうの車線を走っていた自転車が横断歩道を斜めにショートカットして横切って来た。

・手を上げて横断している歩行者の前を、そのまま横切って行く自転車もいた。

この結果について「自転車の安全利用促進委員会」の委員も務める、自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに話を聞いた。

「肌感としては、本当に7%ってすごく現実に近い数字です。特に朝は急いでいることで一時停止しなければという意識が薄れがちです。かつ、この交差点は比較的見通しがいいので、自転車の側からはクルマが来ていないことがわかりやすく、そのために止まらない人が多いのではないでしょうか」

自転車はなぜ止まらない? 「だろう運転」と歩行者保護意識の欠如

横断する歩行者の間をすり抜けるように走っていく自転車

横断する歩行者の間をすり抜けるように走っていく自転車

調査中に目立ったのは、歩行者がいても「止まらない」だけでなく、歩行者よりも「先に行く」という動きだ。歩行者が横断しようと近づいているのに、先に通過しようとスピードを上げて来る自転車がいた。

一時停止した自転車も「このまま進めばぶつかるから止まった」ように見える場面が多く、歩行者のいる横断歩道の手前で一時停止するというルールを自覚して止まったのかは判然としない。

背景にあるのは「自転車はすぐ止まれる」、「歩行者は避けてくれる」といった過信、いわゆる“だろう運転”だ。しかし歩行者は、急に立ち止まったり、振り返ってすぐに方向転換したりすることができる。しかもベビーカーや荷物で幅を取ることも多く、通過タイミングの読み違いは衝突事故につながりやすい。

重要なのは、「横断歩道上では歩行者の進路を妨げてはいけない」という基本だ。「ぶつからなければいい」ではなく、歩行者が一歩でも踏み出せば接触する距離感で通過すること自体が危険で、そうした自転車を歩行者が避けたなら、結果的に進路妨害になり得るだろう。

【調査中に確認された危険行動】

・歩行者が横断しようと近づいているときに、先に通過しようとスピードを上げて来る自転車もいた。

・一時停止した自転車も、そのまま進めばぶつかるから止まったという感じで、ルールとして自覚しているのかはわからない印象。

遠藤氏によると「クルマと同様、自転車でも歩行者の進路妨害をしてはいけない、というルール自体をまだ認識していない人が多い」という。「一言で言うと、まともなドライバー感覚が欠けています」と、歩行者にぶつかりさえしなければいいという、結果オーライの感覚にも警鐘を鳴らす。

道路環境が生む油断: ショートカット横断とガードパイプの切れ目からの横切り

自転車の一時停止率を調査した交差点

今回の調査現場は見通しが比較的良く、横断する歩行者も車道から視認しやすい。だからこそ「直進なら大丈夫」と油断が生まれる。交差点の形状が直交ではなく変形(くいちがい)交差点であるため、横断歩道を斜めに横切るショートカットも多かった。

自転車レーンや自転車ナビラインの塗装も「ここは自転車が優先」と誤解されやすく、ノンストップで走り続けてよい道のような錯覚につながりやすい。

また、横断歩道手前にあるガードパイプの切れ目では、車道から歩道、歩道から車道へと進路を変えながら、横断する歩行者の前を自転車が横切っていく場面が多かった。こうした切れ目は動線が交錯しやすく、自転車や歩行者の動きが不規則になりやすいポイントでもある。

歩行者も、ベビーカーや赤ちゃんの抱っこ、手に持った買い物袋や傘などで、思っているよりも幅を取っているという点にも注意しておきたい。「すり抜けられる」という発想で他の歩行者に近づきすぎると、相手のわずかな動きで接触するおそれがある。

【調査中に確認された危険行動】

・ガードパイプの切れ目で、車道↔歩道へ進路を変えながら、横断する歩行者の前を横切って行く自転車が多かった。

・赤ちゃんを抱っこした歩行者の目前を横切って行く自転車もいた。

遠藤氏によると、「自転車レーンはクルマが入ってこないことや、自転車が皆同じ方向に進んで行くことから、妙な安心感を生みやすい所です。さらに自転車にはクルマのピラーのような視界を遮る死角がないので、何かあってもすぐに止まれると思い込みがち」といった過信が強まると注意する。

