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高速道路の謎の緑の光 ネクスコ NEXCO東日本
文=鈴木ケンイチ(日本自動車ジャーナリスト協会会員)

雪道で見る「謎の緑の光」の正体は? “自動運転”に“衛星管理”…冬の高速道路を守る NEXCO東日本の最新テクノロジーを一挙公開

未来的ガイドライトに、熟練の職人技のデジタル化まで。進化を遂げた雪道対策の最前線

冬の高速道路のドライブは、雪や路面凍結などのさまざまなリスクが存在する。高速道路を管理するNEXCO各社は、高速道路ユーザーの安全を守るために、冬対策の高度化した最新技術を次々に投入している。
現在、冬の高速道路の安全を確保するために、どんな技術が導入されているのか? NEXCO東日本が誇るテクノロジーの最前線を取材、担当者に話を聞いた。

目次

「無線報告」はもはや過去!
GPS共有で事故対応を最速化するデジタル・チームプレー

GPSで全車両の位置をチーム全員が共有する次世代の道路管理。

「GPS車両位置管理システム」は、車両単体ではなく、チーム全体で位置情報を共有化できるのが特徴となる

乗用車がGPS利用のカーナビで現在位置を知るように、道路の管理を行う車両の位置をGPSの活用で把握している。それが「GPS車両位置管理システム」だ。2009年に試験的にスタートし、2010年から本格導入となった。

乗用車のカーナビと同じようにGPSを使用するが、どこにいるのかという表示は、普通のカーナビとは異なり、表示は地図ではなく高速道路の路線図に表示され、指令を行う道路管制センター及び管理事務所にも同時に伝えられている。これがポイント。チーム全体で位置情報を共有することが可能になるのだ。

NEXCO東日本の担当者は、「以前は、管理車両がICなどを通過するときに、無線で位置を口頭で知らせていました。運転しながら、周りを監視しながら、無線で報告していたんですね。それが今では自動&瞬時に位置情報が共有できるため、作業が楽になっただけでなく、事故への対策も迅速にできるようなりました」と説明する。

複雑な高速道路のどこに管理車両がいるか一目でわかる、高精度GPS位置管理システム。

「GPS車両位置管理システム」では、管理車両がどこを走っているのかを高速道路の路線図に表示することができる

大雪でも見える「光の道」
安全を守る “未来的”な技術とは?

氷点下でも光り続ける!ヒーター内蔵「自発光式スノーポール」が北海道の夜道を支える

北海道エリアで導入されている「自発光式スノーポール」。夜間に光って、道の場所を案内

夜間の高速道路で雨や雪が降ると、視界が悪くなって、どこまでが道路なのかが見えにくいときがある。雪が降り積もれば、すべてが真っ白になって、道路と路側だけでなくガードレールさえも確認できなくなってしまうことも。

そんな冬の危険に備えて、北海道など雪深い地域では、道の端に白と赤や緑の縞々のスノーポールが立てられている。また、北海道エリアなどで、その上にLEDライトが光る「自発光式スノーポール」も使われるようになった。

「ただし、LEDは熱を発しないので、表面に雪がこびりついてしまいます。そのため、対策として表面にヒーターを付けたり、発光部を斜めにするなどの工夫が試行錯誤で採用されるようになりました」と、北海道エリア担当のNEXCO東日本のスタッフ。

次に東北エリアを中心に「帯状ガイドライト」という新技術が2016年から採用されている。これはLED光源を特殊レンズで1本の緑の光に変換し、道路の左外側線上に照射するというもの。

「緑の光をきれいに映し出すのが難しく、弊社(ネクスコ・エンジニアリング東北)と共同開発先の積水樹脂株式会社だけでなく、北海道大学と秋田大学、北見工業大学の協力も加わり、開発に3~4年もかかった」と担当者は言う。緑の光のラインによって生まれた光の道は、高速道路を使うユーザーにも「近未来的だ」「きれいだ」「見やすい」など評判が良い。

大学とも連携した新技術によって、視界不良で停止するクルマが減れば、追突事故の減少に繋がり、高速道路を使うユーザードライブの安全を支えてくれているのだ。

吹雪でも道が見える!SF映画のような「緑の光」が路面を照らす、NEXCO東日本の最新ガイドライト。

LEDの光を特殊なレンズで左外側線上に照射する「帯状ガイドライト」。幻想的な緑の光が特徴だ

前述の製品と同じ緑の光の技術を使い、除雪車や湿塩散布車の作業エリアを明確にする「セーフティライン」がある。低速で作業しながら走る除雪車などの後ろに、緑の光のラインを照射することで、後続する一般車両が安全な車間距離を確保しやすくなる。

