こんなとき、アナタはどうする? CASE2:高速道路での逆走
構成=グランマガジン社/協力=NEXCO中日本

高速道路で本線に合流したら前からクルマが…! 誤って逆走してしまったら、どうする?

CASE2:高速道路での逆走

クルマの運転中に遭遇するさまざまなトラブル。万が一そんなトラブルに遭遇した場合、「どう対処すればいいのか?」を専門家が解説。今回のテーマは「高速道路での逆走」です。走行中に逆走車に遭遇するケースのほか、誤って自分が逆走してしまった場合の2つのケースについて、対処法や注意点などをNEXCO中日本に聞きました。

目次

3択クイズ!

高速道路で間違えて逆走してしまった…!?
こんなとき、アナタならどうしますか?

適切な対応は次の3つのうちどれ?
(1)ハザードランプを点灯して路肩に止め、安全な場所へ避難して通報
(2)周囲の安全を確認した上で速やかにUターンをして走行を続ける
(3)路肩を低速でゆっくり走行し、何とか次の出口まで慎重に向かう

答えは(1)
ハザードランプを点灯して路肩に止め、
安全な場所へ避難して通報

(2)も(3)も絶対にやってはいけないので要注意。そもそも高速道路は基本的に上りと下りがそれぞれ専用化されている構造上、一方通行が原則。ゆっくりでも、Uターンやバックを含めて逆方向へと動くことは禁止。ということで正解は(1)。自分が「逆走している」と気づいたら即座にハザードランプを点灯させ路肩に停車。このとき、注意すべきは逆走ゆえ路肩が右側になること。左側では追い越し車線側への停車になってしまい、より一層危険度が増してしまう。停車後は自身や同乗者の安全を確保するため、車両から降りてガードレールの外などに避難し、110番もしくは非常電話で通報する。車内待機は衝突される可能性があるため危険だ。

高速道路での逆走はどれくらい発生している?

高速道路で進行方向を間違えることなど滅多にあるものではない。したがって逆走は珍しい事例のはずと思いきや、実際は逆。2022年までのデータによれば、全国の高速道路で平均2日に1回発生しているのである。逆走したドライバーを年齢別に見ていくとやはり高齢者が多く、約7割が65歳以上で、うち半数近い48%を75歳以上が占めており、高齢になるにつれ低下しがちな認知機能との因果関係も推測される。

時間帯別の比率では意外なことに昼間(6時~18時)のほうが6割と多く、夜間・早朝(18時~翌6時)は4割となっている。「逆走と認識していない」場合は、夜間・早朝が約6割と逆転する。ドライバーにしてみれば、周囲が暗い中、知らないうちに反対側を走ってしまっていたと思われる。

逆走事案発生件数推移と運転者の年齢データ

分合流部・出入り口部の逆走対策が概成した2017年以降は、年間の逆走発生件数が頭打ちとはなっているが依然横ばいが継続している。運転者はやはり65歳以上の高齢者が多い(資料:警察の協力を得て国土交通省・高速道路会社が作成)

逆走事案発生案件数の推移と動機別グラフ

逆走を認識している故意の逆走は約2割で、逆走になることを認識していない過失については約4割となっている。事故や確保等により逆走を終えた時点においても逆走したことがわからない「認識なし」の9割が65歳以上(資料:警察の協力を得て国土交通省・高速道路会社が作成)

夜間の高速道路走行イメージ画像

ドライバーが逆走していると認識していない逆走事案は、約6割が夜間や早朝に発生率している

【逆走発生時の動機について】

故意・過失・認識なしそれぞれの逆走動機の説明図

逆走発生時の一例で、「故意」は目的のICを通り過ぎてしまい、本来出ようとしていたランプに戻ろうとして逆走。「過失」は高速道路に誤って進入したことに気がつき、一般道に戻ろうと料金所手前でUターンし、逆走と思わないまま反対車線の流入ランプを走行。「認識なし」は65歳以上の高齢者で、認知機能の衰えによる逆走(資料:警察の協力を得て国土交通省・高速道路会社が作成)

逆走はどんな場所で発生しやすい?

