本当にわかってますか? 「黄色信号」の意味…。 黄色信号で止まる車・止まらない車を調査!
信号の変わり目は事故の危険大! 再確認しておきたい信号機のルール交差点に差しかかり、信号が黄色に変わったら……。すぐに止まるべきか、どうするべきか、判断に迷うシチュエーションである。 実際、道路交通法には例外が設けられているのも確か。さて、正解は!? 実地調査を敢行し、その結果をモータージャーナリストの菰田潔さんに解説していただいた。
まずは黄色信号のルールをおさらい
菰田さんコメント:
「青、黄、そして赤と変わる信号機。正確には青ではなく緑で、実際に諸外国ではグリーンと呼ばれています。おっと、今回のテーマは黄色でしたね(笑)。道路交通法における黄色信号の意味は下記を参照していただくとして、優良ドライバーである皆さんは、常識的に『黄色信号=止まれ』と認識していることと思います(ですよね?)。
それなのに、なぜか黄色信号でも止まらない車が多数いる……。これは、道交法に記されている『ただし』以降の解釈に幅があり、それをいいように拡大解釈しているからでしょう。調査結果と併せて、詳しく解説していきます」
(道路交通法施行令第2条より抜粋し、一部編集)
(黄色の灯火)車両及び路面電車は、停止位置を越えて進行してはならないこと。ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く。
幹線道路と住宅街の信号のある交差点で
黄色信号になってからも通過する車をカウント
幹線道路の交差点と、住宅街の片側1車線の交差点、計2か所で調査。各1時間の調査時間中、信号機が黄色になった以降に停止線を通過した車と、停止線(付近)で止まった車をカウントした。
調査は、各地点において交通量がそれなりに多い日中の時間帯と、交通量が少ないお昼時の2回に分けて行っている。
※注意※
道交法に則れば、黄色信号でも「安全に停止することができない場合」に限っては、止まる必要はない。今回の調査では、「安全に停止することができない場合」かどうかは判断せず、黄色信号になってから停止線を通過した車を無条件でカウント。このため、違反ではない車も含まれている。
ほとんどの車が黄色信号で通過!
すべてが違反とは限らないが…
①の幹線道路では135台中4台が停止(約3.0%)
②の住宅街では45台中3台が停止(約6.7%)
黄色信号でも止まらずに通過した車は、幹線道路で約97%、住宅街でも約93%! つまり、ほとんどの車が黄色信号で止まらないという衝撃の事実が判明した。今回の調査では「安全に停止することができない場合」かどうかを判断していないため、すべてが違反とは限らない。しかし、「黄色信号=止まれ」という大原則がおろそかになっている、という実情が浮き彫りになった。
調査団員は見た! 気づきポイント
- 前方が空いているときほど、黄色信号で加速する車が目立った。
- 交通量が少ないと、黄色信号で通過する車が増える傾向が見られた。
- 黄色信号で減速しないどころか、赤信号でも停止線を通過した車も……。
- 住宅街では4台の自転車を観測したが、すべて黄色信号で通過。赤信号無視も!
菰田さんコメント:
「90%以上の車が黄色信号でも止まらなかった、という調査結果は、非常に残念ながら、交通の実態を示していますね。ほとんどのドライバーが、『黄色信号=止まれ』という大原則を忘れてしまっているようです。
これは日本特有の現象と言えるかもしれません。日本の信号は、全赤、つまり交差点のすべての信号が同時に赤になる時間は、交差点の形状や条件によって異なりますが1~3秒ほど設けてあります。これはもともと交差点内の事故を減らすために、1970年代に導入されたもの。実際にその効果はあったようです。
しかし近年、この全赤状態を『悪用』するドライバーが増えていますね。『たとえ自分の進行方向が赤になっても、交差する側も赤だから、誰も出てこないだろう』という甘い読みから、『黄色信号なら全然大丈夫』そして『黄色信号では止まらなくてもOK』と、悪しき常識がエスカレートしてしまっています。
改めて道交法を読み直してみましょう。注意してほしいのは、『ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く』という部分です。
『安全に停止することができない場合』とは、要するに急ブレーキになってしまうこと。急ブレーキは自車も危険ですし、後続車に追突される恐れもあります。そういった状況に限っては、『黄色信号でも行ってもよい』という意味です。
大事なことなので何度も繰り返しますが、基本的に『黄色信号=止まれ』。ただし、急ブレーキになってしまいそうなときは進んでもよい。今回の調査では、急ブレーキになりそうかどうかまでは判定していないので、止まらなかった車すべてが違反とは言い切れません。
ですが、仮に違反ではないとしても、黄色信号では止まり切れなかったということ。スピードが出過ぎていたか、そもそも止まろうという意識がないか、どちらかの可能性が高い。いずれにしても意識改革が必要です。
そして付け加えておきますが、自転車も『軽車両』。信号に関するルールは自動車と同じです。自転車にお乗りの際は、くれぐれもご注意を」
黄色信号を通過する自転車(写真はイメージ)
黄色信号で止まらない人は、危険予測能力が低い!?
