電気自動車(EV)のバッテリーが残りわずかな場合は、無理せず安全な場所に止めて救援要請を!
#03 EVのトラブルと電欠の防止法SDGsな社会の実現に向けて注目されている電気自動車(EV)。近年、日本でも普及が進み、2023年度の国内販売台数は約8万台(PHEV除く)となっています。そんな状況を踏まえ、JAFでは2023年からEV充電対応サービスカーを導入し、EVの電欠トラブルに対応しています。今回はEVのトラブルについて注意点や対処法を紹介します。
教えてくれたのはこの隊員!
JAF愛知支部
名古屋ロードサービス隊名古屋中央基地
加藤敏久(かとう・としひさ)隊員
【趣味・特技】 ゴルフ
【好きな言葉】 慎始敬終
【好きな食べ物】 味噌煮込みうどん
【休日の過ごし方】 ゴルフ、洗車、犬との戯れ
EVの救援件数は年間約8,600件、そのうち約11%が電欠トラブル
―――EVの救援要請は、どのくらいありますか?
JAFの統計では、2023年度のEVの救援件数は8,625件。そのうちの約11%(975件)が電欠による救援となっています。直近では2024年11月のEV救援要請件数は885件、うち電欠による救援要請は109件です。
JAFがEV充電対応サービスカーを導入し、EV充電サービス(電欠車両への路上給電)を開始したのは2023年8月からです。EV充電対応サービスカーは、まず東京都、神奈川県、愛知県、大阪府で試験運用が始まり、名古屋ロードサービス隊中央基地では2023年の10月から本格稼働しています。
この地域は名古屋の中心地でオフィス街のため、社用車としてEVを利用する会社も多く、EVの救援要請も比較的多いと思います。ただ、「電欠」に限定すると、名古屋市街地は充電スポットも多いこともあり、件数はそれほど多くありません。それには、EVの性能向上や利用者の危機意識の浸透も影響していると思われます。
電欠かと思いきや、普通のバッテリー上がりというケースもある
―――EVのトラブルは、どんなものが多いですか?
EVだと電欠トラブルのイメージが強いですが、救援要請で多いのはパンクなどタイヤ関連のトラブルになります。EVの場合、走行用のバッテリーが著しく損傷すると、数十万円~数百万円の修理費がかかることもあります。そのため、走行用バッテリーの状態などに注意して走行している方も多く、電欠による救援件数は少なめです。
また、「電欠」の救援要請でも、現場で点検してみたら補機バッテリーが上がっていて動かないというケースもあります。EVには走行用のバッテリーのほか、システムの起動や電装品を動かすための補機バッテリーが装備されています。この補機バッテリーがルームランプの消し忘れなどで上がってしまうと電源が入らず(システムが起動できず)、クルマ自体が動かなくなってしまいます。
システム起動時は走行用バッテリーから補機バッテリーへ充電されますが、システムがOFFになると走行用バッテリーと補機バッテリーの通電は遮断されます。走行用バッテリーの残量が十分でも、システムOFFのときは補機バッテリーを上げてしまわないよう、ライト類の消し忘れなどに注意してください。
スイッチを押してもシステムが起動しないため、「電欠」の救援要請で現場に向かうと、補機バッテリーが上がっていて起動できないケースもあるとのこと。EVといえどもルームライトの消し忘れなどには要注意
ショッピングモール駐車場のスロープは上らないほうがいい!?
―――電気残量が残りわずかな場合、どうすればいいですか?
電欠トラブルの場合、気が付いたら航続可能距離やバッテリー残量が「ゼロ」になってしまい、心配になってJAFに救援要請をいただくケースがほとんどです。まったくクルマが動かない状態ではなく、少しは走行できそうだけど、どれだけ走れるかわからない……という状態です。航続可能距離が少ない場合は、0kmになる前に安全な場所に止めることが重要です。無理せず早めにクルマを止めるようにしてださい。
航続可能距離は、バッテリーの状態や走行環境などによっても変わります。まだ大丈夫だと思っていても、エアコンをかけた途端にゼロになってしまうこともあります。最近では駐車場にEVの充電器を設置しているショッピングモールも多いですが、その充電器を目指して駐車場のスロープ(上り坂)を走行中に、残量がゼロになり止まってしまうケースもあります。上り坂で負荷がかかったことで電気の使用量が増え、動けなくなってしまうようです。バッテリー残量がわずかな場合は注意してください。
「バッテリー残量がゼロになり路上で停止してしまうと、二次事故の危険性や渋滞の原因になる可能性があります。完全に動けなくなる前に安全な場所にクルマを止めて、JAFに連絡してください」と、加藤隊員。「まだ大丈夫」と思って無理をせず、早めの対応を!
電欠トラブルを防ぐために注意すべき点は?
電欠トラブルを防ぐには、航続可能距離やバッテリー残量をこまめにチェックすることが重要です。また、走行ルートの近くにある充電施設の場所を事前に調べておき、残量が少ない場合は早めに充電するようにしましょう。
また、長期間駐車場に止めっぱなしにするのもバッテリーにとってはよくありません。乗らなくても定期的に給電することをおすすめします。さらに補機バッテリーの交換目安は2~3年です。経年劣化により性能が低下していないかなど、定期的に点検しておきましょう。