クルマが高いから? 日本人の所得が増えないから? 安東弘樹さんが「クルマ離れ」に陥る負の連鎖を斬る!

まだまだ「掘り出し物」のクルマも!
安東弘樹

最近クルマが高くなったと感じる安東弘樹さん。単なる値上げだけではない、日本を取り巻く深刻な理由とは? 無類のクルマ好きとして知られるフリーアナウンサー安東弘樹さんが、クルマにまつわるさまざまな出来事と自らの思いを伝えるエッセーです。

目次

軽自動車の価格が上昇、なかにはかつての高級車並みの価格も

最近、メーカーの新車試乗会に行くたびに、「クルマは高くなったなー」と思います。

特に、もともと高価ではなかった軽自動車に対して、そう感じることが増えました。

実際はどうなのか調べてみたのですが、1990年に発売された軽自動車の新車価格を見て驚きました。当時、最も高かった軽自動車は137万円で、多くのクルマが100万円前後。最新の軽自動車は、EVを除いても高いものは220万円前後と、倍、とまでは言えませんが100万円近くの差になります。

しかも1990年当時、カーナビゲーションはほとんど普及していませんので、高価なオプションは設定されておらず、車両本体価格に近い金額を払えば、そのクルマを買うことができました。

しかし今はほとんどのユーザーがカーナビをオプションで付けますので、その価格30万円ほどがプラスされます。今はさまざまなカーナビアプリがありますので、スマホをカーナビ代わりにしようと思えばできるのですが、多くの人が「純正の」カーナビを付けるそうで、総支払い価格は、さらに上がります。

今年試乗した、某軽自動車の試乗車のオプション込みの価格は320万円でした……。それこそ1990年当時であれば、高級セダンが買えた価格です。

クルマの高機能化に原材料費の高騰…とはいえ「給料が上がらない!」

もちろん、今はさまざまな安全装備や快適装備、また最も人気があるスーパーハイトワゴンの軽自動車には両側電動スライドドアだって付いています。そうなると価格が上がるのは仕方がありません。さらに原材料費の高騰などがクルマの値段を上げる要因になっています。それに対してメーカーが涙ぐましい努力をしているのも理解しています。

ですから軽自動車が高い、ということでメーカーを責めるつもりはありません。
むしろ問題なのは、われわれ日本人の収入が1990年頃からまったく上がっていない、ということでしょう。

現在、日本人の平均年収は450万円ちょっと。一方で欧米では、今や800万~1200万円ほどがざらです。もちろんその分、欧米諸国は物価も高いのですが、それと円安によるレートの分を差し引いたとしても、世界的に日本の状況は「異常」と言えるのは確かです。

収入が増えていないのに軽自動車の価格は実質、倍以上になっているわけですから。クルマ離れも加速する、というものです。

軽自動車の形状比較例(現行モデルと1990年代モデル)

スズキ ワゴンR スマイル(現行)

スズキ ワゴンR スマイル(現行)

スズキ アルト(1994年)

スズキ アルト(1994年)

ダイハツ タント カスタムX(現行)

ダイハツ タント カスタムX(現行)

ダイハツ ミラ(1990年)

ダイハツ ミラ(1990年)

ホンダ N-BOX(現行)

ホンダ N-BOX(現行)

ホンダ トゥディ(1990年)

ホンダ トゥディ(1990年)

広い視野の先に思わぬ人生が!? これからのクルマ選びは「賢さ」が大切!

ただ、われわれユーザーも賢くクルマを買う必要はあります。

たとえばスーパーハイトワゴンが主流の軽自動車市場ですが、ヒンジドアの古典的な軽自動車には、まだ安価な車種やグレードもあります。子育てをしている方にはスライドドアのハイトワゴンが必要かもしれませんが、そうでなければ、燃費も良く、横風の影響も少ない、古典的な形状の軽自動車を選んでもよいでしょう。

メーカーとしては、高価なハイトワゴンをすすめたいとは思いますが、購入の際には、あらゆる選択肢を視野に入れることをおすすめめします。その気になればスポーツタイプの軽自動車でキャンプにも行けますし(YouTubeを観れば、そういったユーザーがいるということがわかります)、広大なスペースが今の自分の生活に必要かどうかを考えてもいいかもしれません。

しばらく、軽自動車だけではなく、クルマの価格は上昇し続けるでしょう。その分、収入が上がるのが理想ですが、最近の動向を見ても、一気に欧米レベルにまで上がることは期待できそうにありません。

ただ、これも軽自動車に限らず、グレードによっては、「思わぬ掘り出し物」というクルマがあるのです。たとえば、輸入車のコンパクトカーの中でMTやユーズドカーでもいいという方でしたら、それこそ軽自動車よりも安価で燃費がいいクルマが存在します。

今はインターネットで気軽にすべてのメーカーのクルマを比較できますので、これまで、考えてもみなかったメーカーのクルマを、これを機会に選択肢の一つに加えてみるのはいかがでしょうか?

閉塞感がある時代ではありますが、少し視点を変えるだけで思わぬ新しい人生が始まるかもしれませんよ!

安東弘樹

あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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