文=大島由香里

冷蔵庫の野菜室はもはやビール室! ついにクラフトビールのプロデュースへ!

大島由香里先生のビール論【後編】
大島由香里

お笑い芸人から俳優、ミュージシャン、文化人まで幅広いジャンルの著名人が「今、とくに夢中になっている趣味」をテーマに、まさかと思うような意外な偏愛嗜好について論じます。 第9回はビールをこよなく愛すフリーアナウンサーの大島由香里さんにプロデュースされた「チェイサービール」、そして、寒くなったこの時期だからこそ飲みたいビールについて語っていただきました。


みんな違って、みんないい

私にとって「おすすめのクラフトビールはありますか?」という質問は、「幸せってなんですか?」と同じくらい難しい問題です。なぜなら、私自身のなかだけでも季節や場所や時間によって飲みたいビールは全然違うから。もちろん基本の好きなタイプはありますが、それを他人におすすめしたところでおそらく後々不安に駆られ、あれで大丈夫だっただろうか……と冗談ではなく夜も眠れなくなります。どんな物質にも相性がある中で、ビールと人間にもまた相性があり、それぞれの個性があるからこそ出会ってみないとわからない。みんな違って、みんないい。

大島由香里さんがプロデュースしたクラフトビール「SYLDRA」

プロデュースさせてもらった「SYLDRA」

「SYLDRA(シルドラ)」というビールは…

それをつくづく感じた出来事がこの夏に起こりました。ビール好きが功を奏し、私がプロデュースしたクラフトビールを本数限定で発売させてもらったときのこと。どういうビールを作りたいかを話し合った際、売るからには万人受けするものを作らなければ、と当初は考えていました。しかし気が付いてしまったのです。それって、今すでに売れている大手のビールなんじゃないか? と。そこから腹を括(くく)って発想を転換。好みは人それぞれなんだから、私が今夏にただ飲みたいビールを作ろう! そして最終的に決まったのが「ビールとビールの間に飲むビール」という自分でも耳を疑うようなコンセプトでした。

チェイサーのように飲みやすく、夏のベタベタを吹き飛ばす感覚、かつビール単体でもおいしく楽しめる一本をどこまで具現化できるか。ビアスタイル・味やアロマ・ネーミング・ボトルデザイン……会議に会議を重ね、生みの苦しみを経てできた「SYLDRA(シルドラ)」というビールは、間違いなく一生忘れない一本になりました。関わってくださったすべての方に感謝です。

ビールを飲んで楽しむだけでなく、作り出す側の気持ちを少しでも知ることができたのは私にとって大きな糧であり、これからまた新しいビールと出会うたびに、今こうして私の手に届くまで大変な道のりだっただろうねぇ……と、行程に思いを馳せながら、より一層深く味わうことができるようになりました。そして改めて思います。ビールの最適解は人それぞれだと。

  • プロデュースしたビール「SYLDRA」は既に完売。

これぞビールの力!

お仕事で生ビールを飲む大島由香里さん

仕事です(笑)。生ビールももちろん好き。

さて、寒くなったこの時期だからこそ私が今飲みたいビールについて考えてみました。大島家では毎年年末の恒例行事として、自宅で蟹(かに)を食べます。2021年の年末には、甥(おい)っ子や娘とグツグツ煮えた蟹すき鍋から蟹の爪の取り合いをし、口いっぱいに広がった海鮮の香りと旨みをペールエールでゴクリと流し込んだ記憶があります。

鍋の横に置かれたビールはすぐにキンキンではなくなるのですが、実はそれがちょうど良かったりするんです。ビールの温度が少し上がることによって、光り輝く銅色からあふれる華やかなホップの香りが引き立ち、海の味覚王者に負けじとより一層強くなるから。ん~素敵なペアリング。さあ2022年の年末はホットプレートでバター焼きか、はたまた蟹しゃぶか。バター醤油でじゅわっと最高点まで引き出された蟹のこっくりとした甘味と、スタウトのまろやかな口当たりとモルティ※1なコクが合うかもしれない。しゃぶしゃぶして花開いた蟹の足を大口開けて放り込んだら、IPLのクリーンで存在感のある苦みとマリアージュするかもしれない。ベルジャンホワイト※2も良さそう。

「引き立てる」味わい方も「化学反応を楽しむ」味わい方もどちらも叶(かな)えてくれて、元々おいしい食材をも未知の美食世界へ誘(いざな)ってくれるのがビールの力です。プルスウルトラ※3。あぁ、口中が強烈な年末モードになってしまったので、この話はこの辺にしておきます。

  • ※1モルティ:麦芽[malt]のエキスが豊富(なのでコクがある)。
  • ※2ベルジャンホワイト:小麦とオレンジピール、コリアンダーを使った香りが楽しめる白ビール。
  • ※3プルスウルトラとは、ラテン語で「もっと先へ」を意味し、スペインの国のスローガンとして使われる。

今日も乾杯! ビールに囲まれた生活のすすめ

YouTube「大島由香里に乾杯!」の撮影中の様子

YouTubeの撮影中。視聴者の皆さんと乾杯!

ビールがおいしいと気づいてから約12年。クラフトビールの世界に足を踏み入れてから約4年。気づけば我が家には隔週で6種類の個性的なクラフトビールが届き、リビングには毎月4種類のビールがサーバーでいつでも注げる環境が整っていました。

ついに! アレが我が家に設置されてしまったー!!

冷蔵庫の野菜室はもはやビール室と化していますし、YouTubeでもすっぴんでビールを飲みながら語る動画を配信させてもらうという、とにかくビールに囲まれたとても幸せな日々を送っています。

環境が変わろうともずっと変わらないのは、ひと口目を口にしたときに泡のように心に膨らみ、スルッと染み込んできてくれるあの幸福感。今日も仕事を頑張ってよかった、大変な出来事を乗り越えた、別に何もしなかったけど無事に一日を終えられた。理由はなんであれ、いつでもどこでも優しく楽しく迎え入れてくれ、生活を色彩豊かにしてくれる魔法の飲み物。だから私は、今日もビールをいただきます。乾杯。

大島由香里

おおしま・ゆかり フジテレビ在局時は主に報道番組を担当。現在はTOKYO MX『バラいろダンディ』にレギュラー出演中の他、ラジオやバラエティー番組などで幅広く活躍中。ビール好きが高じて「ビールとビールの間に飲む」チェイサービールのプロデュースが叶う。また“すっぴん晩酌”動画をアップしているYouTubeは、赤裸々で飾らない姿が話題に。©︎アライテツヤ YouTubeチャンネル 「大島由香里に乾杯!」 Instagram 大島由香里(@yukari__oshima)

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