緑の堤防沿いを軽快に走行する白いトヨタ・スープラ(A80型)フロントビュー
文=下野康史/撮影=荒川正幸

トヨタ・スープラ (A80型) のレンタカーに試乗。生産から四半世紀を超えたスポーツカーの走りは、いまも群を抜いているのか? #43

自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
下野康史

トヨタが1993年に発売したA80型スープラの旧車レンタカーに試乗。初代セリカXXからみて4代目、日本国内でスープラと名前を変えてからは2代目のモデルとなります。国内ではトラディショナルな直6+FRでありながら、日産スカイラインGT-Rやホンダ・NSXなどのライバルと肩を並べる走りで人気を博しました。
そんなA80スープラに、自動車ライターの下野康史さんが試乗しました。

目次

日本車初の6段マニュアル

青空と建築物を背景に、砂利道にたたずむ白いトヨタ・スープラ(A80型)の全景

千葉県松戸市の「カーレンタル東京 」で借りたスープラ(A80型)。1999年式の後期型RZ-Sで、車検証に記載された車両重量は1490kg。当時の価格は388万円だった
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大きなリアウイングと太いマフラーが特徴的な、白いスープラのリアビュー

後方から見たA80スープラ。高くそびえる大型リアウイングと迫力あるマフラーが印象的
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6気筒エンジンを積む高級セリカとして、1978年に国内発売されたのがスープラの前身、セリカXX(ダブルエックス)だった。大人の事情により、アメリカでは最初からスープラの名が使われた。その後、日本でもスープラが正式名になり、93年に登場した新型が国内2代目にあたるスープラ(A80型)である。

バブル景気のただなかに開発されたA80は、話題の多いニューモデルだった。結局は280 PSの自主規制値に収まることになったが、北米仕様が320PSだったことから、3リッター直列6気筒ツインターボエンジンはついに300 PSオーバーか!と噂された。

ツインターボモデルに組み合わされるMTは、ドイツのゲトラグ社と共同開発したもので、日本車初の6段MTモデルとなった。ミッドシップのMR2でも封印した「スポーツカー」という言葉を広報宣伝に使う久々のトヨタ車でもあった。

後期モデルの99年型RZ-Sをレンタカーに揃えるのは、千葉県松戸市の「カーレンタル東京 」。この連載では過去にランサー・エボリューションⅨとスカイラインGT-R(R32)を借りている。成田空港からも羽田空港からも鉄道でのアクセスがいいため、利用者の7~8割がJDM(ジャパニーズ・ドメスティック・マーケット)のクルマをレンタカーで体験しようという海外からの旅行者だという。英語ができる外国人スタッフもいる。

2日以上借りるお客さんは、お約束のように、クルマ好きが集まることで有名な大黒埠頭へ行く。群馬県の榛名山に上って、『頭文字D』の舞台を巡礼する人も多いそうだ。

このスープラはいちばん新しい3代目スープラを販売したときに下取りで入ってきたもの。貸し出しを始めてから約半年。旧車レンタカーのなかではR34スカイラインGT-R、同R32に次ぐ人気車種だという。

国産高性能車の恐竜時代

A80スープラの運転席とインパネ全景

メーターやエアコンなどの操作系がドライバー側を向いたコックピットスタイルのインパネ。タコメーターを中心に配した、スポーツカーの定石通りのレイアウトとなっている
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運転席に装着された黒いレカロ製バケットシートと室内空間

運転席にはレカロ製バケットシートを装着。ホールド性が高く、スポーティーな走りを支えてくれる
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この日の東京は猛暑日だった。手続きをすませてクルマに乗り込むと、エアコンを全開で効かせていた室内は涼しかった。99年式といえば、ゆうに四半世紀前のクルマである。この冷房能力だけでも、日本車はスゴイとあらためて思う。

運転席に座ると、でっかい計器パネルに圧倒されるのが2代目スープラの特徴だ。つや消しブラックの大きなパネルに、メーター類だけでなく、オーディオやエアコンなどのスイッチ類が配されている。新趣向だったつや消しパネルのザラザラした手触りが、経年変化でどうなるのだろうと思ったものだが、よく使うドアミラー調整スイッチの周りだけ摩滅して“つやあり”になっていた。

