市販の防災セットだけで車中泊避難はできる? 実際に試してわかった備えのヒント
車中泊好きの防災士が検証! 防災セットの使い方とプラスしておきたい備え市販の防災セットは、最低限必要な備えがそろった優れものです。しかしこのセットだけで「車中泊避難」はできるのでしょうか? 親子で車中泊旅を楽しんでいる防災士・三沢真実さんと検証し、使い方や追加すべき道具のヒントを教えてもらいました。
防災セットを持っているだけでは安心できない、その理由
フラットにしても斜めにしか眠れない場合も
市販の防災セットを用意しておけば、車中泊避難も安心——そう思っていませんか。
「それだけで安心してはいけません」と車中泊好きの防災士・三沢真実さんは警鐘を鳴らします。
三沢真実(みさわまみ)さん
防災士、キャンプインストラクター。“キャンプのある暮らし”をテーマに、地球の未来を創造する会社「CAMMOC」創設メンバーで、いち早く“いつものキャンプで無理なく備える”を提案している。息子のアリくんと車中泊をしながら全国各地を旅しているが、「アリの身長が170cm近くなったから、スズキ・エブリイだと手狭になって……」が目下の悩み
市販の車中泊用防災セットは、車内に一時的に避難するための基本的なアイテムがまとめられています。ただし、それがそのまま“自分にとって十分”とは限りません。
実際に中身を確認してみると、「これは使えそう」「これは自分には合わないかも」と感じるものが出てくるはずです。必要なものや優先順位は、人によって、クルマによって、季節によって異なります。
防災セットはあくまで“きっかけ”。そこで安心するのではなく、自分にとって本当に必要なものを考えることが、車中泊避難の備えでは何より大切です。
足先が下がったまま眠るのは避け、できるだけフラットな状態に
クルマによっては、2人で横になるのが困難な場合もあります。後部座席をフラットにしてひとりで斜めになって眠るか、助手席と運転席をリクライニングさせて2人で眠るかで必要な道具は変わってきます。
また、運良くフルフラットになって2人並んで横になれる広さがあっても、いざ寝転ぶと微妙な段差が気になったり、硬くて冷たい金属が肌に触れるところがあったりして必ずしも眠りやすいとは限りません。
「ペットや赤ちゃんがいるからクルマを避難所代わりに……と考えているなら、一度自宅の駐車場でいいので、車内でどのように眠れるか試してください」と三沢さんは伝えてくれましたが、同じように「市販の防災セットを手に入れたら、まずはそれだけでどこまでできるか試してみて」とも教えてくれました。
防災セットの睡眠グッズは車内でどう使える?
車中泊をイメージした防災セット
市販の防災セットにはどのようなものが入っているのか、防災士・三沢さん、ライター大森、そしてカメラマン逢坂とともにチェックしました。
今回手にしたのは、一時的な車中泊避難に役立つ25点の防災アイテムのセット。まずは車内就寝関連グッズから実際に使い心地を試してみましょう。
エマージェンシーシート、エア枕、エアマットとポンプ、銀マット、毛布、ポンチョ、グローブ、サイドとリア用シェードなど、車内で眠るための道具たちをチェック
エアマットは思いのほか頑丈。段差解消にも活躍
逆止弁付きで落ち着いて空気を入れられる
一番気になるエアマットは、細かな横向きチューブが連なっています。両側にバルブがあり、片側が逆止弁付きの空気入れ用。もう一方は排気用です。
「エアマットが長いので空気を入れるのも抜くのも大変。息を吹き込んでもいいけれど、呼気でカビやすくなるので長期保管には不向きとなります」(ライター大森)
展開サイズは約幅67×長さ190cm、厚み約5cm。寝転んでみると摩擦音はしますが、思った以上にしっかり体を支えてくれます。途中で空気が抜けるような不安もありません。
「横方向のチューブなので丸められます。隙間に合わせたり、枕や足枕のようにもできるのはいいですね」(三沢さん)
段差を埋めるのにも使える
「後部座席と荷室に生まれる18cmの段差に2つ折りにしたマットを置いてみたら、段差がずいぶん埋まりました」(逢坂カメラマン)
ただし、幅は空気を入れた状態で約67cm。コンパクトカーの助手席だけをフラットにして後部の荷室まで伸ばして敷こうとしましたが、運転席に干渉してしまいました。
「クルマによっては幅が合わない場合があるんですね。知りませんでした」(ライター大森)
薄いシェードは銀マットで代用できる
シェードをしても車内が見える
誤算だったのはシェードです。
日差しよけのためにすでに所有している人が多いからでしょうか、フロントガラスのシェードはセットに入っていません。
また、サイド用シェードのサイズが合わないのは想定していましたが、取り付けてみると日差しはやわらぐものの、目隠しとするにはやや薄手。とくに夜は、車内でライトを使うと丸見えです。これでは落ち着きません。
