聞き手・構成=張江浩司 / 編集=赤井大祐 / イラスト=若林 萌

クリス・ペプラーがトルクを利かせて首都高2号線を運転したい一曲〈山下達郎 / BOMBER〉

ラジオDJ、ナレーターのクリス・ペプラーさんが愛聴するドライブソング4曲を紹介!
クリス・ペプラー

クリス・ペプラーさんによる2曲目は、ファンキーなベースラインが特徴的な山下達郎「BOMBER」。リリースされたのは1970年代後半。日本、そして東京が大きく変わっていった時代を語ります。 音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを4曲紹介します。

目次

2曲目
山下達郎 / BOMBER

国際化する浮かれた東京を彩ったセブンスコード

この曲は都会的で、夕暮れから夜にかけての首都高速2号目黒線を走っているような雰囲気ですよね。1978年にリリースされた曲ですが、シティポップが世界的に受け入れられている現在、特に海外のリスナーには新鮮な音として捉えられている楽曲です。

アレンジも当時としては非常に画期的で、ベースラインが一際耳に残ります。僕もベースを弾くんですが、運転していてトルクを感じる瞬間とか、シフトの楽しさとかにも通じる気持ちよさがあると思うんです。なるべくエンジンブレーキを使って、2速か3速でググッとトルクフルに走るのが好きなんですが、その感覚に似てますね。首都高は曲がりくねっているので、シフトダウンしてエンジンブレーキ、トルクを利かせた運転が映えるコースですよね。そういう意味でもこの曲はすごくいいのかなと。

70年代後半から80年代初頭にかけて、日本の雰囲気はガラッと変わったと思うんです。それまでの歌謡曲は、ニューミュージックと呼ばれていてもどこかに演歌的なウェットさがあった。「SPARKLE」もまさにそうですけど、達郎さんの曲はスパッと晴れやかで、それ以降の歌謡曲に本当に大きな影響を与えました。セブンスやナインスと呼ばれるジャズ的なコードを多用した楽曲はとても洗練されていて、ジャパニーズポップスの新時代到来を感じましたね。

日本全体の景気が良くなってバブルに向かっていくなか、東京という街もカルチャーも垢抜けていったんですね。六本木や麻布ではディスコがものすごく盛況で、大勢の陸(おか)サーファーが達郎さんの音楽を車でかけながら女の子をナンパしていた(笑)。良くも悪くも浮わついた時代。コムデギャルソンやYohji YamamotoなどのDCブランドが海外でブームになったり、日本のカルチャーが世界に浸透し始めました。エリック・クラプトンやデヴィッド・ボウイなど、特にイギリスのミュージシャンがお忍びで日本に来るようになって、日本と海外のミュージシャンの交流も活発になりましたよね。そういう意味で「“東京”が国際化した時代」なのかな。「BOMBER」にはそれを象徴する疾走感を感じるんです。

クリス・ペプラー

パーソナリティー。FMラジオ局J-WAVEが1988年に開局すると同時に、ナビゲーターとして抜擢され、35年間にわたり「TOKIO HOT 100」のDJを務めている。 日本のミュージックマスターとして知られ、音楽、映画やスポーツなどエンターテイメントを中心にTV番組、CM出演、ドラマ出演、ビッグセレブの来日記者会見やインタビュー、イベントMCなど幅広く活躍中。

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