偏愛アカデミー

「世界一のファンタジスタになれるかも!? 」ナイツ土屋伸之先生の消しゴムサッカー論

私の推し活語ります【前編】

土屋伸之
2022.08.07
2022.08.07
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お笑い芸人から俳優、ミュージシャン、文化人まで幅広いジャンルの著名人が「今、とくに夢中になっている趣味」をテーマに、まさかと思うような意外な偏愛嗜好について論じます。

第5回は、消しゴム人形を駒に使って遊ぶ卓上のサッカーゲームを考案し、自らを世界消しサカ協会会長と名乗る漫才コンビのナイツ・土屋伸之さんに、知られざる消しゴムサッカーの魅力について熱く語っていただきました。


消しゴムサッカーは孤高の一人遊び

「世界一のファンタジスタになれるよ」

消しゴムサッカーをしたことのない人を誘うとしたらこう言います。なぜなら“消しサカ”では誰でもメッシになれるから。

消しゴムサッカーは、キン消し(漫画『キン肉マン』に登場する超人の形を模した消しゴムの人形)やウルトラマンの怪獣消しゴムを選手に見立て、ノック式のボールペンで弾いてサッカーをするテーブルゲームのこと。奇数チームと偶数チームに分かれて選手が弾いたボール(サイコロ)の出目によって攻守を入れ替えながらゴールを目指します。相手選手を突き飛ばした場合、10cm以上ならファールといった細かなルールを設定し、単なる遊びの域を超え、ライフワーク的にのめり込んでいる僕の趣味です。

そもそも僕がこの消しゴムサッカーを考えたのは10歳のとき。最初は当時流行(はや)っていたキン消しを坂道に転がして、どのキン消しが一番遠くまで行けるかという遊びをしていました。

そのうちキン消しを国ごとに分け、オリンピックと称してメダル争いをするようになりました。それならばもっと面白い競技が作れないものかと考え、机の引き出しにあったものでいろいろと試したところ「サイコロのボールをボールペンで弾くサッカー」というスタイルができたのです。

消しサカのルールを実戦形式で完全解説!

これが最高に面白かった。当時はファミコンも流行っていて友達の家でよく遊んでいました。でも僕にとっては消しゴムサッカーが一番。これに勝る遊びはないと夢中になりました。
消しサカは一人でやるほうが楽しいんです。神目線で自分が完全に中立の立場でいると、選手一人ひとりの魂を感じることができる。選手たちの声も聞こえてきます。

友達とも何度か消しサカをしてみましたが、選手たちを道具として使う「人間vs人間」の試合になってしまった。それはそれで面白いんだけど選手の声は聞こえなかった。

こう言うと子供の「お人形を使ったごっこ遊び」に似ていると思うかもしれませんね。でも「ごっこ遊び」は自分の意志で人形を動かすのに対し、消しサカではボールペンできっかけを与えているだけ。打たれた選手がどのように動くかは未知数です。

つまりそれは選手のポテンシャルによるプレーということなんです。

消しゴムサッカーの様子

消しサカはサイコロをボール、テーブルをピッチに見立てて行われる。

自分で操れる部分と自分の予測を超える部分が絶妙だから選手はとても大事です。そして彼らとのコミュニケーションもまたしかり。繰り返し練習して打つことでお互い見えてくるものがある。選手とともに得意なパス回しを研究し、そのうえでボールの位置や打つ角度といったシミュレーションを続ける。経験値で差が出てくると僕は思っています。

次に動力であるボールペン。ぼくはいつも三菱のボクシーというボールペンを使っていますが、今後消しサカ人口が増えて猛者たちが出てきたときに、この場面では強いボールペンを使おうとか、ここではバネの強弱を利用して……などとまるでゴルフのクラブセットのように何十本も用意するプレーヤーが現れるかもしれないと危惧(きぐ)しています。

