防災士は「車中泊避難」に備えて何を積んでいる? クルマに常備する防災グッズを見せてもらった
車中泊好きの防災士がリアルに常備する装備とは? 愛犬用避難グッズも紹介クルマで出かけ、そのまま車内で寝泊まりする車中泊体験は、いざというときの「車中泊避難」に通じる防災訓練でもあります。楽しみながら日常的に備えることを提案している車中泊好きの防災士・三沢真実さんは、いったいどんなモノを用意しているのでしょうか?
まずは危機が去るまでの一時的な車中泊避難を考えよう
三沢真実さん
防災士、キャンプインストラクター。“キャンプのある暮らし”をテーマに、地球の未来を創造する会社「CAMMOC」創設メンバーで、いち早く“いつものキャンプで無理なく備える”を提案している。プライベートでは息子のアリくん、愛犬のトワンちゃんとともに車中泊やキャンプを楽しんでいる
3月1日は1年に4回ある「防災用品点検の日」のひとつです。非常食の期限など防災用品を点検して万一に備えましょうという日なのですが、そもそも必要な防災用品とは?
政府や自治体のウェブサイトには、非常用持ち出し袋に入れるアイテムのリストが記載されていますが……水(1日3L)と食料を3日分! これだけでひとり分10kgで、これに防寒具などリスト通りに家族分を用意すると結構な量の荷物になります。
クルマを使った車中泊避難であれば持ち運びこそできますが、寝る場所がなくなりそう……。一体どうすればいいのでしょう?
車内に常備しているアイテム。上左から、持ち出し用食品、食品や衛生用品を運ぶ防水バッグ、ダウンウエア。下左から衛生用品(簡易トイレ、ポリ袋、ペットシート、ウェットティッシュ、スキンケア用品)、ペットフード、水、ウォータータンク、ポンチョ
車中泊好きの防災士・三沢真実さんによると「まずはさっさと避難することだけを考えます。その日分のちょっとした水と食品だけを持ち出し、備蓄している水や食品は自宅に置きっぱなしでも大丈夫。1日たって、それ以上に避難生活が継続しそうなら自宅に取りに帰ればいいんです」
三沢さんの愛車には、玄米バーやブロックタイプの栄養補助食品、のどごしのよいゼリー飲料など、そのまま食べられる食品を入れたバッグが常に積まれています。
これは「持ち出し袋」というより、日常的に車内に置いている常備バッグ。事故や災害による立ち往生で車外に出られないとき、長時間の渋滞で身動きが取れないときなど、その場でどうにもならない状況で役立つ、最小限の安心セットです。
三沢さんの持ち出し用食品は、玄米バーやブロックタイプの栄養補助食品などそのまま食べられるモノばかり。のどごしのよいゼリー飲料はお手本にしたい
「中身は決して多くありません。けれども“何もない”状態と“ほんの少しでもある”状態とでは、心の余裕がまったく違います。あくまで“最低限”。車内を圧迫するほどの備蓄を常時積むのではなく、まずはこのくらいの量を入れておくだけでも安心材料になります。
本格的に自宅からクルマへ避難できる状況であれば、別に用意している非常用持ち出しバッグや追加の食料セットを積み込めばいいんです。家の備えとクルマの備えは役割が違うもの。段階的に重ねることで、より強固な備えになりますよ」
車中泊避難というと何日も車内で過ごすイメージがありますが、まずは“最低限を常に備えておく”ことから。そう考えると、準備のハードルはぐっと下がります。
車内で落ち着いて過ごすためのマストアイテム10
上左から、ポータブル電源、ミニテーブル、窓用メッシュ、クーラーバッグ、バックドア用メッシュ。下左からマット、枕、ライト、寝袋、シェード、カーペット
まず、三沢さんの車中泊避難の基本アイテムを教えてもらいました。
「防寒とのぞき込み防止に役立つシェードはマストアイテム。夜、車内にLEDライトを点けると中の様子が丸わかりなので、すべての窓に取り付けます。夏は風通しよく過ごせるようメッシュを用意しています」
最近はペットが一緒なので、夏の車中泊旅ではポータブルクーラーを導入しているとのこと。真夏の避難では、余裕があれば積んでおくとよさそうです。
寝具は寝袋とマット&カーペット、空気でふくらませる枕。
三沢さんのクルマはスズキ・エブリイ バンを板張りにしてフルフラット化しているので、車内で就寝するためのアイテムはこれだけでOKですが、クルマによっては大きな隙間や段差ができることもあります。事前に車中泊体験をして、段差や隙間を解消するための工夫をしておくと車中泊避難で慌てずにすみますね。
クーラーバッグはどう使うのでしょう?
