あおりハンドルをするクルマのイメージイラスト
イラスト=北極まぐ

ほとんどのクルマが普通に曲がる交差点でも、なぜ一部のクルマは危険な「あおりハンドル」をしてしまうのか?

ほとんどのクルマが普通に曲がる交差点でもなくならないあおりハンドル、その残念な理由

「あおりハンドル」とは、左折時に一度右側へハンドルを切ってから左折する行為で、周囲にとっては予測不能で危険な動きとなる。前回の調査「左折なのに右にハンドルを切る!? 『あおりハンドル』を徹底調査!」では、狭い路地に曲がるときのクセや、スピードを落とさず曲がるための行為という側面が浮かんできた。今回、幹線道路の交差点で調査したところ、あおりハンドルを行うクルマは前回の2割から1割まで減少した。こうしたほとんどのクルマがあおりハンドルを行わない交差点でも、なぜ一部のクルマはあおりハンドルをしてしまうのか? その理由に迫る。
※調査はJAF Mate Online編集部が独自に行ったものです

目次

あおりハンドルは違反行為! 左折時のルールを再確認

年の瀬も迫る12月の某日、本企画の調査員はとある道路の交差点付近にいた。前から左にウインカーを出したクルマが近づいてくる。「左折するのだな」と思ったその瞬間、なぜかクルマは右側にハンドルを切った……。

「あおりハンドル」あるいは「右振り左折」とも呼ばれるこの行為は、道路交通法で定められた「車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って徐行しなければならない」とのルールに反している。実際、左折ウインカーを出している車が突然右に動くことは、隣の車線のクルマとの接触や自転車、歩行者の巻き込みなど、交通事故のリスクが高まる危険な行為だ。

あおりハンドルのクルマは前回調査から半減の約1割に!

今回の調査では、東京都内の幹線道路から住宅街を抜ける道路にある交差点で、2方向のそれぞれ左折するクルマ計160台の動きを目視で観察。

片側2車線の幹線道路から住宅街の片側1車線の道路へ左折する様子

片側2車線の幹線道路から住宅街の片側1車線の道路へ左折する様子

住宅街の道路から幹線道路へ左折する様子

住宅街の道路から幹線道路へ左折する様子

その結果、左折前に右側にハンドルを切る「あおりハンドル」を行ったのは15台(約1割)となった。前回調査では2割程度のクルマがあおりハンドルを行ったのだが、それより半減したという結果だ。

あおりハンドルを行ったクルマの合計

今回の調査であおりハンドルをしたクルマは15台、しなかったクルマは145台

今回の調査であおりハンドルをしたクルマは15台、しなかったクルマは145台(JAF Mate Online編集部調べ)

幹線道路からの左折

今回の調査であおりハンドルをしたクルマは15台、しなかったクルマは145台

あおりハンドルをしたクルマは2台、しなかったクルマは45台(JAF Mate Online編集部調べ)

住宅街の道路からの左折

あおりハンドルをしたクルマは13台、しなかったクルマは100台

あおりハンドルをしたクルマは13台、しなかったクルマは100台(JAF Mate Online編集部調べ)

今回の調査結果から「あおりハンドルしにくい状況」を考える

言い換えれば、この交差点ではわざわざ「あおりハンドル」で左折する理由がほとんどないとも言えるのではないか。今回の調査現場の状況からいくつか仮説を立ててみる。

・幹線道路と左折先の道路の車速に大きな差があり、曲がる前にしっかり減速するため、あおりハンドルが起きにくい。
・幹線道路は片側2車線で交通量が多く、右側車線の車との接触を避けるため、あおりハンドルを控える傾向がある。
・交差点には横断歩道があり、安全確認のために速度を落として左折する車が多い。
・幹線道路の左側に街路樹が並び、交差点手前まで曲がる先の状況が見えにくいため、慎重に減速する結果、あおりハンドルが起きにくい。

幹線道路から住宅街へ左折する道路沿いには街路樹が並んでいる

幹線道路から住宅街へ左折する道路沿いには街路樹が並んでいる

今回の調査現場となった幹線道路のクルマの流れは車速が50~60km/hほど、対して住宅街の道路は20~30km/hと大きな差があり、幹線道路から左折するほとんどのクルマはしっかり減速して左折していた。また、幹線道路は片側2車線で交通量も多く、右側車線のクルマとの接触を避けるため、慎重な運転につながったのではないか。

