老舗料亭のあんこう鍋に、時間無制限いちご狩り! 早春の日帰り茨城旅
すべてが本気の茨城県! トゥクトゥクの爽快ドライブもなんでもあるのに、なぜか「都道府県魅力度ランキング」では上位に名前が挙がらない茨城県。都心から日帰りできて、市場直送の海鮮にとれたてフルーツ、温泉にアクティビティと魅力がぎっしりなのに、なぜ? そんな疑問を心の奥底に抱えながらも、今がまさに旬のあんこう鍋、そして早春のいちご狩りを堪能したいという一心で、日帰りの茨城県旅を敢行した。
完熟いちごを食べまくる!
食べ放題、時間無制限一本勝負
茨城県鉾田市の「深作農園」は、100年間続いている老舗の農園にして、日本で初めて「時間無制限、食べ放題」のいちご狩りを実施したのだとか。「それなら、朝いちばんに行けば無限にいちごを食べられるのでは……?」という下心を満載に、平日の午前9時、受付のスタートに合わせて現地にたどり着いた。
受付の横では、ブランドいちごの販売も。開店と同時に次々とお客さんが来て、飛ぶようにいちごが売れていく……
店内にはコンフィチュールやスプレッドといったオリジナル食品や、野菜の直売など魅力的な商品がたくさん
午前9時、直売所でいちご狩りの受付がスタート。休日には数百人が訪れることも多いそうなので、早めの来場がおすすめ(いちご狩り料金は時期、曜日によって変動します。詳しくは深作農園ウェブサイト でご確認ください)
●深作農園/茨城県鉾田市台濁沢361 Tel.0291‐39‐8560
https://fukasaku.com/
ヘタの下まで真っ赤な、完熟いちごがずらり!こ、これを無限に食べていいってコト……?
この日の食べ放題の品種は「ラブソング」と「ひな苺」の2種類。食べられる品種は日によって違うそうなので、2種類を食べ比べできるラッキーデー! 2つのビニールハウスにそれぞれの品種があると説明を受け、いざ、夢のいちご食べ放題天国へ!
高ぶる心を落ち着けつつ、大ぶりでヘタの下まで真っ赤な完熟の「ラブソング」にかぶりつくと……あ、甘~い! イメージしていた味をはるかに上回る、輪郭がはっきりとした甘みとほのかな酸味。思わず居住まいを正してもう一口。たった今摘んだばかりのいちごは、スーパーで買ういちごとは別の食べ物かと思うほど香りが際立つ、別次元のおいしさ。となりのハウスの「ひな苺」は、さらに酸味が少なく、マイルドな甘みに頬がゆるむ。日が当たる株のいちごのとろけるような甘さ、日陰の株のいちごのしゃっきりとした歯ごたえ。1粒ごとに驚きを感じて、手が止まらない! 食べた数は30を優に超え、「満足いくまでいちごを堪能する」という、至高の時間を味わった。
水たまりに氷が張るほどの気温ながら、ハウスの中は春の温かさ。時間に追われず、じっくりと次の一粒を厳選できる
ハウスに一歩入ると、さわやかな香りが最高に心地いい。そして、向こうが見えないほど延々といちご、いちご、いちご……
いちご狩りが楽しめるのは5月上旬まで。ところどころのかわいらしい花を眺めるのもたのしい
時間無制限での食べ放題を実施しているのは「もちろん、お客さんに満足してもらうためです」と話してくれたのは、深作農園の深作勝己社長。「いちご狩りは予約が必要だったり、時間制限があったりするところがほとんど。だけど、例えばお子さんがいると予定通りにならないこともあるでしょうし、予約時間を気にして急いでクルマを運転してきて、事故があったりしてはいけない。みなさんに楽しんでいただけるように、安全性と心の余裕も重視して、この形を始めました」とのこと。確かにこの日も、3歳くらいの子供を連れた家族が笑顔で会話を楽しみつつ、マイペースにいちご狩りを楽しんでいる幸せそうな姿が印象的だった。欲望のままに挑んだ己を鑑み、ちょっと反省……。社長、とってもおいしかったです!
