日本の魅力、再発見

農の恵み、白の輝き~愛媛県・東温市、砥部町

愛媛県・東温市、砥部町

撮影=飯田安国
2022.06.13
愛媛県立とべ動物園の絶対的アイドル、ホッキョクグマのピース。
2022.06.13
愛媛県立とべ動物園の絶対的アイドル、ホッキョクグマのピース。

日本全国をドライブで旅する「日本の魅力、再発見」。今回は県都・松山市にほど近い、愛媛県の東温(とうおん)市と砥部(とべ)町をドライブし、魅力を探した。

東温市

先人が拓いた農の恵みと
スイーツを満喫

東温市は三方を山に囲まれ、市の中央部には重信川(しげのぶかわ)が西の伊予灘に向かって流れている。山間部では棚田で米づくりが、平野部では麦と米の二毛作が行われるなど、水と緑に恵まれた地域だ。

そんな東温市の自然をゆっくり眺めようと、まずは東温市さくらの湯観光物産センターへ。ここで電動アシスト機能が付いたスポーツタイプの自転車E-BIKEとヘルメットを借りる。東温市が6つ用意したサイクリングコースのうち、E-BIKEのアシスト力を生かすべく山間部へ向かうコースを選択。全行程約2時間、2022年に農林水産省の「つなぐ棚田遺産」に選定された雨滝音田(あまたきおんだ)の棚田や標高約400mの白猪(しらい)の滝農村公園を巡るルートに向けてペダルを踏んだ。

棚田を結ぶあぜ道を走る自転車

棚田を眺めながらあぜ道を走る。E-BIKEは急な坂道でも駆動力をしっかり補助してくれた。
E-BIKEレンタル料 400円/1時間(東温市さくらの湯観光物産センター) 東温市北方甲2098 ☎089-993-8054

田植えが始まる前の棚田を眺めながら、国道494号の坂を上る。E-BIKEは低速では背中を押すように強くアシストし、速度が高まっても自転車の軽快感は損なわれない。強いアシスト力を頼りに、あぜ道の細い急坂にも分け入った。棚田の石垣に使われている石はどこから運んできたのだろうか。そんなことを考えながらペダルを踏んでいると、静かな山村にウグイスの鳴き声が響いた。

道路を自転車で走るライダー

国道494号の坂を上る。道路脇の青い帯には、ランドマークまでの距離が標示されていた。

道路脇で休憩し、周囲をながめるライダー

菜の花が咲く国道の脇でひと休み。坂道を上るサイクリングにE-BIKEは最適だった。

サイクリングルートの途中にある「母恵夢(ぽえむ)スイーツパーク」に立ち寄った。ここでは、愛媛を代表する和洋菓子のひとつ、母恵夢の製造工程の見学をはじめ、工場直売の商品や、ここでしか買えない出来立てのお菓子などを買ったり食べたりできる。屋外には足湯も設けられており、サイクリングの疲れも癒やしてくれる。

工場ではベビー母恵夢を製造していた。あんが皮に包まれるところから、成形、焼き上げから包装まで一連の工程が公開されている。一列に並んでお行儀よく窯から出てくるベビー母恵夢の姿は壮観だった。イートインエリアで母恵夢をいただく。皮に包まれた黄味餡(あん)がしっとりとしており、口当たりがいい。母恵夢の味を満喫した。

ベビーポエムを製造する工場の様子

工場見学のエリアでは、ベビー母恵夢が次から次へと焼き上がっていく姿を見ることができた。
東温市則之内甲2585-1 ☎089-955-8333

母恵夢などの商品が並ぶ

奥は「生母恵夢」(3個入594円から)、左は「ベビー母恵夢」(75円)、右手前のカットしたものは「母恵夢」(108円)。

愛媛県はみかんやいよかんなど柑橘(かんきつ)類の一大産地だが、東温市ではいちごの生産も盛んで、春になると市内のスイーツ店ではいちごを使ったお菓子が提供されるそうだ。東温市の農の恵みを味わうため、E-BIKEを返却した後で下林地区へと足を向けた。

「いちご日和」は、いちご栽培を手がける農家がスイーツを提供するカフェだ。ここではいちごを使った看板メニューをいただく。いちごのシェイクは、いちご自体の爽やかな甘みといちごの種のプチプチとした食感が心地よい。いちごのタルトはサクサクとしたタルト生地にのった甘すぎないクリームが、いちごの甘みを引き立てている。どちらもいちごの新鮮さが生きたスイーツだった。

