ワインディングを駆け抜けるサニークーペ。小さなボディーから、半世紀前のクルマとは思えない軽快さが伝わってくる
文=下野康史/撮影=荒川正幸

日産サニークーペ GX-5(KB110型・2代目) のラリーレプリカのレンタカーに試乗。70年代のモンテカルロラリーにも出場した、スポーツクーペの実力は? #42

自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
下野康史

日産が1970年に発売したサニークーペ GX-5(KB110型)の旧車レンタカーに試乗。KB110型サニーはモータースポーツでも活躍し、TSレースではシリーズチャンピオンを獲得。ラリーではプライベートチームが1977年のラリー・モンテカルロに出場、総合97位でフィニッシュしています。
そんなサニークーペに、自動車ライターの下野康史さんが試乗しました。

目次

2代目サニーの思い出カーレンタル

白いボディーに赤と青のストライプを配したサニークーペ

東京都清瀬市のときめきカーレンタルでお借りしたサニークーペの旧車レンタカーは1973年式で、車検証に記載された車両重量は740kg。当時の価格は66万5000円(東京地区)だった
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後方から見たサニークーペのモンテカルロラリー仕様

5速MTを搭載したGX-5は72年に追加設定された
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まちがいなく日本でただ1台、2代目サニークーペの旧車レンタカーをラインナップしているのが、東京都清瀬市の「ときめきカーレンタル」である。半世紀以上前の国産大衆車のスポーツモデルだ。

代表の中川賢一さんのお父さん、一(はじめ)さんは79年に初代マツダ・サバンナRX-7でモンテカルロラリーに出場し、クラス優勝を遂げている。その2年前の77年、同ラリーに初めて出場したときのクルマが2代目サニー(KB110型)クーペだった。

無事完走を果たし、日本に帰ってきたクルマは、屋根の日の丸やスポンサーのステッカーを剥がされて、一さんの奥さんのアシになった。賢一さんの幼稚園通いでも活躍したそうだ。そのクルマはのちに廃車になったが、「あのサニーをまたつくってみたかったんです」。

5年前に大阪で見つけた73年型GXを「お父さんのモンテカルロラリー仕様」に仕上げ、2025年2月に開業した「ときめきカーレンタル」のスターティングメンバ―に加えた。「ときめきカーレンタル」というよりも、中川代表の「思い出カーレンタル」とも言うべき一台といえる。

キャブレター・エンジン車の教材

サニークーペの運転席と5速MTのインパネ

ブラックのインパネに大きな3眼メーターやIZUMIの革巻ステアリング、そして5速MT。70年代スポーツモデルの雰囲気が漂う
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サニークーペの黒いフロントシートと後席

黒を基調とした室内。フロントにはクラシカルなビニールレザーシートが備わる
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2cm上げた車高、ブラック塗装のボンネット、マーシャルのフォグランプ、ボディーサイドのストライプなどで、ラリーカーの匂いがするのは明らかだが、乗り込むと、ファミリーカーのサニーである。

ノーマルのシートは柔らかい。クラッチペダルは軽い。使わなかったが、助手席グローブボックス下には昔ながらのクーラーが付いている。

一発で掛かったエンジンは、1.2リッター4気筒OHVの名機、A12。モンテカルロラリー仕様と同じく、キャブレターはSUからソレックスに換えてあるが、エンジン本体はイジっていない。

走り出すと、そのエンジンがすばらしかった。大口径のキャブ・ユニットらしい野太いトルクを発揮して、しかもよく回る。加速は軽快でキモチイイ。

一方、始動に手こずったり、回転がグズったりする、キャブレターエンジンあるあるの気難しさはまったくない。電磁式燃料ポンプを付けるなどのアップデイトも効いているのだろう。いま、キャブ車を経験してみたい人がいたら、このレンタカーは最高の“教材”だと思う。


GX-5の名が示す通り、変速機は5速。トランクリッドには“5 SPEED”の赤いエンブレムが付く。5速が自慢できた時代である。しかも、シフトパターンは左手前が1速。2、3、4、5速でH型を形成する。スタートしたら、1速は使わない競技車コンシャスな5速MTだ。

ただ、シフトフィールが曖昧で、グニャグニャしている。というのはこの5MTの評判として知っていたが、同じKB110でもサニー・トラックの4速MTは画然としたゲート感を持つだけに、残念だ。中川さんによると、シフトリンクの修正でもう少しよくなるはずだという。今後の改良に期待したい。

サニークーペに搭載されたA12型エンジン

搭載されるのはフルオーバーホールされたA12型エンジン。ソレックス40φのキャブレターを装着する
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カローラ・レビンと比べてみると

ワインディングを走るサニークーペを後方から撮影した写真

コーナーの先へ消えていくサニークーペ

プレーンなクーペボディーは、現代の5ナンバー小型車には見当たらないコンパクトさである。車重は740㎏(車検証記載値)。最新型トヨタ・ヤリスの最軽量モデルより200㎏軽い。

70年代、サニーのライバルといえば、トヨタ・カローラだった。2代目サニーと同じ70年に登場した2代目カローラには“レビン”というスポーツモデルがあった。すでにこの連載でも取り上げている。ともに板バネのリアサスペンションを持つ、FR車である。

1.6リッターDOHCならではのエンジンの迫力はレビンのものだが、ステアリングのクイックさや乗り心地のよさはサニーに分がある。いま“ふだん使い”にするなら、このサニーだと思った。なんていう乗り比べが21世紀にできるのは、日本の自動車文化のひとつともいえる旧車レンタカーのおかげである。

とはいえ、キャブ車でMT車となると、さすがに借りる人はそう多くないそうだ。名前は“サニー”なのに、クルマと人間のために、夏場の貸し出しは行っていない。

でも、昨年秋、地方からジャパンモビリティショーを見に来た帰りに、借りに来た親子がいたという。高齢のお父さんが若いころ、このサニークーペに乗っていた。秩父の峠道までふたりで走りに行ったという。まさに「思い出カーレンタル」である。

日産サニークーペGX-5のスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3840×1620×1270mm
ホイールベース:2300mm
エンジン:A12型 直列4気筒OHV 1171cc
エンジン最高出力83PS(61kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:10.0kgm (98Nm)/4000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(前/後):ストラット/リーフリジッド
タイヤ:165/70R13(試乗車)

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【上:走行カット】 ワインディングロードを軽快に走る、白地に黒いボンネット、赤と青のストライプを配したレーシーなスタイルのサニークーペ。丸型フォグランプを点灯させ、旧車らしい存在感を放つ。 【右下:ホイール】 フロントフェンダーのレーシングストライプ、メッキバンパー、そしてクラシカルなビッグライトのアルミホイールとタイヤを捉えたクローズアップ。 【左下:停車中】土の山を背景にたたずむサニークーペ。

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【前回の記事を読む】#41 三菱ミラージュ サイボーグZR(CJ4A型) のレンタカーに試乗。90年代に流行したホットハッチの走りは、いまでも熱いのか?

雨の中、濡れたワインディングロードでヘッドライトを点灯して走行する、シルバーのミラージュ サイボーグZRの外観(上部)。下部には、運転席のレカロ製バケットシート(左下)と、タワーバーが装着された1.6L MIVECエンジンの様子(右下)を配置した、3枚構成のコラージュ画像

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下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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