試しに同梱の銀マットで窓を目隠ししてみたら……
「銀マットやエマージェンシーシートを体に巻き付けると結構蒸れます。敷くなど他のことに使う方がいいのでは」という三沢さんの言葉をヒントに、試しに銀マットやエマージェンシーシートで窓の目隠しを試みました。
「目隠し効果は抜群ですがシャカシャカ音がします。これから車中泊を楽しもうと考えている人は車種別シェードに買い替えるほうがいいですが、避難時の数日しのげればいいと考える場合は悩ましいですね。シャカシャカ音や出入りの際にいちいち外す手間を許せるならシートで代用してもいいかも?」(ライター大森)
食関係&衛生用品、意外と気になったのはここ
歯ブラシ、ゴミ袋、バケツ、ウォーターキャリー、保冷バッグ、トレイ類、カップとカトラリー、ティッシュ、携帯トイレ、ライト、スリッパ、アルミホイル、マスクなど食関係と衛生用品もそろっている
当然のことですが、市販の防災セットには消費期限のある食品類は入っていません。ちょっとした飲み物やおやつはドライブのたびに別途用意しておくといいですね。
「ウェットティッシュがないのは残念。未開封のものを追加しておくといいですよ」(三沢さん)
携帯トイレは事前に使い方を確認しておこう
防災セットには素早く固めてにおいを閉じ込める携帯用トイレもありました。使い方にはコツが必要ですが、渋滞時の子供のトイレ問題にも役立ちそうです。
防寒着にも使えそうなポンチョ
「ポンチョが入っていますね。これが不透明であれば、携帯トイレを使うときに役立つのですが……」と三沢さん。携帯トイレをどこでどう使うかは、工夫が必要です。
スリッパは1足にして、代わりにスリッポンを常備
「車中泊では脱ぎ履きしやすくて歩きやすいスリッポンシューズを履いています」と三沢さん。靴は高温になる車内に保管すると劣化が早いので、車中泊避難時は忘れず自宅から持ち出そう
体育館などへの避難にはマイスリッパが必須です。冷たい床は体に堪えますし、館内に全員分のスリッパがあるわけではないのですから。
ただ、車中泊避難であれば常時必要なわけではありません。
「防災セットには携帯スリッパが3足入っていましたが、マットは1枚のみ。なのでひとり分のセットと考えるなら、スリッパは1足でもいいかも。代わりにガムテープとハンドジェル、キズテープなどを入れておこうかな」(ライター大森)
乾電池の有無、充電池の状態に注意しよう
乾電池は使わなくても放電されてしまうからでしょう、付属のライトは乾電池を別途用意する必要がありました。
また、春になると締め切った車内は温度が35℃以上になることも珍しくありません。乾電池やポータブル電源、モバイルバッテリーの保管には不向きな環境です。
「電池類は自宅で保管し、避難時に持ち出すという使い方が適切なんですね。でも、出先で避難するかも……そう考えると、キーに取り付けられる小さなLEDライトがあるとよさそう。これなら充電が切れても、日常的に持っているモバイルバッテリーで充電できますから」(ライター大森)
防災セットを使ってみたら、“足りない部分”が見えてきた
空いたスペースにファーストエイドキットとのど飴、経口補水液パウダー、ガムテープを入れてみた
助手席からラゲッジまでフルフラットになる軽自動車と、大きくリクライニングできるけれど段差と隙間が生じるコンパクトカーでいろいろ試したところ、フルフラットになるなら市販の防災セットを使って体を横たえられることがわかりました。
ただ、寒い時期に毛布一枚では底冷えします。非常時は命を守ることが最優先で、快適さはそこまで求められませんが、それでも横たわって疲労回復に務めないと判断力がにぶるわけで、断熱性のあるマットや寝袋は必要だと実感します。
一方、フラットにならないクルマでは詰め物が大量に必要でした。
ボックスがあると隙間を埋めるのに役立つ
「うちのクルマはクーラーボックスとペットボトルを台にして、その上に布物を置くことで隙間を解消できました」と逢坂カメラマン。それでも進行方向に対して斜めに寝ないと体が収まりません。
クルマによって準備すべきことは千差万別。こればかりは実際にやってみないことにはわかりません。
ファーストエイドキットとガムテープを押し込んだ防災セット、マット、ブランケット、寝袋、レインパンツ、モバイルバッテリー、ティッシュとウェットティッシュ、コイン、マルチツール、携帯ラジオ、予備眼鏡
今回、市販の防災セットをベースに、自分なりに必要そうなものをまとめて車中泊避難セットを作ってみました。けれどもこれで完成というわけではありません。
みなさんもこの機会に防災用品を見直し、車中泊で楽しみながらアップデートを続けましょう。
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