いちご日和のいちごシェイクとタルト

いちご日和のいちごシェイク(500円)といちごのタルト(380円)。花が咲くカフェの庭でも食べることができる。 東温市下林1736-1 ☎089-955-2515

下林地区にはほかにも、農の恵みが楽しめるところがある。いちご日和から車で5分ほど進んだ先にある「どぶろく工房 農家レストラン由紀っ娘」では、2008年に国の構造改革特区のどぶろく特区認定を東温市が受けたことをきっかけに、酒類製造免許を取得。どぶろく造りを始めた。

「ここは寒暖差があり、おいしい米がとれます。また、『東温アルプス』と呼ばれる市境の山々から流れ出す伏流水という、いい水にも恵まれていることも、どぶろく造りに適していますね」と、代表の藤井省三さん。2022年2月に行われた第15回全国どぶろく研究大会では、全国から寄せられたどぶろくのなかから、淡麗の部で優秀賞を獲得した。

自宅用に中辛のどぶろくを購入した酒豪の編集部・Sに後日感想を聞くと「口に含んだときのフレッシュな酸味と微発泡の感覚、お米の程よい粒感が混ざり合い、口の中でとろけていくのが心地よかった」とのこと。喉越しも思ったより軽く、どぶろくのイメージが変わったそうだ。

どぶろくを手にする藤井省三さん

どぶろく研究大会で入賞した「由紀っ娘物語」と、赤い酵母を使った「はな由紀」を持つ藤井省三さん。価格はどちらも1,600円。 東温市下林甲296 ☎089-964-2918

愛媛県が35年連続日本一の生産量を誇るはだか麦。はだか麦は大麦の一種で、脱穀するときに穀皮がはがれやすいことが特徴。はだか麦のうち、もちのように粘り気があり、黒紫色の実をつけるものは弘法大師(空海)が唐から種を持ち帰ったという伝説があり、“ダイシモチ”とも呼ばれている。

農業生産法人ジェイ・ウィングファームは、瀬戸内海沿岸地域で栽培されてきたダイシモチを大事に生産してきた。四国農業試験場で1997年に育成されたダイシモチの新種開発に参画し、その高品質化を目指して完成させたのが「媛もち麥(ひめもちむぎ)」。食物繊維の量が白米に比べて約20倍と多く、アントシアニンが含まれている皮の部分を残しつつ食感の良さも両立するよう、自社で精麦している。媛もち麥は、米に混ぜて炊くと、食物繊維が豊富な麦ごはんとなる。「媛もち麥生あま酒」や「もち麦せんべい」といった加工品も開発している。

同社の牧秀宣社長は、「石鎚(いしづち)山から下りてくる風と、ミネラルを含んだ海風がぶつかり、実を付ける春頃に雨が降りがちなこの地の気候が麦づくりに適している」と話す。訪れたときの麦畑は穂が付いたところで緑一色だったが、5月には麦秋を迎えて刈り取りを行い、その後すぐ田植えと、東温市の田園風景は季節によってさまざまに変わっていく。農業が景観向上に一役買っていることも感じた。

麦畑で話し合う男性

麦畑で話し合う牧さん(右)と同社取締役の大森陽平さん(左)。若い農業家が育っている。 東温市北野田711-4 ☎089-964-4190

ジェイ・ウイングファームにいる与那国馬

ジェイ・ウィングファームでは、与那国馬が飼育されていた。

タルトという言葉で、どのようなスイーツを想像するだろうか。前述したいちご日和でいただいたもののように、タルト生地にフルーツをのせたものを一般的にタルトと呼ぶが、愛媛県でタルトとは、カステラ生地であんを巻いたロールケーキのようなお菓子も指す。愛媛独自のタルトは、久松家初代松山藩主・松平定行が1647年、ポルトガル船来航に伴う海上警護のため訪れた長崎で、カステラの中にジャムが巻かれた南蛮菓子であるタルトに出会い、その製法を持ち帰ったことを起源としている。

