歩行者天国の商店街で、自転車の接近を知らせるためにベルを鳴らしたら、違反?
あなたの行動、ひょっとしたら違反かも歩行者天国の商店街で自転車に乗っているときのシーンをクイズにしてお届け。誰でも乗れる手軽な移動手段の自転車。車であれば意識するルールも、自転車になると違反かどうかを気にしないまま乗ってしまいがち。どこが違反にあたる行為なのかをクイズで再確認しましょう。
補助標識に「自転車を除く」という商店街で、歩行者天国となった道路を自転車で走行中、前に歩行者が数人歩いているのに気づきました。歩行者をよけながら横をすり抜けていくこともできますが、接触してしまうと危ないので、自転車の接近を知らせるためにベルを鳴らして注意喚起しました。そのおかげで歩行者に自転車の存在を知らせ、接触の可能性をなくすことができました。
この行為は、以下の選択肢のうち、どれに該当するでしょうか?
- 1.歩行者天国に自転車で進入したから違反
- 2.歩行者にベルを鳴らしたから違反
- 3.危険回避のために自転車の存在を知らせたので、違反ではない
-
答え:2. 歩行者にベルを鳴らしたから違反
道路交通法では、自転車は「軽車両」に分類されます。運転にあたって免許は必要ありませんが、自動車などと同様に道路交通法を守らなければなりません。
歩行者天国とは、車道部分を含めた道路全体を歩行者専用道路とし、車両通行止めの規制を行い、歩行者が安全に歩けるようにするもので、その道路は道路交通法の「歩行者用道路」の規制がなされたものとなります。
商店街の歩行者天国のほかにも、住宅街の道路などで行われることがあり、規制の対象とする車両や、週末だけなど日時を限定して行われることもあります。
この問題の道路では、歩行者専用道路であることを示す標識の下に、「自転車を除く」と補助標識がありますから、自転車の通行は許されます。
ただし、歩行者専用道路を通行する車両(特別な通行許可を受けるか、その規制対象から除外されているため通行できる車両)には、特に歩行者に注意して徐行しなければならない義務があります(道路交通法第9条)。この徐行義務は「特に」とあるように、単に歩行者に注意して走行、あるいは徐行するよりも重い「特別の注意」を払う義務とされていますので、歩行者専用道路では、歩行者優先が絶対となるのです。
自動車と同様に、自転車にも警音器(ベル)を設置する義務がありますが、それを使う場面は道路交通法で、法令の規定により警音器を鳴らさなければならない場合(道路交通法第54条1項)と、危険を防止するためやむを得ない場合とに限られており(同条2項)、それ以外で警音器を鳴らすことは禁止されています。
歩行者天国では歩行者が優先されるのですから、自転車がベルを鳴らして前にいる歩行者をよけさせることはできませんし、自転車から降りて押して歩く等すれば危険を回避することができますから、「危険を防止するためやむを得ないとき」にも該当しないでしょう。
従って、正解は2の「歩行者にベルを鳴らしたから違反」です。
歩行者専用とされた道路(歩行者天国)では、普段は車両が走る道路を、歩行者が自由に通行したり横断したりできます。通行を許された自転車には特別な徐行義務があり、歩行者が優先しますから、スピードを落とさず横を通り抜けたり、自転車のベルを鳴らして歩行者によけさせたりすることは違反となります。
道路交通法
(歩行者用道路を通行する車両の義務)
第9条 車両は、歩行者の通行の安全と円滑を図るため車両の通行が禁止されていることが道路標識等により表示されている道路(第13条の2において「歩行者用道路」という。)を、前条第2項の許可を受け、又はその禁止の対象から除外されていることにより通行するときは、特に歩行者に注意して徐行しなければならない。
(警音器の使用等)
第54条 車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。
一 左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。
二 山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。
2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
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松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。