止まっているクルマの横をすり抜ける自転車…歩行者から見えない飛び出し

今回、特に危険を感じたのが、横断歩道の手前で一時停止したクルマの横を、自転車がすり抜けて通過する行為だ。クルマは歩行者を優先して止まっている。そこを追い抜けば、歩行者から見れば盾になっていた車両の陰から自転車が現れる格好になり、衝突のリスクが一気に高まる。

横断歩道の手前で止まっているクルマの横を走っていく自転車

横断歩道の手前で止まっているクルマの横を走っていく自転車

歩行者にとっては、クルマが止まったことで「渡れる」と判断しやすい。その直後に自転車が現れれば、回避は難しい。とくに子供や高齢者、赤ちゃんを抱っこしていたり荷物を抱えていたりするときは、視野が狭くなりがちで、そうした危険に気づきにくい。

横断歩道での接触事故は、自転車が加害者になるケースがほとんど。事故になれば、相手のけがの程度次第で高額な賠償に至ることもある。自転車が止まるべき理由は、取り締まり以前に、自分が加害者にならないためでもある。

一方で自転車に乗る人には「警察がいなければ大丈夫」、「事故にならなければ捕まらない」といった誤解も根強い。しかし事故は一瞬で起き、相手が歩行者であれば取り返しのつかない結果になり得る。まずは自転車にとって横断歩道はリスクのある場所だという認識から始めたい。

【調査中に確認された危険行動】

・横断歩道の手前で一時停止したクルマの横をすり抜けて通過する自転車もいた。

遠藤氏によると、「横断歩道上で歩行者と接触した場合、ほぼ100%自転車側が悪いとされるのが基本です」。また、子供には「自分の姿が相手に見えているとは限らない、と伝えるべき」と言う。自転車に乗る際は、こうした「かもしれない」を考えることが重要だ。

今日からできる対策: 「止まれる速度」と「すり抜けない」

歩行者と自転車の事故を示す看板

今回の調査場所付近では実際に自転車と歩行者の事故(自転車のひき逃げ)が発生している

横断歩道で事故を防ぐコツは、難しいテクニックではない。

・横断歩道は「歩行者が急に動く場所」と決めつける。

・横断歩道の手前では必ず減速し、「止まれる速度」で進入する。

・歩行者がいる場合は一時停止し、歩行者の間をすり抜けない。

自転車は車体重量やブレーキの種類、整備状態によって制動距離が変わる。整備状態のいいBAA適合車を除き、チャイルドシートや電動アシストで総重量が増えると、止まりにくさはさらに増す。たとえ歩行者が通過した後でも、その背面すれすれを走れば、歩行者の急な停止や進路変更で接触しやすい。「自転車はすぐ止まれる」という思い込みを捨て、あらかじめ余裕をもった減速を習慣にしたい。

歩行者側にも「手を上げるなどして横断する意思表示を」という啓発があるが、これはもともと歩行者対クルマを前提にした教え方だ。自転車からは歩行者の意思表示に気づきにくい場面もある。だからこそ自転車側が先に速度を落とし、歩行者の動きに応じて減速や停止をする姿勢が大切だ。

※厳しい「自転車安全基準」をクリアした「自転車協会認証」の自転車

【調査中に確認された危険行動】

・横断中の歩行者の背面すれすれを通過していく自転車もいた。

遠藤氏によると、「現在の教育現場では、自転車は交差点では基本的に徐行、というシンプルな教え方が広がっています」。小学生には厳密なルールより「止まる場所・見る方向・確かめる対象」の3点を知ってもらうことが大切で、その中でもまず交差点手前で止まることを教えるという。「子供に止まれと教えながら、大人が飛び出すのは矛盾。大人こそ学び直しが必要です」とも指摘する。

一時停止率7%という数字を自分ごとにする

今回の現地調査で、信号機のない横断歩道で、歩行者が横断中に自転車が一時停止する率は約7%という結果が出た。同じ信号機のない横断歩道でも、クルマの全国平均停止率56.7%と比べると、歩行者優先が自転車に十分浸透しているとは言いがたい。

横断歩道は歩行者の命を守る場所だ。数秒の停止が事故を防ぐ。合言葉は「止まれる速度」と「すり抜けない」。まずは明日の通勤・通学から。自転車は歩行者がいる横断歩道では、その手前で「完全に止まる」習慣を身に付けたい。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!