いちご狩りの後は、併設のカフェ「LE‐FUKASAKU」へ。季節によってメニューも変わるそうだが、ここも春はいちごのスイーツがずらり。一番人気という「スペシャルイチゴパフェ」は、いちごの味が濃いながらもすっきりとしたいちごのミックスソフトクリームの下に、惜しげもなくたっぷりのいちご! いちごをお腹いっぱい食べるといういつの日にかみていた夢を叶え、贅沢な時間をたっぷりと楽しんだ。
ボリュームがすごい! こちらのメニューも通算20粒以上のいちごを使用している豪華さ。(スペシャルイチゴパフェ 2,380円)
甘すぎないふわふわのメレンゲクリームが、いちごとパンケーキを引き立てる。特製のコンフィチュールを添えて食べるのも楽しい!(たっぷりクリームパンケーキ 1,280円 いちごジュース550円)
テイクアウトのケーキやスイーツも、ふんだんにいちごが使われていて目にも楽しい
冬から春はいちご、夏はメロン、秋にはさつまいものスイーツと、1年を通して群を抜いたクオリティのスイーツが堪能できる。個性的なバームクーヘンが楽しい「Farmkuchen Fukasaku」も併設。
●LE‐FUKASAKU/茨城県鉾田市台濁沢361 Tel.0291‐32‐8732
https://le-fukasaku.com/
茨城の新名物!?
トゥクトゥクでアジアの風を感じる
「茨城県で、トゥクトゥクを運転できるらしい」という情報を目にしてから、そのことで頭がいっぱいになっていた。あの、タイに旅行したとき後部座席に乗った三輪タクシーを、自分で運転できるんですか!?
「はい。こちらでお貸出ししているトゥクトゥクは、普通免許があれば乗ることができます」と説明してくれたのは、大洗町観光情報センター「うみまちテラス」で、トゥクトゥクの乗車ガイドを務めている中村さん。こちらでレンタルしている車体は「側車付軽二輪」の区分となり、普通自動車免許で運転が可能なのだとか。さっそくトゥクトゥクの停車場に案内してもらうと、アジアらしいビビッドなブルーの車体が目に飛び込んできた。シルバーのドラッグバー型ハンドルにスロットルがつき、右足元にはブレーキペダル。なんだか遊園地の乗り物のような印象で楽しくなるが、公道を走ることを思い、気を引き締める。
運転操作のサポートも務めてくれる中村さんに操作説明を聞いて、いざ出発……しようとしたのだが、ハンドルが予想以上に重い! パワステがない頃の自動車のようにずっしりとしたハンドルの感覚は、筋トレのごとし。ぐぐぐっと両腕に渾身の力を込め、大洗の町へ乗り出した。
うみまちテラスからスタートして、海岸までは10分程度。ガイド含め最大7人乗りなので、家族そろって、爽快なドライブが楽しめる。(トゥクトゥクレンタル1時間7000円~(免責保障別))
跨った中央にギアがあるのが不思議な感じ。停止状態ではハンドルがとても重いので、動き出したタイミングでハンドルを切るのがよいそう
タイから輸入したというトゥクトゥクは、目にも鮮やか。季節や天気により、毎日違った楽しみが広がりそうだ
●うみまちテラス/東茨城郡大洗町桜道301 Tel.029‐266-0788
https://www.oarai-info.jp/tuktuk/tuktuk-rental/
走行していると、側面を隔てるものがないため、周囲の景色、音、匂いがダイレクトに伝わってくる。路面の感覚も直に感じられるのがなんとも楽しい! 外気を顔に感じ、ハンドルを懸命に回していると、クルマともバイクとも違う、運転していることのプリミティブな喜びを感じる。目立つ車体に、下校中の地元の小学生が「あっ!」と声を上げ、手を振ってくれた。
中村さんは「茨城県は、海も山も、グルメも観光地もあるのに、なぜか魅力度ランキングでは人気がないんですよね。何でもありすぎるせいでしょうか」と首をかしげながらも、新たな観光誘致施策として、さらにEVのトゥクトゥクを導入する計画を教えてくれた。その土地丸ごとの魅力を、家族やグループ全員で共有できるトゥクトゥクは、たしかに観光客にとってこの上ない乗り物かもしれない。大洗町そのものをテーマパーク以上に楽しめる、貴重な体験となった。
大洗の市街地から、海岸まで。町そのものの個性がダイレクトに感じられる。た、楽しい……!
夏場は家族連れでにぎわう海水浴場。まだ春浅いこの季節は、静かで雄大な景観をひとり占めできた
トゥクトゥクを停めて大洗海岸をしばし散歩。遠くでは釣り人の姿も多く見られた
これこそ、うまみの極致!