愛媛版タルトの製作体験ができると聞き、事前に予約しておいたハタダお菓子館を訪れた。一辺25㎝ほどのスポンジケーキと、砕いた栗が練り込まれたあんが目の前に用意される。スポンジ生地の上にあんを塗りひろげ、それを巻くだけと工程を書き記すと簡単に思えるが、あんを均等に広げ、巻いていく作業は意外と難しい。店の方に指導を仰ぎながら10分ほどで巻き上げるが、職人さんはあんを塗るのに5秒、巻くのは2秒あれば十分だそうだ。「手際がよかったですね」と褒めていただいたものの、実際の商品と比べると仕上がりの差は歴然としていた。ここでは職人さんが手作りでタルトをつくる姿も見学できる。旅の思い出とお土産をひとつ増やすことができた。

タルトを巻く工程

あんを塗りひろげたスポンジを巻いていく。簡単に見えるが、見栄えよく仕上げるのは難しかった。 タルト手巻き体験 体験料1,100円(要予約) 東温市牛渕1008-1 ☎089-964-5000 JAF優待

体験でつくったタルトと、職人が手がけたタルトの比較

出来上がったタルトの仕上がりを、職人が手がけた商品と比較した。あんの「の」の字がきれいに仕上げられている右側が、職人の手によるものだ。

見奈良(みなら)天然温泉 利楽(りらく)で東温市の旅の仕上げをした。ここでは、地下1,500mにある約7500万年前の地層からくみ上げられる炭酸水素塩泉と、地下2,000mの約2億年前の地層からくみ上げられる塩化物泉の2種類の源泉が引かれている。野天風呂ばかりでなく洞窟風呂や壺湯、歩行湯などが用意されており、さまざまな入り方が楽しめるのが特徴だ。広々とした野天風呂に体を委ねていると、旅の疲れがお湯に溶け出すような気持ちになった。

大きさが自慢の、見奈良天然温泉 利楽の野天風呂

西日本最大級の大きさを誇る見奈良天然温泉 利楽の野天風呂。開放感も最大級だ。東温市見奈良1110 ☎089-955-1126 入浴料980円 JAF優待

 壺湯に入る男性

一人用の壺湯にも入る。砥部焼の浴槽もあり、浸かるのが楽しい。

見奈良温泉 利楽の休憩スペースで休む男性

屋内外に広い休憩スペースがあり、湯上がりにくつろいだ。

砥部町

日用の美しさを追い求める
砥部焼を、見て、体験する

松山の中心部から国道379号を南下し、重信川を渡ると砥部町に入る。ここから先、国道379号は「砥部陶街道」(とべとうかいどう)という愛称で呼ばれ、砥部焼の陶板を使ったタワーが立っていたり、中央分離帯に砥部焼の大きな器が置かれるなど、旅する人に陶磁器のまちに入ったことを教えてくれる。

砥部は江戸時代から焼き物が盛んな街であったが、現在のような砥部焼になったのは1777年に杉野丈助が白磁の焼成に成功したことによる。丸みを帯びてぽってりとしたフォルムはシンプルで飽きにくく、厚くて丈夫なことから生活雑器として親しまれている。砥部町内外に100以上の窯元があり、それぞれの窯元で伝統的な作風の皿や、モダンな器などが生産されている。

砥部焼観光センター炎の里(えんのさと)を訪ねた。ここは千山窯という窯元であると同時に、店舗で60~70の窯元の作品を展示販売し、さまざまな作品から好みの一品に出会うことができる施設だ。

砥部焼観光センター炎の里の店内

砥部焼観光センター炎の里の店内。窯元が焼き上げた器がずらりと並び、選ぶ楽しみが広がる。砥部町千足359 ☎089-962-2070 JAF優待

ここでは、素焼きした器に絵付けをして、オリジナルの作品をつくることもできる。旅の思い出にと、その体験を申し込んだ。湯呑みから花瓶まで10種類以上ある中からケーキ皿を選び、絵筆を取る。絵の具は黄色や赤など4色あり、色鮮やかな作品をつくることもできるが、砥部焼らしい青一色で濃淡を付けて模様を描いてみることにした。正直に言うと、多くの色を使ったときにきれいに仕上げる自信がなかったのだ。

気づくと、「僕もやってみる」とカメラマンのヤスクニさんも絵付けをしていた。下の写真は描き終わってすぐのもので、1か月弱で完成した作品が送られてくるという。仕上がりが楽しみだ。

