春でも車内温度が上がって事故の危険性アリ! 涼しくても熱中症に警戒を
外の気温は涼しくても、車内は高温になることも毎年、車内に残された小さな子供が熱中症等により亡くなる痛ましい事故が報道されている。こうした事故は気温が高くなる夏にだけ起きると思われがちだ。しかし、実は過ごしやすい季節でも、車内が高温になる場合があるので注意が必要だ。
外気温が涼しくても、車内温度は高くなる
春や秋など過ごしやすい季節の車内温度はどのように変化するのか。ここでは、これまでに実施した「JAFユーザーテスト」の結果をもとに解説する。
同型の車両を用意して車内の高温になりそうな場所を計測(写真はイメージ)
まず、最高気温が23℃と比較的過ごしやすい晴れた日に車両を用意。車内の高温になりそうな場所としてダッシュボードやフロントガラス、シートベルトのタングプレート、さらにペットボトルの水温を車内温度とともに計測した。
その結果、最高気温が23.3℃のなか車内温度は48.7℃と外気温の倍以上にまで上昇し、ダッシュボード付近で70.8℃、フロントガラス下部で57.7℃と、ほかの部位も軒並み高温になった。
車内の各部とも、外気温を大きく上回って高温となった。なお、上グラフ中のシートベルトのタングプレートとは、シートベルトの金具部分のこと
春でも熱中症になる? 湿度との関係は?
熱中症になる目安として「暑さ指数(WBGT)」がある。暑さ指数とは、気温や湿度、輻射(ふくしゃ)熱などを総合的に判断した数値で、温度と同じ単位「℃」で表記される。この指数が示す熱中症の目安は、日常生活では「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」という段階がある。この評価基準をもって熱中症のなりやすさをテストした。
テストは、同じ車2台を用意して実施。A車の車内湿度は15%、B車は加湿器で車内の湿度を45%まで上げて、一定時間を経過したときに熱中症の目安となる暑さ指数(WBGT)が、それぞれどうなるか計測した。このときの外気温は23.3℃〜24.4℃、外湿度は11~19%、テスト開始時の車内温度は約30℃だった。
同型車を2台用意し、車内の湿度を変えてテストした。写真右に見える計測器で暑さ指数を測った
その結果、湿度が高いB車の暑さ指数(WBGT)が早く上昇し、「厳重警戒」となる30.9℃となった。一方A車も「注意」となる22.9℃となった。 同じ気温でも湿度が高いほうが、熱中症になりやすいことがわかった。また、春であっても熱中症の危険があることが明らかになった。
同じ外気温でも車内の湿度が高いとより熱中症になりやすいことがわかった
車の大きさは車内温度に関係ある?
春でも車内温度と湿度に注意が必要ということはわかったが、車の大きさは車内温度の上昇に関係があるのだろうか。上記と同じ場所で計測した。
比較したのはSUVと軽ワゴンの2台。2台の車内温度をエアコンで25℃にしてからエンジンを切り、計測を開始した。
テストで用意したSUVと軽ワゴン(写真左)のダッシュボードを、赤外線サーモグラフィで観察した(右)
その結果、SUVの車内温度が急上昇。最高車内温度は46.5℃に達した。一方の軽ワゴンは39.9℃だった。
SUVのほうが高温になった理由については、フロントガラスの面積と角度の違いがありそうだ。SUVのほうがフロントガラスの面積が広く角度が寝ていたため、直射日光がより多くダッシュボードに当たっていた。ダッシュボードの温度は計測開始60分後には、SUVは57.3℃、軽ワゴンで41.0℃になっていた。
直射日光が多く当たったSUVの温度上昇が顕著だった
なお、この時ダッシュボード上に置いていたスマートフォンやタブレットは、約30分で高温になり一部の機能を除いて使用できない状況になった。
ここまで見てきたように、春先から初夏の気候でも車内の温度は高温になる。また、湿度が高いと熱中症の危険性がより高まる。このため、小さい子供やペットを車内に残すことは「危険」。少しの時間だからといって、車内に小さい子供を残すことは絶対にやめよう。
※テストの結果は、天候や車種などで変わることがあります。