菰田さんコメント:
「黄色信号で止まらないドライバーが多いのは、対向右折車との衝突や、交差点内で取り残されるなど、そこに潜んでいるリスクに気づいていないからでしょう。なおかつ 、スピードが出過ぎている場合がほとんどで、黄色信号で安全に停止できなくて当然です。もともと危険地点である交差点で、『大丈夫だろう』という甘い読みとスピード超過が入り交じるのですから、出会い頭の事故を招く可能性が大いにあります。
そして最も恐ろしいのは、『今回も大丈夫だった』『だから次も大丈夫だろう』と、どんどん感覚が麻痺し、リスクを完全に見落としてしまうこと。『黄色信号=止まれ』どころか、『黄色信号=行ってしまえ』とエスカレートしてしまうんです。
この精神状態こそが、実はもっとも危ない。黄色信号で止まらないことが常態化することで、赤信号への変わり目で加速を繰り返すなど、 気づかないうちに危険ゾーンに入り込んでしまい、いつか事故を起こしたときにハッと我に返る……。それでは手遅れです。
ちなみに、日本では交差点内すべての信号が赤になる全赤信号の状態があるので、こうした自分勝手な判断がより起きやすいのですが、私は欧州で全赤信号を見たことがありません。少なくともドイツの交差点は全赤信号がありません。自分の進行方向の信号が黄色から赤になると同時に、交差する側の信号が青になり発進してくるんです。全赤の『間』がないから、信号無視=出会い頭の事故を起こす可能性が非常に高い。そのことがわかっているから、多くのドライバーがしっかり信号を守ろうとしています。
交差点のリスクがわかりやすくむき出しになっている分、みんなが気をつけるようになる、という考え方ですね」
黄色信号でも無理なく安全に止まるために
菰田さんコメント:
「まずは制限速度をしっかりと守ること。これに尽きます。ただし、制限速度を守っていても、青信号から黄色信号に変わったタイミングによっては、どうしても急ブレーキが必要になってしまい、後続車の追突を避けるためにも通過せざるを得ないこともあります。
最近は、交差点の手前30mほどでセンターラインが実線になっているケースがよく見られます。制限速度や実線の長さなどによるのであくまでも目安ですが、センターラインが実線の範囲内で信号が黄色に変わった場合は、急ブレーキになってしまう可能性が高いので、通過したほうがいいでしょう (一般道の法定速度やその道路の制限速度を基準に判断した場合)。
制限速度を守っており、センターラインが実線になるより手前で信号が黄色に変わった場合は、確実に停止できるはず。ブレーキをかける最初の期段階ではそっとペダルを踏み始め、すぐに強めに踏み込むことで、車の姿勢を乱すことなく、大きくスピードを落とせます。こうすればいち早く後続車に停止する意思を伝えることもできます。 速度が落ちていくにつれて徐々にブレーキペダルを踏む力を弱め、滑らかに止まりましょう。
交差点に差しかかるときには、パッと歩行者用信号を確認するなど周囲からできるだけ情報収集して、信号が変わるかどうか判断するクセをつけるといいと思います。基本的には、交差点が近づいたらアクセルペダルから力を抜く、ブレーキペダルに足をのせるなど、止まる方向の準備を心がけるといいでしょう」
菰田 潔
こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。