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文=会田 肇 写真=花村英典
広告:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会

【Vol.3】『マイカーを陰で支えるヒーローたち』点検実施者に抽選で豪華賞品が当たるキャンペーン実施中!

新潟県の代表として出場し、見事、全日本自動車整備技能競技大会のチャンピオンに輝いた久保 仁(久保モータース)さん。

新潟県の代表として出場し、見事、全日本自動車整備技能競技大会のチャンピオンに輝いた久保 仁(久保モータース)さん。

日本一の自動車整備士、新潟県の久保 仁さんを訪ねて『マイカーを陰で支えるヒーローたち』Vol.3

“100年に一度の大変革期”にあると言われて久しい自動車業界。そんな世の中を迎えても避けて通れないのが自動車の整備だ。日本自動車整備振興会連合会はそんな自動車整備士たちの育成を目的に、「全日本自動車整備技能競技大会」を開催してきた。そして、昨年11月に開催された第23回大会では新潟県代表チームがチャンピオンの栄誉に輝いた。今回はそのチームの一人、久保モータース(新潟市)の久保 仁さんに、競技にかけた思いや、今後の抱負などを伺った。

きっかけは自動車整備士としての腕試し!

久保 仁さんは祖父が築いた整備工場で将来の3代目を担う38歳。家業が整備工場であることもあって、子供の頃から自動車の整備は身近な存在となっており、久保さんにとって自動車整備士への道を歩むのは自然の流れだったと言える。特に高校生ぐらいからは自らも自動車への関心を強く抱くようになり、当時、人気漫画だった『頭文字D』も熱心に読んだそうだ。

学生時代を終えた後は日産系自動車ディーラーで8年間、自動車整備士として従事し、社会人としての経験を積んだという。ただ、自動車ディーラーとは違い、家業の整備工場はさまざまなメーカーの車両を取り扱うことになる。古くからの付き合いがある顧客が多く、ディーラー時代とは違った付き合い方が求められることも少なくない。そこでまず行うべきは全日本自動車整備技能競技大会に応募して、自分の整備経験が全国レベルでどのぐらいにあるかを知ることと考えた。

サスペンションやブレーキ廻りなど、鋭い目つきでスピーディに点検作業をこなしていく。

サスペンションやブレーキ廻りなど、鋭い目つきでスピーディに点検作業をこなしていく。

6位入賞でも十分!? でもやっぱり……。

久保さんは早速行動に移し、2015年の第20回大会並びに2019年の第22回大会にも出場し、第22回大会では見事6位入賞を果たすことができた。久保さん自身はこの6位入賞で、自分の実力が一定のレベルにはあることを実感していたが、実はこれが第23回大会での優勝へつながるプロローグとなるとは知る由もなかった。

というのも、この第22回大会でパートナーとして組んだのが、今回の第23回大会で優勝を共に勝ち取ったナカノオートの石田俊行さんだったのだ。

第23回大会で久保さんは当初、コーチとして関わっていたそうだ。それがある日、新潟県の指揮を執る自動車整備振興会から連絡が入る。この大会で新潟県代表として出場予定だった石田さんのパートナーが出場できなくなり、その代わりに出場をお願いできないかというものだった。

久保さんはこの時の心境として、「正直、第22回大会で勝ち取った6位でも十分という気持ちはありましたが、同時にまだ上を目指せるという気持ちも持っていました。そんな矢先に誘いを受け、せっかくのチャンスだけにチャレンジしてみようと思いました」と語る。

とはいえ、この連絡を受けたのが大会当日のわずか1週間前。第22回大会で石田さんとパートナーを組んだことから整備に関する技術的な連絡を取り合ってはいたが、かといって特別にお付き合いがあったわけではない。この短期間でうまくいくのか不安はあったようだ。

久保 仁さん(久保モータース)は、石田俊行さん(ナカノオート)とペアで新潟県代表として出場した。

久保 仁さん(久保モータース)は、石田俊行さん(ナカノオート)とペアで新潟県代表として出場した。

「第23回 全日本自動車整備技能競技大会」の会場風景。2022年大会には90人が参加し、その腕を競った。

「第23回 全日本自動車整備技能競技大会」の会場風景。2022年大会には90人が参加し、その腕を競った。

「石田さんは大ベテランにもかかわらず私の目線まで降りてきてくださるので、なんでも相談でき、とてもやりやすかったです」と、久保さんは当時の状況を回想する。競技大会中も予想以上にスムーズに作業を進めることができたそうだ。

