文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/図版=宮原雄太

左折なのに右にハンドルを切る!? 「あおりハンドル」を徹底調査!

本人無自覚、周囲は危険! つい不要なハンドル操作をしていませんか?

左折する際、いったん右にハンドルを切ってしまう「右振り左折」。「あおりハンドル」とも言われるこの操作、周囲にとっては予期せぬ動きだ。他車との接触、歩行者や自転車を巻き込む事故を起こしかねない危険な行為。「恐ろしいのは、『右振り左折』をしているドライバーのほとんどが、無自覚だということなんです。そこが本当に怖い」と、モータージャーナリストの菰田潔さんは警鐘を鳴らす。

目次

周囲に危険を及ぼす「右振り左折」「あおりハンドル」の脅威

「左折する際、いったん右にハンドルを切ってから曲がってしまう行為が『右振り左折』。最近では『あおりハンドル』と呼ばれることもあるようですが、あおり運転と混同する恐れがありますので、文中では『右振り左折』で統一します。

右振り左折は、道路交通法で規定されている左折の方法(後述)には明確に背いており、道交法的にはアウト。検挙されるかどうかは現場判断になりますが、やってはいけない行為です。

それは、周囲にとっては予期できない動きだから。左にウインカーを出している車が右に動くのですから、それはビックリしますよね。驚かせるだけではなく、隣の車線の車や、自車線から追い越そうとする車と接触する恐れもあります。

さらに、『できる限り道路の左側端に沿う』という本来の左折の方法ではなく、右にふくらんでしまっているため、左側にいる歩行者や自転車、バイクなどを巻き込む危険性も高いんです。

想像以上に危険な行為である、右振り左折。やっているドライバーはかなり多いのではないか、というのが私の予想ですが、はたして調査結果はどうでしょうか……?」

道路交通法第三十四条第一項

車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。

右振り左折は、道路の左側端に沿っていないうえに、徐行していないケースがほとんど。交通状況や危険度に応じて検挙されるかどうかは現場判断となるが、道交法に抵触していることは間違いない。

幹線道路での左折と住宅街への左折と、幅の異なる道路2か所でカウント

左が幹線道路からの左折、右が路地への左折

交通量の多い東京都内の道路で、状況の異なる2か所の左折場所を設定。調査地点①は片側2車線道路から片側2車線道路へと左折する大通りの交差点。調査地点②は片側3車線道路から住宅街の路地へと左折する交差点とした。

それぞれの調査地点に調査員を配し、左折する車のタイヤの向きや車体の向きを目視で確認し、右に振ったように見えた車の数をカウント。あくまでも目視のため多少の誤差は考えられるが、人の目に「右振り左折をした」と映った車であることは確かだから、大きくは外れていないものと思われる。ちなみに、調査中には、明らかな速度超過や車線からの大きなはみ出し、歩行者・自転車の巻き込みなどの危険行為は確認されなかった。

2割のドライバーが「右振り左折」…実際はもっと多い?

「今回の調査では、2つの調査地点で約2割のドライバーが右振り左折をしているという結果が出ました。この企画では毎度言っていることですが、私が普段運転しながら観察している感じからすると、もっともっと多いはず、という印象です。広い道から狭い道へ曲がる場所では、右振り左折がより多くなる傾向があります」

大通りの交差点での調査結果グラフ

調査地点①では100台中18台が右振り左折(18%)

路地へと左折する道路での調査結果グラフ

調査地点②では40台中7台が右振り左折(17.5%)

「今回の確認方法は、調査員が外から車の動きを目視したので、実際にハンドルを右に切ったかどうかまでは判定できていません。ハンドルのちょっとした動きまで確認できれば、『右振り左折ドライバー』の数はもっと増えたでしょうね。

調査員からは、ダンプカーやトラックなどの大型車は内輪差を意識して一度逆にハンドルを切っているように見えていたようです。

注目してほしいのは、状況の異なる2か所の調査地点を設けたのに、『右振り左折』するドライバーがほぼ同じ割合で存在していた、ということ。つまり、やる人はどこでも毎回やっているんですね。実はこのことが非常に怖いんです。

詳しくは後ほど解説しますが、危険な運転が常態化しているのは、自分が『右振り左折』しているのにまったく気づいていないからなんです。車種別の傾向からも、ベテランほどクセになってしまっていることがうかがえます。これはなかなか手強いですよ……」

いったいなぜ!? 左折なのに右にハンドルを切る理由

「最初に強調しておきたいのは、無自覚のうちに『右振り左折』をしているドライバーが非常に多いことです。ドライビングレッスンで私が助手席に座り、『はい、あなた今、右振り左折しましたよ』と指摘すると、たいていのドライバーが『えーっ、ホントですか?』と驚かれます。なかには『いやいや、してませんよ』と言い張る方もいるんですよ。一応私、講師として助手席に座ってるんですが、だいたい不満げですね(笑)。

