日本の“ショーファードリブン文化”を築いた異端車! 三菱デボネアが変えた高級車の価値
1960年代、企業トップの送迎を前提に開発された国産初の本格上級サルーン三菱デボネアは、国産車では珍しい“ショーファードリブン”を掲げた上級サルーン。GM流デザインと新開発の直列6気筒を備え、企業役員車需要が高まる高度経済成長期に新しい価値観を提示した。後の国産高級車文化の源流となった一台である。
【1964年7月15日】
走るシーラカンス、初代「デボネア」発売!
「コルト・デボネア」として1963年の全日本自動車ショーで発表され、注目を集めた初代デボネア。1986年のデボネアVの登場までの22年間、基本設計やデザインを変えず、ユニークな姿が長く親しまれた
1964年7月に発売された三菱デボネアは、当時の国産車には珍しい「ショーファードリブン」(専属運転手が運転し、オーナーが後席に座るスタイル)を明確に意識した上級サルーンだった。
1960年代前半の三菱は、三菱500やコルト600などで乗用車市場に参入したばかり。社内では「高級車を早急に開発すべきか」を巡って議論が続いていた。最終的にフィアット2100のライセンス生産案を断念し、自社開発による本格的な高級車づくりへ舵を切ったことが、デボネア誕生の出発点となる。
デザインは、米国ゼネラル・モーターズ社出身のハンス・ブレッツナー氏を招聘し、当時のアメリカ車を思わせる堂々としたプロポーションを実現。全幅1700mmの小型車枠に収めながら、実寸以上に大きく見える造形は、デザイナーの確かな手腕を物語っている。
新開発の2L直列6気筒・KE64型(105PS) エンジンを搭載し、ツインキャブ・デュアルエキゾーストなど当時の国産車としては先進的な仕様を採用。クラウンやセドリックがタクシー仕様も展開していたのに対し、デボネアは専用ボディを持つ「純粋な高級車」として登場した国内初の存在であり、企業トップの送迎用途を強く意識した設計思想が特徴だった。
発売当時の日本は高度経済成長の真っただ中で、企業の大型化と役員車需要の増加が進んでいた。デボネアはその潮流に応える形で、国産車に“威厳ある上級車”という新しい価値観を持ち込み、後のプレジデントやセンチュリーへと続く国産ショーファードリブン文化の先駆けとなる。
その後も基本設計を変えずに22年間生産され続け、「走るシーラカンス」と呼ばれながらも、三菱のフラッグシップとして独自の存在感を放ち続けた。
【A30型 三菱デボネア】
●全長×全幅×全高:4670×1690×1465mm ●ホイールベース:2690mm ●車両重量:1330kg ●搭載エンジン:KE64型(1991㏄ 水冷直列6気筒OHV)