地上54mへ一直線! 「18階まで届く」日本最大級の巨大はしご車から見た絶景の世界と圧倒的スケール
【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち
建設現場や災害現場、そして輸送の最前線など、人知れず活躍する特殊車両たち。特別な作業のために開発されているだけに、その機能も形状も、どれも常識を超えたものばかりだ。
今回紹介するのは国内最大級のはしご車。一般的なビルなら18階相当の高さに届く。金沢市中央消防署に配備されたこの巨大はしご付き消防車は、人命救助から高所放水、さらには港湾部での水難対応までこなす万能マシン。実際に伸長する様子を間近で取材すると、その迫力とスピードに驚かされた。
54mはしご車はどうして誕生した? その役割は?
はしご伸長時には幅約1.5mのアウトリガー4本を張り出し、水平と安定を確保。近くで見上げる54mの高さはまさに圧巻。一般的なビル火災であれば十分対応できる頼もしさだ
1990年に日本国内で50mのはしご車が登場して以降、それ以上の高さのはしご車は技術面や安全面の課題があり、開発されなかった。しかし、道路運送車両法の改正により車両総重量が20tから25tまで認められるようになったほか、従来より強度の高い手法の採用により、はしご本体の軽量化が図られたことなどさまざまな課題をクリアしたことによって、2013年に国内で初めて50mを超える54mのはしご車が誕生した。
一般的なビルなら18階程度まで届く高さを持ち、人命救助はもちろん、上部からの放水による効率的な消火、さらに水平方向に伸ばせば港湾部での水難事故対応など幅広く活躍する。
伸縮や旋回などの操作は台座部に設置された操縦席で行う。360°の回転と75°〜-10°の角度調整により狙った場所まで先端のバスケットを展開。最大伸長に必要な時間は、アウトリガー展開を含め最短で約180秒
消火と人命救護を担うバスケット
先端に装着された耐荷重270㎏のバスケットに隊員が乗って活動する。隊員1人あたり装備込み約90㎏の計算なので、人命救助の場合、隊員1人で運用する場合は要救助者2人、隊員2人で運用する場合は要救助者1人を収容できる。
常時取り付け型のバスケットなので災害現場に到着後、直ちに伸梯(しんてい)できる。3人乗りが基本で耐荷重270kg。上空での活動は風速に大きく影響されるため風速計を搭載。そのデータをリアルタイムに確認しながら伸長度合いを決める
消火活動の場合はここから放水する。ただし車両総重量の関係でポンプを搭載していないため放水時は同時に出動したポンプ車からの送水が必要。可能放水量は毎分2000L
操縦席からの操作だけでなく、バスケット内からでもはしごの伸縮が可能。安定性は風速の影響を大きく受けるため、風速10m以上の場合はバスケットから左右にロープを伸ばし地上から引っ張って揺れを防止する
最大伸長時は建物屋上に設置された大型アンテナとほぼ同じ高さまで到達。遠景を見れば54mがどれほどの高さかおわかりいただけるはず
バスケットと地上をつなぐリフターで要救助者を迅速に運ぶ
バスケット下には、レールに沿って上下する耐荷重180kg(2名乗車可能)のリフターを装備。はしご角75°という最大傾斜時でも、力強く昇降する性能を備えている
バスケットとリフターは併用タイプとなっており、目標地点に到達した後は梯体を作動させることなく、人員の昇降が可能。さらに、両方を同時に使用することで、高所からバスケットで救助した要救助者を、リフターで地上へ降ろすといった、途切れのない連続救助を実現している。
【54mはしご車の特徴と詳細はこちら!】
車両移動をはじめ各種機能を操る運転席。カタログ上の乗車定員は6人だが実際は設置している機材の都合で5人までの乗車となる。運転自体は大型自動車免許で可能。はしご操作に関しては金沢市消防局が独自に定めた養成研修を修了した者のみが行う
はしごが備え付けられている台座は360度回転が可能なターンテーブルを採用。はしご角度は後方に見える2本の太い油圧シリンダーによって調整される。シリンダー左横が操縦席
左右2本ずつ計4本装備しているアウトリガー。それぞれに油圧ユニットを内蔵しており設置面の状態に合わせて微妙に高さを調整することで上下左右それぞれ約7度の範囲内なら水平を保てる
前4輪&後8輪(ダブルタイヤ×4)の全12輪構成。操舵は前4輪すべてが受け持つことで転回時はこのように操舵。サイズは最前2輪が265/70R19.5で他8輪は205/70R19.5。最小回転半径は9.1m
後部にはアウトリガーの張り出し・収納やターンテーブルの傾斜矯正を行う操作盤や送水用ホースの接続口などを装備。後部パネルを開けるとジャッキ、アウトリガーの非常用電源弁があり、通常の操作ができなくなった場合は、手動での操作も可能としている
【金沢市消防局 54mはしご車のスペック】
●ベース車:日野プロフィア ●シャーシ型式:QKG-FW1AXBG改 ●全長×全幅×全高:12000mm×2490mm×3530mm ●ホイールベース:7070mm ●車両総重量:24960kg ●最小回転半径:9.1m ●原動機型式:A09C〈AT-IV〉 ●総排気量:8866cc ●最高出力:279kW/1800rpm ●最大トルク:1442Nm/1100rpm ●駆動方式:8×4 ●乗車定員:6名 ●はしご連数:6連 ●はしご長さ:約11.3m(全短縮)/約54.8m(全伸長) ●起伏角度:-10°〜+75° ●旋回角度:360° ●最大許容積載荷重:2700N(バスケット)/1800N(リフター)
重機女子オペレーター Kaoriさんが語る「54mはしご車」の魅力
自分の首が16倍伸びたら…想像してはじめてわかる、そのすごさ!?
今年、成人を迎えた息子は大の消防車好き。小さい頃からの夢は、ずっと消防士だった。そんな息子の影響で、気が付けば私まで消防車に詳しくなってしまった。今回のテーマである国内最大級のはしご車「スーパージャイロラダー」。誕生は1985年。実は私と同級生だと思うと、なんだか急に親近感が湧いてくる(笑)。
車高は約3.5m。そこから、はしごは最大54.7mまで伸びるというから驚きだ。このすごさを人間に置き換えてみると、比率はおよそ16倍。つまり、自分の首が身長の16倍まで伸びることになる。身長160cmの私で言えば、地面に立ったまま9階建てマンションの窓から中をのぞける感覚!?
そして本当にすごいのは、これほど長いはしごを伸ばした状態でも、人命救助ができるという事実。実際の映像を見ると、風がない日でも先端のカゴは円を描くように揺れている。いくら訓練を積んでいるとはいえ、その状況で人を救い出す消防士の方々には、ただただ頭が下がる。ちなみに今回、この短い記事の中で年齢と身長を明かしてしまったことは……どうかご容赦いただきたい。
重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)
親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、毎日現場で作業しながらもテレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。
●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs
特集の記事一覧
クルマで自転車の横を通過する際は要注意!
2026.03.27
4月1日から自転車の交通違反に青切符を導入!
2026.03.23
安全装備の装着義務や購入時の手続きが変更に!
2026.03.16
走る別荘、幻の鉄路、謎トンネル――日常を抜け出す“大人の冒険”へ
2026.03.02
道路と線路の二刀流の乗り物「DMV」誕生!
2026.02.28
2トーンカラーのクルマはなぜ、人気が復活したのか?
2026.02.16
人気急上昇2トーンカラーの秘密、冬の愛車トラブル最前線と大雪での立往生検証まで注目記事を総まとめ
2026.02.16