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悪質な違反には赤切符も! 事故を起こさないための自転車交通ルールとは?

自転車を安全に利用するため、交通ルールをもう一度見直してみよう

2023.03.18

監修=小林成基(NPO法人自転車活用推進研究会)/イラスト=後藤範行

2023.03.18

監修=小林成基(NPO法人自転車活用推進研究会)/イラスト=後藤範行

1年点検を受けると、だれにでもチャンス

※JAF Mate 2021年4月号「子供や孫に伝えたい!!事故を起こさないための自転車交通ルール」を再構成して掲載しています。

車の交通ルールはしっかり守るのに、
自転車だと傍若無人に走っていませんか?
自転車は軽車両なので車の仲間。ここで、安全に
走るための交通ル―ルを改めて考えてみましょう。

進入学時に自転車事故が多発

世界的に見ても国民の自転車保有台数が多い日本だが、先進諸国の中で、人口100万人あたりの自転車乗用中の事故割合が高い(※1)。
原因の一つが、自転車を歩行者のつもりで運転する人が多いこと。自転車の運転を原動機付き自転車に置き換えれば、右側を逆走したり、歩道を走ったりしないはず。自転車は車の仲間だと意識して、交通ルールを守ることが大切。
中学や高校の進入学時期に、学生の自転車事故が急増する。現状の我々にできることは、まずは大人が自転車の交通ルールを理解・実践すること。そのうえで、子供たちに正しい情報を伝えていってはいかがだろう。

  • 1 国土交通省・安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会第1回資料より。

取り締まり検挙数は右肩上がり。運転免許証の有無にかかわらず、危険運転行為の摘発を3年以内に2回以上受けた人は、自転車運転者講習の受講が義務づけられる。

1位は32,166票を集めた「ながらスマートフォン」。気軽にしてしまいがちだが、周囲の認識が難しくなり、周りを事故に巻き込む非常に危険な行為だ。

自転車での基本ルールはこれ!
自転車安全利用五則

自転車安全利用五則とは、警察庁が自転車で走行する際に守るべきルールをまとめたものだ。それを解説する。

1. 車道が原則、左側を通行。歩道は例外、歩行者を優先

道路交通法で自転車は軽車両とされており、歩道と車道の区別があるところでは、車道通行が原則。歩道のない道路では必ず左側通行すること。

車両の一種である自転車は、自動車と同じ左側通行が義務。右側通行すると、ルールを守って左側通行している自転車や車と正面衝突し、被害が拡大する恐れがある。なお、自転車は、標識などで最高速度が指定されている場合にはそれ以下の安全な速度で走ること。特に生活道路では速度の出し過ぎに注意。

自転車は例外的に、道路工事や駐車車両のために車道の左側が通行できない場合や、自動車の通行量が多く道幅が狭くて危険な場合などには、歩道を注意して徐行すれば通行できる。
また、自転車が通行できるのは「普通自転車通行可」の標識がある歩道に限られるが、13歳未満の子供や70歳以上の高齢者、体の不自由な人が運転する自転車も徐行すれば、前述の条件以外の状況でも、車道の危険を避けて歩道を通行できることになっている。ただし、どんな場合にも歩行者の通行を妨げたり、危険な思いをさせてはいけない。

2. 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認

自転車事故のほとんどは交差点で車との衝突で起きている。信号を守ることはもちろん、自動車と同様に、一時停止の標識がある場所や踏切では必ず止まって左右の安全確認を。大丈夫だろう、と根拠のない楽観は禁物。

3. 夜間はライトを点灯

事故は夕暮れ時に多い。ライトは早めに点灯しよう。前方の障害物や道のくぼみ、段差などを見逃さないためだけでなく、人や車に自分の存在を認識してもらうためでもある。尾灯は赤色、前のライトは白色あるいは淡黄色でなければ違反になる。点滅だけでも違反なので注意。新しく自転車を買うなら、光センサーで自動点灯するライト付きがおすすめ。

4. 飲酒運転は禁止

自転車やキックボードなどでも飲酒運転は厳禁。事故の危険も大きいが、酒酔い運転は車と同じ5年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられる。自転車が何十台も買えるほど厳しい、それだけ危険な行為なのだと心に刻もう。

5. ヘルメットを着用

これまでは13歳未満の子供に保護者がヘルメットをかぶせる努力義務があったが、23年4月までには、これに加えて、すべての自転車運転者に着用努力義務が課せられるとともに、他人を乗せる場合(子どもをチャイルドシートに乗せる場合やタンデム自転車での2人乗り)にもヘルメットを着用させる努力義務が自転車運転者に課せられる。まだ罰則はないが、死亡事故の多くが頭部損傷によるものであることを覚えておこう。非着用だと死亡する確率が約2.4倍に跳ね上がるという警察庁の調査もある。

状況に応じた対応で事故を避けよう。
アナタならこんな時どうする?

交通ルールを守ることは大切だが、遵守したために事故に遭っては本末転倒。自分が安全に走れ、なおかつ人を傷つけない最善の方法を考えるべき。どう対処するべきか悩んだときの対処法を自転車活用推進研究会の小林成基氏に伺い、クイズ形式でまとめてみた。

A. 相手を右に見て、
左側に寄せてよけるのが基本

「左側通行の原則に従い、相手を右に見ながら左によけるのが基本です。とはいえ、そのセオリーが無視されることも多いので、危険を感じたなら自転車を左側に寄せ、一度停止して、逆走自転車をやり過ごしましょう」

A. 道交法には対面する信号に従うとあるが、
ちょっと複雑

「道交法には対面する信号機を守る、とあるので、車道を走る際は自動車用、歩道を走る際は歩行者用の信号に従います。ただし、横断歩道に自転車横断帯がついている場合は歩行者(自転車)専用信号に従います」

A. 道路側ならハンドサインなどで合図が必須。
緊急避難で歩道へよけるのも可

「車道側によける場合はリスクが伴うので、早いうちに右後方を振り返って確認し、後方車に合図(ハンドサイン)を行うと安全。自転車にバックミラーを装着するのも効果的です。緊急避難として歩道へよける選択肢もありますが、車道との段差で転倒する危険があるので、かならず一旦停止して押し上げてください」

A. 交差点の右折時は原付の2段階右折を
イメージし、必ず2段階右折を!

「自転車は軽車両ということで、まれに交差点の右折レーンで右折待ちしている姿を見かけますが、これは道交法違反ですし非常に危険。交差点では直進した先で車体を右向きにし、再び直進する2段階右折を行いましょう」

A. 多車線ある場合は、
第1車線(左折レーン)を直進する

「上図のような交差点では、直進レーンの左端を進むと勘違いする人がいますが、一番左の左折レーンの左端を直進します。その際、左折車に巻き込まれる危険があるので、左折車の動きに注意し、死角に入らないように」

こばやし・しげき
特定非営利活動法人 自転車活用推進研究会 理事長
環境政策への取り組みから、アクト・ローカリー(身の周りの環境保全を実践しよう)の典型として自転車活用を提唱。2000年に研究会を創設。超党派の国会議員で組織する自転車活用推進議員連盟や政府の自転車活用推進本部などと連携して、緩速交通の市民権確立を目指し、利用する市民サイドからの調査研究と政策提言を続けている。主な著書に「林太郎の恋(コミック原作)」講談社、「女たちの反乱」生産性出版、「自転車『市民権』宣言(共著)」リサイクル文化社、「コミュニティサイクル(共著)」化学工業日報社、「自転車『道交法』BOOK(共著)」エイ出版社、他がある。

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