タイプR、ランエボ、R34GT-R…ド派手なリアウイングを装備した名車たち【後編】
これってほんとに純正だったの!? あの大きな形状には意味があったのか!ひときわ目立つ大きなリアウイングが採用されていた昔のスポーツモデル。今のスポーツカーにはない、刺激的なリアビューは、懐かしく、当時憧れた気持ちを思い出してしまう。「リアウイングがド派手だったクルマたち」後編では、引き続き存在感あふれるリアウイングを装備していたモデルをピックアップしていきます。
個性的なリアウイングを備えた懐かしのクルマたち
NSXに続く「タイプR」第2弾には、空力性能を求めた大型ウイングを採用
ホンダ・インテグラ タイプR(DC2/DB8型)
初代インテグラ タイプR(1995年デビュー)に採用されたウイングタイプリアスポイラー。スポイラー形状は風洞実験と実地走行テストによって開発された
インテグラ タイプRは3ドアクーペ(DC2)と4ドアハードトップ(DB8)を設定。前後のエアロパーツによって、前後のタイヤ接地圧を理想的な配分にバランスさせ、優れた高速安定性を実現していた
「身近なライトウエイトクラスにおいてタイプRを誕生させる」というプロジェクトで、ホンダが目をつけたのがライトウエイトスポーツカーのインテグラだ。
過酷な実走テストによって開発されたインテグラ タイプRには、ハイパワーな1.8L DOHC VTECエンジン、クイックなギアレシオ、徹底した軽量化、小径ステアリングやレカロシートなど、徹底的なチューニングが施された。
空力パーツとしては、フロントアンダースポイラーとウイングタイプリアスポイラーを投入。空気抵抗を増大させることなく、リフトフォースの低減に成功した。
他車にはない2段構えが硬派な走りのクルマを感じさせた
三菱ランサーエボリューションⅥ トミー・マキネン エディション
ランエボⅥの特徴的な2段型のリアウイング。小型化しながらも2枚翼とすることで、エボⅤと同等のダウンフォースを確保していた
2000年1月、マキネンの4年連続のドライバーズタイトル獲得を記念し、ランエボⅥ「トミー・マキネン エディション」が限定販売された
ランエボⅥが登場したのは1999年1月。ランエボⅤをベースに細部を見直し、ポテンシャルアップが図られたエボリューションモデルだ。写真は2000年1月に発売された「トミー・マキネン エディション」で、WRC史上初めて4年連続でドライバーズチャンピオンを獲得したトミー・マキネン選手の偉業を記念した特別仕様車。
最大の見どころは、特徴的な2段型のリアウイング。だがWRCでは、この2段ウイングが、「既定の翼面積の2倍近くになる」として、レギュレーション違反と認定。レースでは急遽、下段の隙間をカーボンパネルでふさぐことになった。それでもランエボⅥは、トミー・マキネンのドライブによってWRCで4年連続となるドライバーズタイトルを獲得。第2世代ランエボの集大成として、その戦闘力の高さを世に知らしめた。
目的が異なる2枚のウイングでダウンフォースを確保
日産スカイラインGT-R(R34)
R34型スカイラインGT-Rに標準装着されていた、角度調整機構付き2段式リアウイング。前方と後方、2枚のウイングで構成されている
2段目のウイングは4段階で角度調整が可能。サーキットやワインディングなど、走行場所に応じてドライバーがセッティングできた
「第2世代GT-Rの集大成」として、1999年1月にデビューしたR34型スカイラインGT-R。エンジンは2.6L直6ツインターボのRB26DETTを改良して搭載しており、スムーズでトルクフルなこのエンジンと、ボクシーでスポーティーな見栄えで、歴代スカイラインのなかでも人気度が特別高いモデルだ。
2段式のリアウイングは、ルーフ上面を流れてきた空気を1段目のウイングで整流したあと、2段目のウイングで跳ね上げ、ダウンフォースを稼ぐという構造。上下の厚みが薄くても強いダウンフォースが得られると、評価も高かった。
リアスポイラーが強烈に目立つシンプルになった3世代目のランエボ
三菱ランサーエボリューションⅦ