砥部焼を絵付けする男性

砥部焼の絵付けに挑戦。絵を描く自信もなく、丸い柄を描いてみた。

描き上げた作品

右が筆者、左がカメラマンのヤスクニさんの作品。完成した姿はどのようになるだろうか。

砥部焼の歴史を知るために町を歩いた。まずは梅野精陶所(梅山窯)で梅山大登り窯を見学する。1887年に造られたという登り窯は、入り口に背をかがめて入ると想像以上に中は広く、トンバリ(煉瓦)の壁は焼き物の釉薬(うわぐすり)が移ったのか、深い茶色に輝いていた。この登り窯が造られた明治時代は、砥部焼が清や台湾へと輸出されていた頃だ。丈夫な砥部焼ゆえに、ここで焼かれて海を渡った砥部焼が、今も現役でどこかの食卓に上がっているかもしれない。登り窯には、そんな歴史と風格があった。

梅山大登り窯の外観。

梅山大登り窯の外観。6室が現存している。砥部町大南1441 ☎089-962-2311(梅野精陶所)

梅山大登り窯の内側

中では、昔の窯積みの状態を復元保存して展示していた。

砥部焼のルーツを辿(たど)ろうと、陶板の道を歩く。ここには地元の陶工が絵付けした陶板が敷かれており、その枚数は約580枚。陶板には絵や模様が描かれており、歩いているだけでさまざなま窯元の作品が鑑賞できる。陶板の道の先にあるのが陶祖ケ丘。砥部焼の始祖である杉野丈助の顕彰碑や、砥部焼の陶片を壁に埋め込み、変遷がわかるようにした「陶壁碑」(とうへきひ)がある。江戸中期には陶器だった砥部焼が江戸末期に磁器に変わり、時代による柄の違いがひと目でわかるようになっている。砥部焼の昔と現在を知るための散策となった。

陶板が設置されている陶板の道

陶板の道の歩道には、陶工の思いがこもった陶板が等間隔で並ぶ。 砥部町大南874先 ☎089-962-7288(砥部町役場 商工観光課)

陶祖ケ丘にある陶壁碑(とうへきひ)

陶祖ケ丘にある陶壁碑。江戸から明治時代、現代に至るまでの砥部焼の色味や柄の変遷がひと目でわかる。

陶祖ケ丘から砥部陶街道を南下したところにある、カフェ&ギャラリーもえぎのでひと息ついた。ここは、梅乃瀬窯の佐賀しげみさんが、民家を改装してオープンさせたカフェで、目移りするほどたくさんの砥部焼のカップ&ソーサーが並ぶ。14〜17時のカフェタイムでは、好みの器を選ぶと、それにコーヒーや紅茶などの飲み物を入れて提供してくれる。「実際に使ってみて気に入ったら、在庫があれば販売することもできます」と佐賀さん。一室にギャラリースペースも設けてあり、20以上の窯元が作品の展示販売もしている。

テラス席で、デザートプレートとアールグレイティーをいただいた。スイーツはパティシエが手づくりしたもの。ひとつひとつが手頃な大きさで、それぞれの味が楽しめるのがうれしい。砥部焼の白くシンプルな器が、華やかなスイーツたちを控えめに引き立てる。訪れた際は、時折雨が降るあいにくの天候だったが、雨によって新緑がいっそう鮮やかになり、脇を流れる沢からは雨に喜んだのかカエルの声が聞こえてきた。「雨の旅も捨てたものではない」、そう思わせてくれるひと時だった。

カフェ&ギャラリーもえぎののカフェメニュー

カフェ&ギャラリーもえぎののデザートプレート(880円)とアールグレーティー(500円。スイーツとのセット価格は400円)。シンプルな砥部焼に鮮やかなスイーツが映える。砥部町川登495 ☎089-916-3157

砥部焼のほかにもたくさんある
食べたいもの、見たいもの

砥部町の七折(ななおれ)地区は、赤・白・ピンクなどの16,000本の梅が花を咲かせ、例年多くの人が訪れる。この地区の梅園では、「七折小梅」という品種の梅が生産され、砥部町の名産品になっている。「七折小梅は1900年頃、他県から買った苗木のうち一本が突然変異したもので、種が小さくて果肉は多く、柔らかい。酸味が少なく香りがいいのが特徴」とななおれ梅組合の竹内勝組合長。収穫した梅は生梅として出荷するほか、梅干しや梅シロップ、ゼリーに加工されて消費者のもとに届く。