除雪にかかわる作業者からは「一般車が追い越しせず、追従してくれるようになって、後ろを気にしなくなるので助かる」という声も上がっているそうだ。

東北の冬を救う光。視覚支援ライトで車間距離確保をサポート。

緑の光のラインを目印にすることで、後続車は安全な車間距離の把握がしやすくなる

職人の“技術”をデータ化!
クルマへのダメージも軽減する凍結防止剤最適自動散布

2014年に試験運用が始まり、2018年の本格導入を経て、今では北海道エリアで広く採用されているのが「凍結防止剤最適自動散布システム」だ。

これは、雪氷巡回車に搭載したカメラやモバイル路面凍結検知センサーなどを使って路面状況を判別。その情報を元に地域指令台が、どこにどれだけの凍結防止剤を散布するのかを決定する。

さらにその情報を通信で凍結防止剤散布車に送信。受信した凍結防止剤散布車は、GPSで把握した車両位置に合わせて、自動で凍結防止剤を散布してゆくというものだ。

宇宙からセンチ単位制御。準天頂衛星システムと高精度地図が連携する「除雪2.0」の仕組み図。

路面状況にあわせて、適切な場所に適切な量を自動散布することができる「凍結防止剤最適自動散布システム」

「従来の凍結防止剤の散布は、ベテラン作業者が、路面状況を確認しながら、走行中に路面にあわせて凍結防止剤散布の装置の操作を手動で行っていました」とNEXCO東日本は言う。つまり、作業者の“技能”に頼っていたのだ。

それに対して、「凍結防止剤最適自動散布システム」であれば、作業者は基本的にクルマを走らせるだけでよくなる。これにより、作業が簡単になるだけでなく、誰もが適切な場所だけに凍結防止剤を散布することが可能となるのだ。現状は、「路面判定の精度を高めているところ」という段階だが、それでも凍結防止剤の散布量を7%前後も減らすことができたという。

「路面判定の技術がさらに向上すれば、より使用量を減らすことができるようになります」と、NEXCO東日本の開発担当者。塩分を含む凍結防止剤は、クルマに錆を誘発するというネガティブな側面もある。使用量の減少はコスト削減だけでなく、道路を使うユーザーにとってもありがたいものとなるのだ。

衛星の活用でセンチ単位の管理可能!
最新鋭ロータリ除雪車

ロータリ除雪車をご存じだろうか? 路肩に寄せられ山となった雪を、道路の外に投雪する作業車だ。

2023年から運用開始となった「準天頂衛星システムを活用したロータリ除雪車自動化」は、ロータリ除雪車の運転と作業の両方を自動化するもの。オペレーターは車両に乗っているだけで、自動で「走行」と「除雪作業」をシステムが実施する。

「ロータリ除雪車が作業を行う路肩は雪で覆われているため、側溝があっても作業者は気づくことができません。道路の横に標識などがあるときは、投雪を停止したり、投雪する場所を変える必要もあります。そのため、ロータリ除雪車の運転に1人、除雪作業に1人という2人体制で作業にあたっていました。もちろん、ロータリ除雪車や道路設備を壊さないためにも、作業に習熟したベテランのオペレーターが担当していました」と、NEXCO東日本はこれまでの状況を説明する。

もはや巨大ロボット。準天頂衛星「みちびき」の指示で雪をかき分ける、自動走行ロータリ除雪車。

路肩に寄せられた雪をロータリーでかきとり、道路外に投雪するロータリ除雪車。写真は自動化で作業中のもの

そうした困難な作業の一部をすべて自動にしてしまうのが「準天頂衛星システムを活用したロータリ除雪車自動化」だ。

センチ単位の詳細な情報を併せ持つ高精度地図情報と、準天頂衛星システムによるセンチ単位の車両位置情報、ベテランのオペレーターが覚えこませた除雪作業の情報を組み合わせることで、自動化を実現している。

熟練の職人技」をデジタル化。人手不足を解消する、NEXCO東日本の自動化除雪テクノロジー

「準天頂衛星システムを活用したロータリ除雪車自動化」のシステムの概要

このシステムでオペレーターの負担を大きく軽減することができた。担い手不足に悩む現場にとって救い手となる技術と言えるものだ。NEXCO東日本では、さらに新たな“自動化”も視野に入れている。

「NEXCO東日本では、ロータリ除雪車に追従して、一般の走行車に作業実施を知らせるための標識車の自動化も開発を進めています。2021年に開発をスタートさせ、2024年には、供用中の高速道路の実運用下で試験走行を行っています」。衛星測位システムの活用だけでなく、ロータリ除雪車と標識車の車間通信も行い、車間距離を変化させながら、安全な走行を目指しているそうだ。

除雪車を追従走行する標識者の様子

ロータリ除雪車の後ろを自動で追従走行する標識車。開発中の様子だ

私たちが日常的に使う乗用車は、この10年ほどで驚くほど進化してきた。そしてその進化は、冬の高速道路を支える技術の世界でも静かに、しかし確実に進んでいる。紹介したものの中には、一見するとマニアックに思えるものもあれば、これからの冬道のあり方を大きく変えていきそうなものもあった。新たな技術は過酷な冬の高速道路を裏側から支え、利用者の安心と安全を支えてくれているのだ。

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