第3世代ランエボの第1号となるランエボⅦに標準装着されていた大型リアウイングは、角度調節機能付きのタイプだった
先代のランエボⅥと比べると、デザインがおとなしくなった印象のランエボⅦ。だがベース車両の戦闘力は大幅に向上している
2001年1月にデビューしたランエボⅦは、ベース車両がランサーセディアへ変更となったことでボディーサイズがひと回り大きくなったが、スポット溶接追加などを行い、剛性面では圧倒的に有利となった。
デザインは直線的となり、先代のランエボⅥの2枚ウイングで失敗した反省を生かし、1枚ウイングの大型リアスポイラーが標準搭載された。
このランエボⅦには、ランエボ史上初となる5速オートマ車のGT-Aが存在した。リアウイングはGT-A専用の小型タイプが標準採用だったが、リアウイングレスとGSRグレードの大型リアウイングも選択できた。
ボディー全体でダウンフォースを確保!? エアロダイナミクスにこだわったタイプR
ホンダ・シビック タイプR(FK8)
FK8型シビック タイプRに標準搭載の大型リアウイング。上下のパーツを構造接着剤で結合することで薄型化を実現。ウイングの上面と下面の圧力差を大きくしたことで、より強大なダウンフォースを発生
薄型形状の大型リアウイングはブラック塗装。シャープなリアスタイリングの演出と、ルームミラーに映り込んだときの違和感を低減していた
フロントバンパーコーナーには、インナーフェンダーのスリットに空気を導き、タイヤ前の乱気流を整流してドラッグを低減するエアカーテンも採用
先代モデルとなるFK8型シビック タイプR(2017年デビュー)。ボディー全体でダウンフォースが得られるよう、ベースモデルのデザインからエアロダイナミクスをつくり込んでいった。多数のエアロパーツをまとった武骨な姿はロボットアニメのようだと揶揄(やゆ)されることもあったが、すべては機能的に設計されたものだった。
新形状のリアウイングは、製造方法を変更したことで薄型化に成功、空気抵抗を抑えながらも効果的にダウンフォースを発生させることができるようになった。またルーフ後端に設置したボルテックスジェネレーターが、後方に流れる空気の剥離を抑え、リアスポイラーへ空気を正確に当てるような効果もあった。
これがディーラーで買えたなんてスゴい! 超過激なGTウイング仕様
マツダスピードが開発したRX-7(FD) RスペックのGTウイング。材質はFRP製
過去にはスパルタンなGTウイングがディーラーで買えた時代もあった。かつてマツダのワークスチューニングブランドだったマツダスピードが、サーキットでのRX-7の性能を最大限発揮するために開発した各種チューニングパーツ、Rスペック。その中には背の高いウイングステーに幅のあるウイングを装着したGTウイングもあった。レーシングカーさながらの形状だが、これでも車検対応型で、ディーラーで購入可能だったのだ。
最近で言えば、トヨタのチューニングコンプリートモデル、86“GRMN”にもGTウイングが備わっていた。
GRのニュルブルクリンク24時間レース参戦10周年を記念して、100台限定で製作された86GRMN。当時の車両本体価格は648万円だった
現代の床下の空気を使ったダウンフォース発生技術が確立していない時代に、当時のエンジニアたちが創意工夫をして生み出した「作品」のようなアイテムだったリアウイング。そんなリアウイングを付けることで、レーシングカーのようなかっこよさを求めたのが、90年代に起こったスポーツカーのリアウイングブームだったのでしょう。
筆者も1990年代の角度調節機能付きリアウイングを備えたクルマが大好きです。性能ももちろん重要ですが、クルマはやはりかっこいいことが一番重要ですよね。
吉川賢一
よしかわ・けんいち 日産自動車で操縦安定性・乗り心地の性能開発を専門に、スカイラインなどの開発に従事。新型車や新技術の背景にあるストーリー、つくり手視点の面白さを伝えるため執筆中。趣味はカーメンテナンス、模型収集、タミヤRCカーグランプリ参戦。最近はゴルフとサウナにもハマり中。
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