疑問解決!? JMO特命調査団

意外と多い!! 信号待ちでのスマホ操作。事故やトラブルの元ですよ!

街中のドライバーを観察してみた

2022.12.30

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/写真=柴田直行

2022.12.30

文=高橋 剛/イラスト=北極まぐ/写真=柴田直行

今や生活必需品とも言えるほど普及している、スマートフォン。さまざまな情報をキャッチできる、現代人にとっては手放せないアイテムだ。
運転中のスマホ操作は絶対にNGだが、果たして信号待ちの間は……? 街行くクルマを調査し、モータージャーナリストの菰田潔さんに解説していただいた。

100台を検証! 信号待ちでのスマホ操作は何人!?

調査地点は、街でよく見かける信号機のある交差点。停止線の横で動画を撮影し、ドライバーが信号待ちの間にスマホを操作しているかどうかを検証した。調査台数は100台。

信号のある交差点

調査する調査団員

その結果……、スマホを操作していたのは100人中7人!
スマホ操作の様子を、さらに徹底分析した。

調査結果

停止前や発進後にも、スマホを操作している傾向が

調査結果をモータージャーナリストの菰田潔さんにぶつけると、「いやあ、実際はもっと多いと思いますよ」と苦笑い。「私の感覚では、3割ぐらいの人が信号待ちでスマホを操作しています。道端のアヤシイ調査員の姿を見て、あわててスマホ操作をやめたんじゃないかな」というのが菰田さんの見解だ。それでも操作し続けた7人について、菰田さんに解説していただいた。

①業務用トラックの男性
完全に停止する前から、視線を下に落としてスマホらしきものを見ている。一度視線を上げ、再び下を見ながら発進。
「停止中のスマホ操作は、道路交通法上はOK。ですが動いているときの操作は完全にアウト。スマホに目が行っており、安全確認がまったくできていません。危険極まりないですね」

②バンの男性
片手にスマホを持ち、スピーカー機能で会話している様子。停止する前~停止中~発進時もずっと片手でスマホ、もう片方の手は窓際に肘をついていて、ハンドルは一度も握らなかった。
「スマホを手に持って運転したら、その時点でアウトですね。スピーカー機能ならOKとでも思ったのでしょうか? 今はハンズフリー通話がかなり普及していますので、ぜひ使っていただきたい」

③トラックの男性
停止する前から片手にスマホを持ち、画面に目を落として何か入力している。ちらっと前を見て信号が変わったことを確認すると、スマホを置いて発進。
「スマホを置いて発進したことはいいのですが、止まる前からスマホを持っているのは完全にダメ。道交法上もNGだし、注意力が散漫になっています」

④コンパクトカーの女性
停止して数秒後にスマホを取り出し、画面を見て操作し始める。横の右折車線の車が動いたことで青信号に気づき、あわてて発進。
「停止しているときだけスマホを操作していたことになるので、OKと言えばOK。ですが、あわてて発進した様子からは、停止中に周囲をまったく見ていないことがわかります。これは非常に危険。もし停止している間に、死角に子供が入り込んでいたら……。ゾッとしますよね。停車中にスマホを操作するにしても、安全確認を損なわないわずかな時間にとどめましょう」

⑤軽ワゴンの男性
隣に妻らしき女性。停止してしばらくしてからスマホを手に取り操作する。発進時も見ていたかどうかは不明。
「発進時にスマホを置いていればOKです。ドライバーのスマホ操作は、隣に乗っていると気になるもの。でも停止中のスマホ操作を変に咎(とが)めると、夫婦ゲンカの元になりかねません(笑)。イライラしながらの運転も事故を招きますので、注意するにも相手を気遣いつつ、慎重に」

⑥軽ワゴンの男性
停止前から片手にスマホを握りしめている。視線は前を向いていて、スピーカー機能で通話している模様。そのままの状態で発進。
「②のドライバーと同様ですね。スマホを持たなくても通話できる、ハンズフリー通話を活用してほしいものです。ちなみに停止前からスマホを操作しているドライバーの多くは、停止線にカッコよく止まれていませんでした。気が散っている証拠ですね」

⑦SUVの女性
完全に停止する前からすでにスマホを操作しており、視線は画面に落ちている。信号待ちの途中でスマホを手放し、前を見た。
「停止前からのスマホ操作は、かなり多いようです。恐らく信号が黄色から赤に変わることがわかっていて、『どうせ止まるから……』ということでしょう。運転に慣れている人によく見られる油断ですね。そういう心の隙に、事故が入り込んでくる。気を付けてください」

停止中のスマホ操作は違反…?
道交法での規定は?

クルマに乗り込んだら最後、スマホには一切触れてはいけないのかといえば、そんなことはない。道交法では、「運転中は、自動車が停止しているときを除き、携帯電話等での通話や、表示された画面を注視しないこと(概略)」と定められている。これはつまり、自動車が停止しているときはOK、ということ。たとえば駐車中の車内なら、なんら問題なくスマホを操作できる。
ここで問題になるのは、道交法のいう「停止しているとき」に、信号待ちによる停止が該当するのかどうか、だ。警視庁の交通相談窓口によると、「信号待ち等の一時停止も含まれる」とのこと。つまりは、セーフということになる。が……。
「信号待ちで停止しているときにスマホを見ても違反とは言えないが、青信号に気づかず発進が遅れたりすれば、大迷惑になってしまう。社会生活的に判断すれば、控えたほうがよいと思う」という回答も得た。
つい夢中になってしまい、周囲への目配り、気配りが疎(おろそ)かになりがちなスマホ。「違反かどうか」を気にするよりも、「安全かどうか」を常に意識し、注意力が散漫にならないよう気を付けたいところだ。
また、スマホ操作は緊急時を除き、あくまでも「停止しているとき」に限られている。停止前からの操作、発進後の操作は完全にアウトだと強く認識していただきたい。

「道交法上はセーフでも、危険だと思ってほしい」と菰田さん

菰田さんコメント:
「スマホは今や必需品です。たとえばロングドライブの間、まったく見るな、使うなと言うのは現実的ではありません。信号待ちの間、スマホを見たり操作するのは、道交法上もセーフとのことですので、私もNGとは言いません。
しかし、オススメもしません。というのは、停止中でもスマホに意識が行くと、周囲への注意力が散漫になってしまうからです。
『違反じゃないから』と油断するのではなく、スマホを見る・操作するにしてもほんの数秒にとどめ、あくまでも視線や意識は周囲に向けてください。周りの状況は刻々と変化していますよ」

オススメしない信号待ちでのスマホ操作
操作するなら安全を強く意識し、停車中の短時間だけ

菰田さんコメント:
「常に意識していただきたいのは、『違反かどうか』だけではなく、『安全かどうか』です。信号待ちで停止していれば、スマホ操作は違反ではありませんが、『スマホを見ている間は、周囲を見ることができていない』のです。
スマホを見ているその間に、子供が駆け寄っているかもしれません。自転車やバイクが急接近している可能性もあります。そのことに気づかずに発進すれば、大変な事故を起こしかねません。
私も現代人ですから、スマホを使っています。信号待ちの間に、スマホをチェックすることもあります。ですが、ほんの短時間にとどめています。通話はハンズフリーですし、込み入った話になりそうなときは安全な場所に車を止めて行います。
スマホは便利な必需品。それだけに、車内では意識しすぎないよう強い意志を持ち、安全運転を最優先して付き合っていただきたいと思います」

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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