10円のイメージ

これまでのガソリン補助金に代わる新制度「ガソリン10円割引」の効果とカラクリ

5月22日から始まるガソリン定額補助金と暫定税率廃止はどちらが家計にお得か、FPが解説
宇野源一

2025年5月21日に資源エネルギー庁が公表したレギュラーガソリンの店頭小売価格は182.1円(全国平均)と、ガソリン価格の高止まりにブレーキがかからない。1月16日から政府によるガソリン補助金が減らされていたが、その補助金が5月22日から段階的に拡充される。ガソリン補助金の拡充が私たち自動車ユーザーにとってどの程度の恩恵があるのか、本記事ではファイナンシャル・プランナー(FP)の宇野源一氏が、新たなガソリン定額補助金制度の仕組みと、家計に与える影響、さらに暫定税率廃止の場合との比較について解説する。

目次

新たなガソリン価格引き下げ制度はどんな内容か

昨年末から段階的に引き下げられたガソリン補助金が、今年の1月16日に補助率0%となったことは記憶に新しいのではないだろうか。資源エネルギー庁のウェブサイトによると「状況を丁寧に見定めながら、168円から17円を超える分に対する補助率を段階的に見直す」とあり、実はそれ以降も多少ながら補助金が出ていた。

直近だと5月1日〜5月14日には1Lあたり1.1円の補助金が支給されており、レギュラーガソリンの全国平均価格(以下ガソリン価格)が185円を超えないようにコントロールされていた。

昨今の世界情勢の影響によりガソリン以外の物価も上昇していることも背景にあり、5月22日からガソリン補助金が定額制へ拡充される。具体的には、初週から1Lあたり5円、翌週は1円増加の6円、その翌週は7円という具合に、段階的に補助金が増加して最大で10円まで積み上がっていくように価格をコントロールするということになる。

言い方を変えれば、今までの制度では補助金分を除いたガソリンの市場価格自体が下落しない限り、ガソリン価格も185円以下になることはないが、今回の補助金引き上げによって今よりも安くガソリンを買えるようになると期待される。

ここから補助金が段階的に10円まで引き上げられるとガソリン価格がどうなるのかシミュレーションしてみよう。ガソリン価格が182円、かつ以降ガソリンの市場価格自体が変動しないと仮定し、来週以降の補助金による価格変動をシミュレーションすると、以下の表となる。

基準日 レギュラーガソリンの価格 前週比 補助金額
5/22 182円 ―― ――
5/29 177円 ▲5円 5円
6/5 176円 ▲1円 6円
6/12 175円 ▲1円 7円
6/19 174円 ▲1円 8円
6/26 173円 ▲1円 9円
7/3 172円 ▲1円 10円
7/10 172円 ±0円 10円

このように当初のガソリン価格より10円低下したことによって、例えば月に1回に30L給油する人なら1回の給油で300円、年間で最大3,600円の恩恵を受けることができる。ただし、今回の補助金の場合は段階的に補助金が入っていくため、必ずしもそうなるとは限らない。5月29日から1週間以内(補助金額5円)で給油すれば150円お得で、6月19日の週で給油すれば240円お得になる。給油するなら1円でも安いタイミングで入れたいので、給油する適切なタイミングを見計らうことも重要だろう。

もう一点知っておきたいのが、今回の補助金のカラクリだ。そのカラクリとは、上の図のようにガソリン価格が172円に下落するまで補助が続くとは限らない可能性がある。ということだ。

政府の発表によると、ガソリンの市場価格自体が翌週までに上がった場合、その上昇分を打ち消すためにも補助金が使われることになる。例えば5月29日におけるガソリンの市場価格が2円上がってしまったと仮定すると、その価格上昇を打ち消すために追加で2円の補助金を出し、そこから当初の予定通り段階的に1円引き下げるために計3円が補助され、計算上は初週の5月22日時点のガソリン価格(182円)より6円値下げとなる。

ただし、予定では補助金額は6円のところ、すでに8円支給されているため上のシミュレーションのようにならず、6/19の時点で補助が最大の10円に達し、ガソリン価格が174円にとどまってしまうこともありうる。

極論すると、1か月の間にガソリンの市場価格自体が10円上がってしまったら、その上昇分を打ち消すためだけに補助金が使われてしまうのだ。一方でガソリンの市場価格自体が下がれば、そこに補助金による減額も加わるので、さらにガソリン価格が下がる。

もし暫定税率が廃止されたら、ガソリン価格はどれくらい変わる?

ガソリン価格に関するニュースが出ると、必ずと言っていいほど「暫定税率の廃止」の声が上がる。暫定税率についておさらいしよう。ガソリンを購入すると、1Lあたり53.8円のガソリン税が課されているが(沖縄は軽減措置あり)、このうち25.1円が暫定税率(当分の間税率)として本来の課税額に上乗せされている。

5/19時点のガソリン価格が1Lあたり182.1円だが、暫定税率25.1円が廃止されると157円まで単価が下がる計算となる。補助金を段階的に増やしていくよりも、暫定税率を廃止したほうが数字の見た目的にも家計への負担的にも改善されたと実感することができるだろう。

昨年末に自民党・公明党・国民民主党によって「暫定税率の廃止」に関する合意文書が交わされ、それ以降も各党から廃止に向けた提案がなされているが、一向に動きが見えない状況だ。クルマを動かすガソリン価格が下がれば私たち国民が恩恵をダイレクトに受けられるのだから、早急に制度改正をして欲しいと願っている。

宇野源一

うの・げんいち 大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。

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