上りと下りの車線が明確に分けられ、構造上、越えられない中央分離帯が設けられている高速道路の場合、逆走に至った原因、すなわち反対方向に走るきっかけとなった場所がある。データによれば逆走開始箇所の約5割はインターチェンジまたはジャンクションとなっており、高速道路の進入時、あるいは進行方向の選択時に間違えたことがわかる。
一方、約2割は本線上だが、こちらはサービスエリアまたはパーキングエリアで入り口から出てしまった、もしくは降りようとしたインターチェンジを通り過ぎてしまいその場で慌ててUターン、などといったケースが考えられる。

逆走はこんな場所で発生(ICや料金所付近で)する説明図

「目的の出口を通り過ぎてしまい本線上でUターン」、「行き先を間違え本線を逆走」、「目的の出口を間違えUターン」、「料金所を通過後に出口車線を逆走」など、インターチェンジや料金所付近では全体の約5割にのぼる逆走が発生(資料:NEXCO中日本)

逆走はこんな場所で発生(ICや料金所出口で)の説明図

料金所付近では、一般道から高速を利用する際に誤って料金所出口に進入してしまい、そのまま気が付かず逆走するケースが多い(資料:NEXCO中日本)

逆走はこんな場所で発生(SA・PA付近で)の説明図

SA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)付近では、施設を利用した後、入り口を出口と間違えて走行するケースが目立つ(資料:NEXCO中日本)

逆走による事故はどれくらい発生している?

逆走が発生してもそのすべてが事故につながってしまったわけではなく、未然に防いだケースのほうが多い。2022年までの年平均発生件数を見ると、2011年~2016年が約210件で、分合流部・出入り口の対策が概成後の2017年~2022年が約190件。2016年を境に分合流部&出入り口部の逆走対策が進んだことから約1割ほど減少したものの、頻度的には1か月あたり約16件、すなわち2日に1回は逆走が起きている。このうち事故に至ったケースは同じく年平均でそれぞれ約43件(2011年〜2016年)、約38件(2017年〜2022年)発生。うち死傷者が発生した重大事故は約20件(2011年〜2016年)、約13件(2017年〜2022年)。これは2011年~2022年に高速道路で起きた事故全体の9%を占め、そのうち約4割は重大事故に至っている。つまり逆走は最悪の結果を招いてしまう可能性の高い危険な行為なのである。

逆走事故発生件数の推移と「事故発生」箇所のグラフ

ジャンクションやインターチェンジで事故を起こすケースが約4割、本線で事故を起こすケースが約6割(資料:警察の協力を得て国土交通省・高速道路会社が作成)

誤って逆走してしまったらどうする?

ある日の早朝、ボンヤリした気分のまま高速道路に入った。幸い他のクルマは1台もいないほど空いているけど何かおかしい。中央分離帯が左側にあるし、標識もなぜか裏側がこちらを向いている……マズい、逆走だ! こんなとき取るべき行動はただ一つ、衝突事故をいかに防ぐかだ。具体的には対向車(本来の進行方向で走ってくる車両)の障害にならないよう、すぐ近くの安全を確保できる場所、この場合は右側の路肩や路側帯に移動させてハザードランプを点灯。高速道路では向かってくる車両が遠くに見えてもアッという間に接近して来るため、Uターンは厳禁。停止したら車両から離れ、ガードレールの外側など安全を確保できる場所に避難し、すみやかに設置されている非常電話で通報する。携帯電話の場合は110番が確実だ。

逆走してしまったときの対処法説明図

逆走に気づいたら周囲を確認のうえ、すみやかに安全な場所に停止し、安全な場所から110番や非常電話により通報を行う(資料:NEXCO中日本)

走行中に逆走を発見した場合はどうする?