訪れたときの七折小梅はまだ、子供の小指の先ほどの大きさだった。この後大きく育った実は、5月下旬から6月中旬にかけて収穫されるという。砥部の太陽をしっかりと浴びた七折小梅の、今年の収穫が楽しみだ。

梅園で梅の実を確認する男性

七折小梅の木の横に立つ、竹内組合長。2022年は平年並みの収穫量になりそうだという。

4月の梅の実の様子

梅園の七折小梅の実はまだかわいらしい姿だった。収穫する頃には、透き通るような薄い黄色の実に育つ。砥部町七折109 ☎089-962-3064(農事組合法人ななおれ梅組合)

代表作「念ずれば花ひらく」で知られる詩人の坂村真民(さかむらしんみん)。1909年に熊本県で生まれた真民は、58歳のときに砥部町に定住し、2006年に97歳で亡くなるまで砥部で暮らした。「念ずれば花ひらく」は多くの人々の共感を呼び、その詩碑は海外も含めて700基以上建てられている。自宅近くや旅先などで、真民の詩碑を見かけたことがある人もいるかもしれない。

砥部町には坂村真民記念館があり、真民の生涯の年表や、書斎を再現した展示を見学できる。訪れると開館10周年記念特別展を実施中で、来館者にアンケートを募って「私の好きな真民詩ベスト15」を選出、その詩を展示していた。1位はやはり「念ずれば花ひらく」。「詩を読むだけでなく、真民さんの書も楽しんでもらいたい」(西澤孝一館長)という気持ちから、詩は真民自筆のものを展示している。弱者に寄り添い、癒やしと勇気を与えてくれる真民の詩を鑑賞して、明日への活力をもらった。

坂村真民の「念ずれば花開く」自筆の詩

「私の好きな真民詩」でベスト1に輝いた「念ずれば花ひらく」自筆の書。右隣は2位に入った「二度とない人生だから」。特別展は2022年8月28日まで開催。砥部町大南705 ☎089-969-3643 入館料600円 JAF優待

坂村真民記念館と隣り合うように、砥部むかしのくらし館がある。大正時代に梅野精陶所が建設した、商家と砥部焼製品を貯蔵・出荷するための蔵を改装し、砥部焼や民具、夜着のコレクションの一部を展示公開している。夜着とは着物の形をした掛け布団で、家紋を染め抜くなど凝ったしつらえのものも少なくなかったが、戦後毛布が普及するにつれて需要が減り、残存するものは少ない。ここでは70点を超す夜着のコレクションの中から、一部を展示する。豊島吉博館長は、「私の母がこつこつ集めてきたもので、一度にこれだけの数が見られるのはここだけではないか」と語る。

夜着や振り子時計、木製の看板などあふれんばかりに展示された民具を眺めていると、それらを使っていた人の暮らしぶりが思い起こされるようだった。旧国立競技場の観客席など、最近まで現役だった所蔵品もあり、それに座ることもできる。老若男女誰もが懐かしく感じる所蔵品があり、つい長居をしたくなる博物館だった。

夜着のコレクションの前に立つ豊島館長。

鮮やかに染められた夜着のコレクションの前に立つ豊島館長。コレクションの中から19点を展示している。
砥部町大南701 ☎089-962-5258 (開館は土・日曜のみ。駐車場は、近くの商店街来客用駐車場を利用)

砥部むかしのくらし館にある、民具のコレクション

赤い公衆電話や炊飯器など、昭和の頃まで現役だった収蔵品もある。中央部にある吹き抜けは、砥部焼の収蔵庫としてここから商品を上げ下ろししていた名残だ。

砥部むかしのくらし館の、砥部焼のコレクション

砥部焼のコレクションルーム。年代別に展示されており、時代による絵柄の変遷を学ぶことができた。

砥部町にはもうひとつ訪れてみたいところがあった。愛媛県立とべ動物園である。ここには日本で初めて人工哺育で育てられたホッキョクグマのピースが暮らしており、テレビ番組で成長を見守ってきた人も多いことだろう。砥部町在住のアイドルに会いに行くため、砥部陶街道を北に向かった。

入園口から歩くこと数分でベアストリートに着く。世界各地に生息するクマたちを展示するエリアだ。ピースが生活するエリアを眺めること数分、寝室から出てきたピースは、悠々と運動場の中を歩いたり、ごろりと昼寝をしたりしてのんびりと過ごしていた。ガラスに顔を近づけていると、興味を持ったのか近くに来てくれた。ベビーカーを押したお母さんが「ほら、ピースがおるよ」と子供に紹介している。ピースはやはり人気者だった。