とはいえ、競技大会では競技開始後に課題が与えられるため、その対処方法が大きなポイントとなる。これについて久保さんは「さまざまな車両の入庫に対応している日頃の整備経験が活きました」と話す。自動車ディーラー時代に加え家業での経験が、整備士としての久保さんを大きく成長させたことは間違いないだろう。

また「大会直前まで、整備要領書をしっかりと読み込むことができたので、症状を確認しながら素早く対応することができました」とも語ってくれた。こうした一挙手一投足が結果につながったというわけだ。それでも当の本人は「手応えはなかったし、自分たちの順位が一つでも上がればいいと思っていた。自己採点を甘々にしてもなんとか引っかかるかなって思う程度だった」と当時の想いを明かす。

しかし、優勝した後は、それまでとは一転。多くのメディアで採り上げられたこともあり、あちこちで声がかけられるようになった。特にそれを知った新潟市内のあちこちから仕事の依頼をいただくようになったそうで、その効果は想像以上だったという。

今後、自動車整備士はどうあるべきか?

では久保さんは、日頃の整備に対してどのように臨んでいるのだろうか。

「故障である症状を杓子定規に捉えるのではなく、部品の交換サイクルやお客様の車の使い方を見ながら、個別のメンテナンスプランを提案するようにしています。それは病院で言えばかかりつけ医みたいな役割。患者の表情を見ながら病状を診断するのに似ています」。

久保さんは続けて、「そうした予防診断が結果として費用面でも安く収まるのですが、どうするかを判断するのはお客様次第。それだけになるべく多くの判断材料を提供して整備や修理の判断をしやすくすることを心掛けています」と、愛車と上手な付き合い方について紹介してくれた。

デジタル化が進む昨今の自動車。整備士のスキルも常にアップデートが必要となる。

デジタル化が進む昨今の自動車。整備士のスキルも常にアップデートが必要となる。

その一方で久保さんは、いま自動車整備という仕事自体が大きな転換点にさしかかっていると語る。その転換点とは、言うまでもなく車両の電動化だ。

「電動化された車両は不具合が目に見えないかたちで発生しがちで、テスターによる診断が重要になっています。従来の技能だけでは対応できないのは確かです。が、それにも積極的に対応していかねばなりません」と久保さん。

「電動化により入手困難な情報も増えていますし、そういった面では歯がゆい部分も少なくはありません」。しかし、そんな状況について久保さんは「今後は地域で連携を組んでそれぞれの整備工場が得意分野を持ち、棲み分けをして対応していくことが重要となるでしょう」と将来のビジョンを描く。

「特に最近は、整備工場の人手不足も顕著となっており、一つの工場ですべてに対応することは難しくなっていると思います。それぞれの整備工場が得意分野を担当していくことがこれからの整備工場に求められる姿となるでしょう」と話をしてくれた。

新潟県を自動車整備の強豪県に!

最後に久保さんは、「クルマの自動運転化が進んでもクルマがなくなることはないですし、地域の安心安全を守るという我々の役割もしばらく変わりません。そういう部分に魅力とやりがいを感じてこの業界へ入ってきて欲しいですね」と未来の自動車整備士にエールを送る。

そうしたことを踏まえ久保さんは、日頃の活動として、地元の中学校で職業講話を実施しているという。その先には「新潟県を自動車整備の強豪県にしていきたい」との久保さんなりの目標がある。近い将来、新潟県を舞台として、多くの自動車整備士たちが巣立っていく日が訪れるのかもしれない。

<プロフィール>
自動車整備士
久保 仁(くぼ・ひとし)
1984年新潟生まれ。日産系自動車ディーラーで8年間整備士として勤めた後、祖父が築いた整備工場で活躍中。2019年に開催された第22回の自動車整備技能競技大会では見事6位入賞。今回、第23回大会に出場し、見事日本一に輝いた。

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