さらに交差点には横断歩道があり、安全確認のために速度を落とす必要があることや、歩道との境目にある街路樹が視界を遮っていて、曲がる先の状況が見えにくく、自然と減速することにつながったのではないだろうか。

これらの点について、モータージャーナリストでありドライビングインストラクターの菰田潔氏に意見を聞いてみた。

菰田氏によると、この交差点の状況から、こうした仮説は理にかなっているという。「大半のドライバーにとっては、こうした交通量の多い片側2車線の道路であおりハンドルを行えば、隣の車線を走っているクルマと接触することが容易に想像できるのではないでしょうか。結局のところ、右左折時の減速や安全確認が徹底されていれば、あおりハンドルはほとんどなくなります。今回はこれらの要因が複合的に作用し、通常よりあおりハンドルを行うクルマが少なかったのではないでしょうか」

まったく不必要な「あおりハンドル」をしてしまう残念な理由と対策

特に住宅街から幹線道路に入るケースでは、左折しながらそのまま右側の第二車線に入っていくクルマが多く、その場合ハンドルを大きく切って曲がる必要がないようにも見えた。にもかかわらず、それでも1割程度のドライバーはあおりハンドルを行っていたわけだが、その理由はいったい何だろう……。今回の少ない事例こそが、かえって「あおりハンドル」という行為の本質に結びつかないだろうか、ここでも仮説を立ててみる。

・信号の変わり目で交差点に入った車が減速せず、そのままあおりハンドルで左折した。
・一部の大型トラックやダンプカーが、道路の幅や交差点の形状に関わらずあおりハンドルしていた。

大型車があおりハンドルで曲がるケース

車線をはみ出さずにいた大型車があおりハンドルで曲がるケースも多かった

調査で気づいたのは、信号の変わり目で交差点に入る車が、減速せずに急いで左折しようとする場面で、あおりハンドルを行うことが多かったことだ。また、夕方になると大型トラックやダンプカーが増えてきたのだが、これらのクルマは内輪差を意識してか、コース取りからは不要に思えるあおりハンドルを行っていた。

「たしかに、大型車は内輪差を気にして一瞬右に振ることが多いですね。しかし、狭い道路でなければ、交差点手前でしっかり減速し、徐行して左折すれば、あおりハンドルは不要です」(菰田氏)

左折車と並走して同じタイミングで交差点に入って来る自転車

左折車と並走して同じタイミングで交差点に入って来る自転車も多かった

実際、交差点手前で十分に減速しなかったクルマが、一瞬右にハンドルを切って曲がっていった結果、歩道を並走するように走ってきた自転車と横断歩道上で接触しそうになる場面もあった。

「それは危険ですね。あおりハンドルは、左折する直前に一瞬でも右側に意識が向くことで、左後方から来る自転車、歩行者との接触事故を引き起こすリスクが高まります」(菰田氏)

また、車両感覚がつかめていない場合にも、あおりハンドルが発生しやすくなるという。「あおりハンドルへの対策としては、以下の点が重要です」(菰田氏)

・交差点手前でしっかり減速して左側に寄ったまま左折する。
・自車の車幅や内輪差を正しく把握する。
・同乗者からの指摘やドライブレコーダーなどで自分の運転を客観的に確認し、無意識のクセを見直す。

ごく普通の交差点でも起こりうるあおりハンドル、無自覚なドライバーは今すぐ見直そう

繰り返しとなるが、あおりハンドルは、周囲の車両はもちろん、歩行者や自転車にとって予測不能な動きとなり、接触事故や巻き込み事故のリスクを高めることになる。また、同乗者にとっては車体の揺れによる不快感や車酔いの原因となる。

無自覚のうちに行っているドライバーも多いが、あらためて謙虚に自分の運転を見直し、安全で快適なドライブを心がけてほしい。また、あおりハンドルは特殊な状況でしか発生しないと思っているドライバーは、ごく普通の交差点などでも遭遇するかもしれないという危険を予測しておこう。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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