愛媛県立とべ動物園の、シロクマのピース。

愛媛県立とべ動物園で暮らす、ホッキョクグマのピース。砥部町上原町240 ☎089-962-6000 入園料500円 JAF優待  駐車場300円

カメラに近寄るピース。

私たちに興味を持ったのか、そばまで近づいてきてくれた。

とべ動物園の、アフリカゾウの親子

左が母親のリカで、右が媛(ひめ)。奥にいるのが末娘の砥愛(とあ)。

人気者はピースだけではない。アフリカゾウ舎では、母親のリカと娘の媛、砥愛が暮らしている。アフリカゾウはメスを中心にした家族単位の母系集団で生活し、成熟したオスのゾウは群れから離れて単独行動をするという。アフリカゾウを家族で飼育しているのは日本でここだけ。アフリカゾウの自然な家族の姿がここにあった。

旅先でさまざまな体験に恵まれると、旅の印象がより深くなる。東温市と砥部町を旅して、そう感じた。

※JAF優待の内容や利用方法などの詳細は、記事内の各施設JAF優待をクリックしてください。JAFナビ からも検索可能です。
※記載のデータは2022年5月現在のもので、料金は大人1名分です。変わる場合もありますので、お出かけ前にご確認ください。
※新型コロナウイルスの影響により、掲載の内容が変更・中止となる場合がございます。事前にご確認のうえ、ご利用ください。
取材協力=東温市、砥部町

「日本の魅力、再発見」 掲載自治体のご紹介

JAF Mate Onlineに掲載していないドライブコースやおすすめスポットなども掲載!

【終了しました】JAF会員限定プレゼント

【終了しました】東温市・砥部町 名産品プレゼント

東温市・砥部町で生まれた個性豊かな名産品を合計9名様にプレゼント!

砥部焼のカップとお椀

A 砥部焼
3名

シンプルで使いやすい砥部焼を手作り・手描きで製作している一夢(いちむ)工房の、線彫フリーカップと線彫丸碗1個ずつをセットで。


砥部焼のそば猪口と東温市のどぶろく

B 東温・砥部お宝セレクション
東温どぶろくと砥部焼そば猪口のセット
3名

東温のお宝と、砥部のお宝をセレクトした「東温・砥部お宝セレクション」。
東温のおいしいお米で仕込んだ「どぶろく」と、砥部焼のぽってりとした質感がかわいらしい、そば猪口2客をセットにしました。

そば猪口 【竹山窯】
桜(東温市の花) 1客
梅(砥部町の花) 1客

どぶろく
「ながい」「由紀っ娘物語」のいずれか1本(甘口・中辛・辛口)が入ります(銘柄や味は選べません)。
容量:720mL


C SAKURA select選定品詰め合わせ
3名

「東温らしさ」をコンセプトに東温市で生まれた豊かな食材やユニークな製品などを、「SAKURA select」として選定し、紹介しています。その中からセレクトした5種類の商品(下記)とエコバッグを詰め合わせました。

どぶろくマドレーヌ

・どぶろくマドレーヌ(2個)
どぶろくながいをたっぷり使用したマドレーヌ。酒粕の甘い香りともっちりとした食感。
(パティスリーカフェ心結)

らくれんホームアップ

・らくれんホームアップ(3本)
創業以来変わらない味、デザインで販売されているクリームソーダです。
(四国乳業株式会社)

まるとっと アジ

・骨まで食べられる干物
「まるとっと アジ」(バジル・みりん・塩味 各1枚)
電子レンジで簡単に調理でき、骨まで食べられる干物。
(株式会社キシモト)

穂田琉米

・穂田琉米(3合1袋 ※品種はお選びいただけません)
土づくりからこだわった、地域の風景を守る米作りを行っています。
(穂田琉)

いちごジャム

・いちごジャム(1瓶)
いちご農家が丹精したいちごで作る自家製ジャム。
(いちご日和)