クラッチペダルは踏み応えがある。6MTのシフトフィールもヤワじゃない。大パワーのエンジンにつながっているゼ! という感じだ。

パワーステアリングだが、ハンドルは重い。ノンオリジナルの小径ステアリングに代えられているとはいえ、それにしても重い。と感じたが、考えてみると280馬力ウォーズのころの国産高性能車はいまよりずっとハンドルが重かった。そのほうがスポーティーと思われたのだ。しかし歴史的にみると、自動車の操作力はどんどん軽くなっている。軽くなって軽くなって、最後は操作しなくなるのが自動運転なのだろう。

 なんてシニカルな物言いをブッ飛ばしてくれるのがA80スープラである。店のまわりは渋滞がちだったが、アクセルが開けられるようになると、3リッター直6ツインターボパワーが垣間見せるパワーはいまなお大したものである。ちょっと強めに加速すると、カーナビからなのか、ドライブレコーダーからなのか、「アテンションなんとか~」という警告が女声の英語で発せられるので、バツが悪い。

でも、町なかをフツーに流していたって感じる“底力”は、よりクリーンになったいまの3リッターターボ級高性能車にはないものである。後期型A80スープラの最大トルクは46.0kgm。同時代を走ったシボレー・コルベットの5.7リッターV8(47.0kgm)に肉薄していた。2代目スープラも90年代に栄えた国産高性能車の恐竜時代の一台だった。

重い操作類やどっしりした足まわりのせいで、いま乗ると大味なのは否めないが、それも“味”である。エアコンの効く車内でそれを味わっていると、不思議と癒やされた。テールには洗濯物が干せそうなほど高いリアウイングが立つのに、白いボディーカラーのせいで、フロントマスクはオバQっぽく見えた。そんなこと、新車当時はつゆほども思わなかったが。

タワーバーと社外エアクリーナーが装着された2JZ-GTE型直列6気筒ツインターボエンジン

怒涛のパワーを秘めた2JZ-GTEエンジン。最大トルク46.0kgmを誇り、圧倒的な加速感を味わわせてくれる
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道路を走り去る白いスープラの後ろ姿

直列6気筒エンジンの音を響かせながら走り去るスープラ。製造から四半世紀が過ぎても、爆発的な加速は現代のクルマに引けを取らない

トヨタ・スープラのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1810×1275mm
ホイールベース:2550mm
エンジン:2JZ-GTE型 直列6気筒DOHC 2997cc
エンジン最高出力280PS(206kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:46.0kgm (451Nm)/3600rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式(前/後):ダブルウィッシュボーン/ダブルウィッシュボーン
タイヤ:225/50ZR16(フロント) 245/45ZR16(リア)

歴代スープラ・セリカXXの試乗記はこちらから

海岸沿いを走るセリカXX

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高速道路を走るA70スープラ

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A80スープラのライバル、日産スカイラインGT-R(R32)の試乗記はこちら

ワインディングを走る日産スカイラインGT-R

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晴天の道路を走行する白色のA80スープラのフロント全景(上)、大型リヤウイングと丸型4灯テールランプ(左下)、6速MTのシフトノブとセンターコンソール(右下)の3カットで構成された組写真

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【前回の記事を読む】日産サニークーペ GX-5(KB110型) のレンタカーに試乗。70年代のモンテカルロラリーにも出場した、スポーツクーペの実力は?

上部(走行カット): 山間のワインディングロードを軽快に走行する、白ベースに黒いボンネット、赤と青のストライプが入った1970年代の日産サニークーペ1200GX(KB110型)。フロントの丸型フォグランプとアルミホイールが特徴的な、カスタム仕様の旧車レンタカー。 左下(エンジンルーム): 開けられたボンネット内に収まる、直列4気筒OHVのA12型エンジン。青いヘッドカバー、ソレックスキャブレターなど、当時の走りを支えたパワーユニットの細部。 右下(運転席): 黒を基調とした、スパルタンながらクラシカルなサニークーペのコックピット。3本スポークのスポーツステアリング、当時の雰囲気を残すラジオや空調スイッチ、そして走りを予感させる追加メーター類。

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下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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