文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

見通しが良い交差点で繰り返される“十勝型事故”

「危なかった!」を事故防止に生かす

交通安全に詳しい専門家が自身の経験や事故事例からヒヤリハットを紹介する、このコラム。今回は、信号機のない見通しが良い交差点で、なぜか起きる出会い頭事故の話。相手の車が止まって見えたり、死角に隠れたり。また、優先意識も事故の原因にあるという。

交差車両と衝突する原因は3つ?

三十数年前になるだろうか、北海道帯広市近くの見通しの良い同じような道幅の交差点で、何人もの人が亡くなる衝突事故があった。当時その事故の取材中、現地の人からこの事故を“十勝型事故”と呼び、年に何件か起きていると聞いた。

見通しの良い交差点でなぜ衝突するのか不思議に思えた事故だが、その後、調査研究が進み、次のような原因が指摘されている。
①直進する自分の車と右や左からの交差車両が同じような速度で交差点に向かうと、双方のドライバーには相手の車が止まっているように見えてしまう。
②自車のAピラー(柱)に相手の車が隠れ続けてしまう不幸が重なり、交差点に接近するまで相手車両の存在に気づかない。
③自分の車が走る道路幅が交差側の道路より広く見えてしまう錯覚があり、優先意識から相手の車が止まるだろうと考えてしまう。
といったことが有力な説とされている。

この型の事故には「田園型」とか「コリジョンコース現象」(①の現象を指す)といった別名まであり、関係映像も多数ある。JAFの「実写版」危険予知・事故回避トレーニングにも動画を公開している。それでもこの型の事故は北海道に限らず、毎年のように繰り返されている。

2023年の正月、夜間ではあるが、福島県でこの型ではないかとの報道もある事故が起き、死傷者も出てしまった。春を控え、ドライブに出かける機会も増え、見通しの良い田園地帯の交差点を走ることもあると思うが、左右から来るドライバーも同じような錯覚状態にあることを頭に入れ、まずは自分こそが優先との意識を捨てることを心がけたい。

つまり事故の原因調査によれば、一見、錯覚によるものが多いように思えるが、実は運転時のアドレナリンのせいか、ドライバーの意識の根底にある自分優先の意識がこの型の事故要因の一つではないかと思えてならない。

指をさす男性

見通しが良い交差点ほど、油断は禁物。

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