それほど無意識にやってしまう右振り左折。いったいなぜでしょうか? 大きな原因は2つあります。

1つめの理由は、左折時にしっかりとスピードを落とさないこと。改めて道交法に記されている左折の方法をお読みいただきたいのですが、最後に『徐行すること』と書かれていますよね。

道交法で規定されている徐行とは、『車両等が直ちに停止することができるような速度で進行すること』。おおむね時速10km以下が目安とされています。そして、徐行しながら左折するためには、ハンドルを大きく切る必要があります。

しかし、右振り左折するドライバーの多くは、あまりスピードを落とさずに曲がろうとしています。ブレーキをかける手間を嫌がっているんですね。スピードを落とさないということは、ハンドルをあまり切れないということ。できるだけハンドルを切らずに曲がろうとするために、右に振ってから左折しているんです。ある意味、横着運転なんですよ」

左折レーンで交差する横断歩道が赤の場合、速度が高まる傾向に。

「もう1つの理由は、内輪差による接触を恐れていることです。この場合は、しっかり徐行できているのに右振り左折しているケースが目立ちます。左折はドライバーから遠く見えにくい側に向かって曲がる行為ですから、内輪差を把握しにくいものです。きちんと徐行しての左折は、ハンドルを大きく切ることになりますから、余計に『車体をこするかもしれない』という恐怖感も増すのでしょう」

車体によってはどうしても内輪差が気になるケースも。

「徐行しないか、徐行していても内輪差を恐れている。主にはこの2つが右振り左折の原因ですが、いずれも意識的に右に寄ろうとしているのではなく、結果的に右振り左折になっている、というところが大きな問題。だからこそ、自覚しづらいんです」

なくて七癖! 「人に振り見せ」我が振り直せ!?

「右振り左折を防ぐ最大の方法は、正しく左折すること。つまり、左折前にきちんと道路の左側端に寄って徐行すれば、右振り左折にはなりようがありません。『正しい左折をするべきだ』と、ほとんどのドライバーが頭では理解しているはずです。

それなのに、正しい左折をせずに、右振り左折してしまう。これはもう、癖になってしまっているということ。つい爪を噛んでしまったり、つい鼻をかいてしまったり、つい食事の後にシーハーしてしまったり……。マナー的によくないこととわかっていながら、ついやってしまう、そしてやめらない癖と同じです。

これを正すにはどうしたらいいか。一番の特効薬は、同乗者に指摘してもらうことです。同乗者は、左折するのにハンドルを右に切るという『異常動作』に気づいているはず。それを、よきタイミング、よき言い方で指摘する。そしてドライバーも、大きな度量でこれを冷静に聞き入れられれば理想的です。

……しかし、これが非常に難しい(笑)。なにしろ講師である私が右振り左折運転を指摘しても逆ギレされるぐらいですからね。指摘するほうの言い方も、指摘されるほうの懐の深さも、かなりの高いレベルのものが求められます。夫婦なんて、相当リスクが高い(笑)。

とくに右振り左折は、長年運転をしているベテランほど、ラクな運転方法として染み込んでしまいがちな悪癖。ベテランはプライドが高く、悪癖を人に指摘されることを嫌がる人が多いので、余計に直りにくいんです。

右振り左折を直せるかどうか。これには、ご自身の人間性と、周囲の方たちとの間でどんな人間関係を築いてきたかが、大いに問われます(笑)」

4つのポイントを意識して右振り左折から脱却!

「右振り左折は、直りにくい癖。しかし直らないものではありません。心がけと、ちょっとした意識変革で直すことが可能です。

1つ目は、当たり前のことですが、正しい左折を行うこと。これが基本中の基本。正しい左折ができていれば、右振り左折はあり得ません。

そして2つ目。なかなか直らない場合は、仲たがいしない程度に同乗者に指摘してもらいましょう。いろいろなドライバーの運転を見ている私としては、『気づかない癖を直すキャンペーン』を張りたいぐらい(笑)。自分の運転を客観視する冷静さが大切です。

3つ目は、普段から自分のハンドル操作を見ることです。運転中のことなので、チラ見で構いません。周囲の安全を確認したうえで、左折時に右に切っていないか、本来より切れ角が浅くなっていないかを意識して、自分の癖を自分で見て把握しましょう。

4つ目は、左折開始位置を意識することです。車の形状にもよりますが、ボンネットがある普通乗用車なら、左折しようとする道路の角がドライバーの位置に来たときに、ハンドルをいっぱいに切ります。右振り左折をするドライバーの多くは、これより早いタイミングでハンドルを切っています。

最後に改めて言っておきたいのですが、右振り左折は想像以上に危険な運転です。決して『大したことじゃない』とは思わず、今まで事故を起こさなかったことが奇跡だと思って、常に自分の運転を見直すよう、心がけてくださいね」

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!