老舗料亭の肝たっぷりあんこう鍋
春の茨城といえば、欠かせないのが、旬のあんこう鍋。地元ならではの名店を調査し、創業から78年という老舗料亭「茨城郷土料理 山翠」で、あんこうのすべての部位を全力で堪能できる「あんこうフルコース」のどぶ汁仕立てを注文した。間口はつつましやかながら、驚くほど奥行きがある建物は、まさに老舗ならでは。入口の「あんこうの碑」に、多くのあんこうを取り扱ってきた歴史と矜持を見て取れ、期待が高まった。
時代ごとに、多くの客を楽しませてきた老舗料亭。この日もテレビの取材をはじめ、大勢の来客があり大忙しの様相を呈していた(あんこうフルコース+どぶ汁変更 1人前11,500円)
長年、多くのあんこうを取り扱ってきたことによる「あんこうの碑」。おいしくいただいた後に、手を合わせる客もいるのだとか
●茨城郷土料理 山翠/水戸市泉町2-2-40 Tel.029-221-3617
https://www.sansui-mito.com/
あんこうの各部位を使用したきらびやかなコースメニューの数々……の中でも、ひときわ目を引くのは、100本以上の牙のような歯が衝撃的なあんこうの兜焼き、「柳焼き」だ。「あんこうは、ほほ肉が一番おいしいとされています。ほほ肉だけが唯一繊維質になっているので、箸を入れると柳のように裂ける。なので柳焼きと呼んでいます」と教えてくださったのは山翠の女将、高野貴美子さん。多くのあんこうを扱っているからこそ兜を提供できるそうで、「柳焼き」と名付けたのも山翠なのだそう。なるほど繊維状に身がほぐれ、豪快な見た目とは裏腹に、白身肉の上品でやわらかいうまみを感じる。「あんこうを丸ごと食べてるぞ!」という実感とともに、箸で可食部を取り出すのも楽しい逸品だった。
二重、三重に歯が生えているあんこうの兜。提供しているお店はごくまれという、幻の逸品だ。
鍋に使用されるという、たっぷりとした極太の肝! 期待が高まる
あんこうの供酢は、肝入りの味噌に茹でたあんこうをつけていただく郷土料理。あんこうの身、肝、皮等の煮凝りが並び、食感も味わいも全く違った三つの個性が楽しい
海のフォアグラこと、あん肝。深いうまみがありながらも澄んだ味わいは、さすがの一言
あん肝をより滑らかな舌触りにした、あん肝豆腐。あんこうを工夫、研究しつくした究極の一品
そして、まちにまった今回のメイン、「山翠風どぶ汁」が、湯気を立てて登場! 高野さんが「どぶ汁というのは、もともと地元では漁師鍋と言われておりまして、あんこうの水分とお野菜の水分で作るといわれている野趣あふれるものですが、こちらではあん肝を乾煎りしてお味噌を合わせ、それからだしを入れて丁寧にお作りしております」とにっこり。さっそく一口スープをいただくと、期待以上の濃厚さをたたえているのに、上品な奥行きがある味わいに衝撃! 七つ道具と言われるあんこうの部位が入った鍋には、ほっくりとした身、コリコリとした胃袋、プリッと歯を押し返す弾力の皮など、一口ごとに食感が違い、またそのどれもが肝のコクをまとって、とんでもないうまみとなっている。えのきや春菊の清涼感、ネギやゴボウ、こんにゃくの歯触りも楽しく、箸が止まらない。すべての食材のうまみを吸い込んだ〆の雑炊まで全力で堪能し、かつてない、この上ない充足感に満たされた。
すべての具材が肝をまとい、濃厚なのに何とも上品。老舗ならではの繊細で巧みな味わいは随一
ずらりと並んだフルコースに笑みがこぼれる。〆の雑炊まで、あんこうを隅々まで堪能した
特別に吊るし切り前の様子を見せていただいた。このあんこうは10㎏クラスとのこと。圧巻の迫力!
「日帰りで行けるから」と、気軽に足を運んだことを反省するくらい、茨城は本気(マジ)だった。いちごも、トゥクトゥクも、あんこう鍋も、関わる人すべてが、来訪者によりよくあることを真剣に追求しており、気軽に訪れたこちらの想像をはるかに上回っていて、うれしい驚きと充実感でいっぱいになった。
深作農園は、夏にはメロンのスイーツが楽しめるそうだ。その頃には、トゥクトゥクで海辺を走るとまた違った景色を見ることができるだろうし、山翠では季節ならではの料理を堪能したい。底知れぬ魅力がある茨城県、また季節が変わったら絶対に訪れたい。だって、日帰りで気軽にいけるのだから。
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