エコバッグ

・エコバッグ(1枚)
SAKURA selectのロゴ入り。

※写真はすべてイメージです。
※Web応募のみとなります。
※応募は1名様1回のみ可能。応募後の応募内容の変更はできません。
・応募方法:上記応募フォームをクリックしてログインIDとパスワードを入力。
※応募にあたってはJAFマイページと同じIDとパスワードでのログインが必要です。
・当選者数:9名(当選者にのみ、2022年9月中旬までに当選通知を発送いたします)。
・応募締切:2022年7月31日
JAF Mate2022年春号・JAF Mate Online4月「日本の魅力、再発見」プレゼント応募総数は20,519件でした。たくさんのご応募ありがとうございました。

【終了しました】JAF会員限定! 特別プレゼント

6月15日(水)~7月15日(金)、東温市さくらの湯観光物産センター(JAF優待/ドライブガイド2)のイートインコーナーにてJAF会員証を提示し「JAF Mate Onlineを見た」とお伝えいただいた先着100名様に、「いのとんA6メモ帳」をプレゼントします。
※会員様本人のみ
※なくなり次第終了

プレゼントのメモ帳

昼はぶらぶら! 夜はフラフラ? 写真家ヤスクニさんの旅日記

ダンディーでチャーミングな写真家・飯田安国さんの旅の様子をお届けするコラムを連載中! 本編と併せてぜひお楽しみください。

飯田安国

いいだ・やすくに 「ヤスクニさん」の愛称で親しまれる写真家。
東京・新橋生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、サンフランシスコ・アート・インスティテュートで芸術を遊ぶ。
長年にわたり連載をもつ『JAF Mate』をはじめ、『翼の王国』など雑誌を中心に活躍。
現在、スマートロードスターをスニーカー代わりにしている。

東温市、砥部町 ドライブガイド

東温市、砥部町には、四季折々で楽しめるスポットがたくさんあります。気になった場所をドライブで回り、その魅力を再発見してみませんか?

「JAFナビドライブ情報」 で、ご当地ドライブコースも公開中!

1.門田商店

地元で「かどみせ」と呼ばれるアイスの名物店。昔ながらの製法で作るミルク味やイチゴ味などのアイスキャンデー7種類や、ソフトクリームとカップソフトの2種類がある。東温市横河原349-4 ☎089-964-2134

2.さくらの湯観光物産センター

☆プレゼントあり
東温市内で生産・加工された季節の農産物や加工品などの特産品を販売。地元食材を用いたメニューをイートインコーナーで味わえるほか、レンタサイクルの貸し出しも行う。東温市北方甲2098 ☎089-993-8054 電動自転車レンタル料400円/1時間

3.坊っちゃん劇場

四国や瀬戸内の歴史・伝統文化や偉人を題材にした自主制作のミュージカル作品を1年間上演する全国でも珍しい日本で唯一の地域拠点型劇場。ミュージカル役者の誕生する「まちづくり」を目指している。
東温市見奈良1125 ☎089-955-1174

4.くつろぎの宿 樹楽

温泉宿・ホテル総選挙2021リフレッシュ部門で全国5位に選出されたホテル。露天風呂付の客室や大浴場、露天風呂では地下2,000mからくみ上げた太古の源泉が満喫できる。東温市見奈良1110 ☎089-955-1661 

5.惣河内(そうこうち)神社

延暦22(803)年創立。鳥居前には樹齢1,000年以上とされる県指定天然記念物の御神木「ウラジロガシ」をはじめ、5月から6月には境内の各所に咲く多種の「山あじさい」が有名。東温市河之内甲4876 ☎089-966-2484

6.高畠華宵大正ロマン館

大正から昭和初期にかけて、少年・少女雑誌などで人気を博した愛媛県生まれの画家、高畠華宵(たかばたけかしょう)の作品などを展示。大正ロマンの雰囲気が味わえるカフェも併設。東温市下林丙654-1 ☎089-964-7077 入館料500円 

7.滑川(なめがわ)渓谷

長い年月をかけて浸食された奇怪な岩肌や、ナメラと呼ばれる美しい川床、小石が渦を巻き削ってできた甌穴(おうけつ)など、自然の造形を楽しめる。真夏の避暑にもおすすめ。東温市明河 ☎ 089-964-4414(東温市地域活力創出課)

8.白猪(しらい)の滝

皿ヶ嶺連峰県立自然公園の中、重信川の上流にある高さ96mの滝。夏は冷涼な気候、冬は滝全体が凍り付く幻想的な風景など、四季それぞれに楽しめる。東温市河之内 ☎089-964-4414(東温市地域活力創出課)