僕はボールペンの性能について、そこまで考えたことはありません。まだ一人遊びの延長で「自分が育てた選手vs自分で育てた選手」の試合を楽しんでいるから。それに僕よりもうまいプレーヤーにそもそも出会ったことがないのでボールペンにこだわらなくてもいいんです。

いつかの日か強敵が現れて「あの人に勝ちたい」と思うようになったら僕も変わるとは思います。「人間vs人間」の試合が面白くなるかもしれない。そのときまで神目線で試合をコントロールしていたい。神目線は公平性がとても大事なので、そのためには1本のボールペンで試合を貫徹したほうが良いと思っています。

消しゴムサッカーを楽しむナイツ土屋さんの様子

プレーはノック式のボールペンで。パスコースを見極める真剣な眼差し。

最新動画。消しサカリーグ Season 8 第8節!

消しサカ神経は世界一あると思う

ここまでで消しサカは本当のサッカーの試合を見ているような感覚が得られることはおわかりいただけたと思います。でもそれだけじゃないのが消しサカで、あたかも自分がサッカーをやっているという感覚にすらなれます。

僕はもともとサッカーが好きで、できることなら選手として試合に出たかったけれど、運動神経が悪いから諦(あきら)めたんです。でも消しサカは違う。消しゴムサッカーだったら運動神経と関係なく良いプレーを生み出せる。大切なのは消しサカ神経なんです。

僕が作った消しサカリーグのビーネというチームにサンシャイン選手がいるんですが、彼は今、司令塔として絶好調でパスやコーナーキックはもちろん、ボールを味方に当てて転がったところをシュートするといった劇的なプレーをいくつも演出し続けています。

ミッドフィールダー・サンシャイン選手の写真

ビーネのミッドフィールダー・サンシャイン選手

そんなサンシャイン選手が連携プレーによってパスを繋(つな)ぎゴールを決めたとき、自分がまるでサンシャインになってシュートをしたかのように熱くなれる。一心同体なんです。

またかつて相手ディフェンダーの股を抜いて、さらにそのディフェンダーをかわして回り込んでシュートという奇跡的なスーパープレーをする選手もいた。こんな胸熱(むねあつ)なプレーが消しサカでも起こります。

僕が選手の魂を感じるといった意味がおわかりいただけると思います。もちろん神としての自分が指示をしていますが、同時にこの消しゴムの中に、試合を牛耳る脳みそが宿っているとすら思う。サンシャインという司令塔に尊敬の念を覚える。こういうとき改めて消しサカって面白いと感じます。

ゴールを狙うナイツ土屋さん

公式ルールでは試合時間30分で机の大きさにも推奨サイズがある。

今はどうしても一人のほうがいいプレーができるので、一人プレーにこだわってしまいますが、僕と同等にうまいプレーヤーの出現もどこかで願っています。そして一緒に消しサカを盛り上げていきたいという思いも捨てきれていません。

どのようにそんな逸材を育成していくか頭を悩ませています。僕は10歳からずっとやっているのでうまくて当たり前。モチベーションのある人が本気で集中して練習すれば、きっと僕を超えるプレーヤーになる。そう思っています。

最近、テレビ番組の『SASUKE』が五輪種目候補になったように、何があるかわからない時代です。eスポーツもゲームから生まれたものだけど、スポーツとして認知されるようになった。そこに夢があると思うんです。

やはりスポーツとして突き詰めていく人が出てきてほしい。そこまで徹底して向き合うことで初めてこの消しゴムサッカーという競技の面白さが理解できると思うんです。

後編は、土屋先生の選ぶ「消しサカ選手ベスト 3 」をお届けします。

土屋伸之

つちや・のぶゆき 2000年、ボケの塙宣之と漫才コンビ「ナイツ」を結成。現在、TBSラジオ『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』、ニッポン放送『ナイツ ザ・ラジオショー』等にレギュラー出演中。
10/23〜『ナイツ独演会 それだけでもウキウキします』開催。

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