走行車線を走行中、追い越し車線をこちらに向かって走ってくる車両が……対面通行区間でもないし逆走だ!! こんな時、逆走車両のドライバーは自分が反対側を走っていることに気づいていない。もしくは気づいていてもどうすればいいかわからずパニック状態にある可能性が高いため、遭遇したら即通報が正解。衝突しないよう速度を落として走り、同乗者が110番通報、もしくは最寄りの非常電話を使い通報。料金所が近い場合はスタッフに直接伝える。これにより情報板やハイウェイラジオで情報を拡散、走行中のドライバーに注意を促す措置が取られる。

逆走車を発見した場合の対処法説明図

逆走車は追い越し車線を走行してくる傾向があるので、逆走車を発見したり情報が入ったら走行する車線にも十分注意しよう(資料:NEXCO中日本)

逆走を防ぐための対策はどうなっているの?

逆走したドライバーの年齢は約7割が65歳以上。圧倒的に高齢者比率が高いものの、約3割はそれ以外と年齢に関係なく起こっている。また、推測される原因の多くが「間違い」ならば、最良の対策は個々のドライバーが注意しながらハンドルを握ることに尽きる。その一方でNEXCO各社も可能な限り逆走防止対策を講じており、特に間違いを誘発しやすい分合流や出入り口部に関しては、インターチェンジ合流部へのラバーポール設置によって物理的にUターンを防いでいるほか、ドライバーが進行方向を確実に認識できるよう、矢印板設置や路面マーキングなどを実施している。同様の対策はサービスエリアやパーキングエリアでも実施。他にも逆走ドライバーへの呼びかけとして、反対方向に向けた逆走防止標識や逆走車両を検知したときのみ発光する電光警告板、降りるインターチェンジを間違えた車両に対する案内看板などの設置。さらに民間から公募した技術による対策や、各種媒体での広報・啓発活動など多彩な取り組みを進めている。

逆走を防ぐためのさまざまな対策

道路上の矢印表示

【矢印路面標示と高輝度矢印板】
高速道路の本線やSA・PAなどの路面標示をはじめ、ガードレールにも目立つように矢印を設置。正しい進行方向を示すことで、逆走を防止している

高速道路上のラバーポール

【ラバーポールで逆走を防止】
SA・PAや料金所から高速道路本線へと合流するときに、行き先を間違えて誤った方向へ進むことがないよう、合流部分にラバーポールを設置している。ポールにも方向を示す矢印が表示されている

高速道路出口の締切対策と進入禁止看板

【高速出口の締切対策と進入禁止看板】
料金所通過後に誤って対向車線に進入することを防ぐため、料金所プラザ部の締切対策や入り口を間違えないための進入禁止看板を設置している

サービスエリア入り口の逆走防止看板

【SA・PAの逆走防止看板】
SA・PAの入り口付近には、誤って本線に出て行かないように、進入禁止看板を設置している。写真の赤色の看板は、民間からの公募技術を用いた「プレッシャーウォール」というもので、圧迫感を与える程度に大きい看板を路側に連続設置し、逆走車両へ注意喚起を行っている

誤って降りるICを過ぎてしまったら、どうすればいい?

焦ってUターン(転回)したりバックするのは厳禁! 高速道路で出口を通り過ぎてしまっても、落ち着いて行動すること。次の出口まで行き、料金所のスタッフに相談することが最良の対処法だ。次の出口に到着したら、一般レーンに進んで料金所スタッフに相談しよう。「一般」または「サポート」と表示のあるレーンに進み、料金所スタッフの指示に従って目的の出口まで戻る。インターチェンジによっては、構造上Uターンできない場合もあるが、その場合も料金所スタッフの指示に従い、別の経路で目的地に向かうことができる。

この場合、Uターンに伴う追加料金は発生せず、当初の流入インターチェンジから目的のインターチェンジまでの通行料金のみで済む。つまり、行き過ぎてしまった分が加算されることはない。ただし、ETCを利用している場合は、目的の出口を通り過ぎてしまった後、次の出口の手前でETCカードを抜いておかないと料金が精算されてしまうので注意しよう。

構想道路の料金所のイメージ写真

目的の出口を通り過ぎてしまったら、焦らず次の出口を目指す。次の出口に到着したらETCを利用している場合はカードを車載器から取り出して、一般レーン(もしくはサポート)と表示のあるレーンに進入。スタッフに事情を説明すれば対応してくれる

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!