9.農家レストランぼたん茶屋

約3,000本の牡丹(ぼたん)が咲き誇る敷地内で、棚田米を原料に作るどぶろくをはじめ、どぶろくを使ったデザート類を販売。レストランでは手打ちそばや旬の食材を味わえる(完全予約制、4名以上)。東温市井内1143 ☎089-966-3981

10.井内(いうち)の棚田

市内の井内地区にある現役の棚田で、農林水産省が認定する棚田遺産に選ばれた。田植えの時期には幻想的な美しさ、秋の実りの時期には金色の階段が眼前に拡がる。東温市井内 ☎089-964-4409(東温市農林振興課)

11.上林(かんばやし)森林公園

皿ヶ嶺の登山口周辺にあり、園内には炊事棟やトイレも完備していて、ブッシュキャンプもできる。四季を通してほぼ一定温度の風が吹き出す「風穴」もあり、夏には神秘的な霧が発生するなど、納涼にも最適。東温市上林乙896-24 ☎089-964-4414(東温市地域活力創出課)

12.パットゴルフ matsuyama

小さな子供からお年寄りまで体力、腕力関係なく楽しめるパターゴルフ場。自然に囲まれたコースなど全3コース・54ホールがある。砥部町三角229-1 ☎089-962-6269 1コース料金平日700円/土日祝800円

13.えひめこどもの城

四国最大級のジップライン(要事前予約)をはじめ、ロードトレインや四輪バギー、ボブスレー、ボートなどさまざまな乗り物が楽しめる。各種クラフト体験(有料)もできる。松山市西野町乙108-1(砥部町に一部所在) 
☎089-963-3300 入園無料(駐車場料金・遊具施設料は別途必要)

14.砥部焼陶芸館

砥部焼と愛媛の伝統工芸を見て、買って、作って、楽しめる施設。33の窯元の作品を展示販売するほか、砥部焼の絵付けや手びねり体験もできる。(手びねり体験は要事前予約)砥部町宮内83 ☎089-962-3900 絵付け体験料800円~

15.Zoo's Kitchen(ズズキッチン)

県内産の食材とお米を使った日替わりランチや週替わりのカレー・パスタなどが味わえる。すべての食器に砥部焼を用いており、その使い心地なども体感できる。砥部町宮内83(砥部焼陶芸館2F) ☎089-962-3900

16.とべ温泉 湯砥里(ゆとり)館

超音波風呂や気泡風呂、水風呂、サウナが楽しめる日帰り温泉。陶街道ゆとり公園を望む浴室からは、春は桜、秋は紅葉といった四季折々の風景を楽しめる。砥部町宮内1902-3 ☎089-962-7200 入浴料500円

17.砥部焼伝統産業会館

国の伝統的工芸品に指定された砥部焼の歴史的資料や貴重な焼き物、優れた現代作品を展示。約80軒の窯元の作品を展示・販売するほか、個展やグループ展などの催しも行う。砥部町大南335 ☎089-962-6600 入館料300円

18.砥部焼聖火台モニュメント

映画『未来へのかたち』に登場する砥部焼の聖火台モニュメント。台座を含む高さは約4m、直径は約1mで、出演者の手形やサインが記されている。砥部町大南368  ☎089-962-7288(砥部町商工観光課)

19.砥部衝上(しょうじょう)断層

約6500万年前の古い地層が、約4000万年前の新しい地層の上に乗り上げている珍しい逆断層で、1938年に国の天然記念物に指定。周辺は親水公園として整備されている。砥部町岩谷口450 ☎089-962-6010(砥部町建設課)

20.仙波(せんば)渓谷

伊予十二景の一つにも選ばれた渓谷で、岩と水と自然が造り出した渓谷美を楽しめる景勝地。夏はひんやりと涼しく、避暑や川遊びのほか、秋には険しい岩腹と紅葉が織りなす景観の散策にも最適。砥部町総津1777 ☎089-962-6010(砥部町建設課)

21.神の森(かみのもり)公園

全長100mのローラー滑り台が人気の公園で、陶芸体験ができる農村工芸体験館や特産品販売所などがある。「神の森大橋」は、重量20tまでの車の通行が可能な、全国的にも珍しい木造のアーチ橋だ。砥部町総津117 ☎ 089-962-6010(砥部町建設課)

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