文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

普通車から小型車へ。ダウンサイズの落とし穴

「危なかった!」を事故防止に生かす

※本連載は今回で最終回となります。ご愛読いただき、ありがとうございました。

交通安全に詳しい専門家が自身の経験や事故事例からヒヤリハットを紹介する、このコラム。今回は、普通車から小型車に乗り替えたときの運転操作の感覚が異なる話。ハンドル操作の誤りは、対向車との正面衝突など重大事故にもつながるので十分注意したい。

小型車のハンドルが軽く、車庫入れに失敗!

普通車から小型車に乗り替えたときのことだ。ハンドルやペダル類が驚くほど軽く感じ、運転が楽になったように思えた。小回りが利き、狭い道でも苦にならず、スイスイいける。走る力も普通車に負けず、信号からのスタートも前の車にしっかりついていける。

この簡便さが時にハンドル操作の雑さにつながってしまうことがあった。たとえば、バックでの車庫入れ時、ハンドルが軽く、つい回し過ぎてしまう。車の向きは普通車のときと同じ角度のつもりでも、タイヤは同じ角度に向いているわけではなく、ホイールベースの違いもあり、そのままバックしてしまうと、スペースの真ん中に入るはずもない。曲がってしまう。やり直しても、また回し過ぎ、同じことを繰り返すだけとなることがあった。

つまりは、普通車のときのハンドルの回し方と小型車のそれとは違い、自分の脳と小型車のハンドルがまったくシンクロしていないことに気づかされ、慣れるには時間が必要だった。
交通事故総合分析センターが発行する『イタルダインフォメーション No.126』に、後期高齢者の軽自動車運転中の死亡事故が増加傾向との調査レポートが掲載されていた。背景に、この年代の軽自動車保有の高まりがあるとしたうえで、道路の工作物への衝突に次いで、正面衝突事故が多いとあった。

カーブ、直進路を問わずだが、原因については漫然運転等の前方不注意が最も多いが、次に多いのがハンドル操作不適だという。それも時速30~50㎞での事故が多いという。なかにはカーブでハンドル操作を誤り、センターラインを越え、対向車と正面衝突した事例もあった。

車庫入れ時の失敗とは違い、こちらは命の危険に直結するハンドルの“軽さ”だ。むろん、すべてが普通車からの乗り替え組ではないだろうが、「小型車だから操作が楽で簡単」との認識は、必ずしも安全とイコールではない。新たな車を迎えたとき、ペダルの踏み加減やハンドル操作を慎重に探り、自分なりの運転感覚をつかむ姿勢が大切なのだと自覚した。

イタルダインフォメーション No.126
『軽乗用車運転中の後期高齢者による死亡事故 ~幹線道路での車線はみ出しに注意!~』

指をさす男性

小型車は運転操作が楽=安全とは限らない!

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