「食品を保冷するためというよりは、食品の保管用。食品や飲み物を、ここに入れておくと決めることで車内に散らばることはありません」
容量500Whほどのポータブル電源があると頼りになる。ミニテーブルがあると飲み物を置いても安定するそう
「災害時には、正確な情報を得ることが行動を左右します。そのためにも、スマートフォンは防災の重要なインフラのひとつといえるでしょう。
バッテリーの減りを気にして調べ物をしないのもストレスになってしまいます。家電を使うのは厳しいですが、軽くて持ち運びが楽な500Wh前後のポータブル電源があるとスマホやLEDライトの充電に困りませんよ」
家族の健康を司る救急箱の中身を教えて
上左からテープ、ハンドジェル、常備薬、ケミカルライト。中段左からウェットティッシュ&ティッシュ、綿棒、傷薬&かゆみ止め、ハンドクリーム、使い捨て手袋、使い捨てカイロ、マスク。下段左からポイズンリムーバー、多機能ナイフ、ダクトテープ、ペット用サージカルテープ
救急箱の中身は人それぞれ違って当たり前。
三沢さんの場合、虫よけ、かゆみ止め、ポイズンリムーバーなど虫対策が多めです。ちょっと不思議なのがケミカルライトとダクトテープです。
「三角表示板もありますが、ポキッと折るだけで発光するケミカルライトをクルマに吊るしておくと、目印になり、より安心です。電源や充電に頼らず、これ単体で確実に光るのが心強いところ。強い照明ではありませんが、ほかの明かりを使えない状況でも手元を照らせる“最後の手段”として備えています。
ダクトテープはモノを貼りあわせるだけでなく、メモを書いて貼り付けるなんてことにも使えます」
ほかにもペットの肉球を保護するためのサージカルテープも三沢家の必需品。
救急箱はすぐに取り出せるよう、助手席の裏に吊るして保管。こうしておくと車中泊やキャンプでケガをしてもすぐに処置できる
“どう使うか”を想像して、自分に最適な備えを
出番が多いものは背もたれにスタンバイ
三沢さんの場合、日常的に出番の多いものは運転席の背もたれにまとめています。
ここに収められているのは、ティッシュやぞうきん、スーパーアルカリイオン水、ペットシート。虫よけ、軍手、折り畳みシャベルなど。これらは当然、非常時でも大活躍します。
「二駆のクルマなので、ぬかるみや雪道でスタックしやすいんです。だからシャベルと軍手はすぐ手に取れる場所に置いています」
洗浄、消臭、除菌に役立つスーパーアルカリイオン水は「車内の清掃や消臭、食器の汚れ落としなどマルチに使える優れもの」です
この中で異質なのがペットシートです。
「クルマ酔いやストレスでペットが粗相してもすぐ処理できるようにしています。それにペットシートはペットのトイレ用ですが吸水性が高く、非常時には袋に入れて私たちの簡易トイレにもできます。
椅子型の簡易トイレも販売されていて、安定感があり使いやすいと感じる人も多いでしょう。車内用にコンパクトに設計されたタイプもあり、必要な人にとっては心強い備えです。
一方で、トイレをするために何が本当に必要かを理解しておくことも大切です。排泄物を吸収できるものと、においを閉じ込められる袋があれば、基本的な対応は可能です。形のある本体がなければできない、というわけではありません」
三沢さんは、かさばらない袋タイプの簡易トイレを常備バッグの中に入れています。さらに、すぐ取り出せる場所にペットシートを1枚忍ばせ、バッグの中にも複数枚を備えているとのこと。ペット用としてだけでなく、人の簡易トイレの補助や汚れ防止などにも使えるためです。
専用品を持つかどうかは正解・不正解ではなく、自分がどう使うのかを具体的に想像して選ぶことが大切。車内という限られた空間だからこそ、“本当に使える備え”を考えておきたいところです。
運転席に座ったまま手にできる緊急脱出用小物
手の届くところにコインが入ったケースと緊急脱出用ハンマー&シートベルトカッターが。ソーラーランタンの充電も助手席が指定席
三沢さんの運転席周りには、車中泊避難に限らず備えておくべき小物が点在していました。
水没などすぐに脱出できるよう小型のハンマー兼カッターがハンドル脇のポケットに入っています。
また、キャッシュレス化が進んでいる今、現金を持ち合わせていないと数時間の停電だけで動きが立ち行かなくなることもあります。数枚のコインでもありがたみを感じるはず。
気軽につまめるお菓子はドアポケットに常備
運転中の気分転換に役立つお菓子は、小袋入りで日持ちするものを複数用意しています。これらは避難時の不安を和らげるのにも重宝しそう。
〈コラム〉ペットのための防災グッズはいつもの散歩バッグを中心に考える
上左よりケージ、ペットのお気に入りブランケット、連絡カード、レインウエア、靴下。下左より背負えるキャリーバッグ、ペットシート&マナーウエア、散歩用バッグ(エチケット袋、ティッシュなど)、ペットフード用の折り畳みトレー、水
ペットとの避難ではいつもの散歩用バッグのほかに、ペットを連れて移動するためのケージやバッグを用意しています。
使用頻度の少ないケージだけど、用意しておけば一緒に行動する場所が増える
「リードでは建物の中に入れなくても、ケージに入れればOKという施設があるのでケージは必要。また、トワン(三沢さんの愛犬)が落ち着いて過ごせるよう、お気に入りのブランケットとペットフードを用意しています。
靴下は肉球を守るために用意しています。ただ、トワンはいつの間にか脱いでしまうことが多いので、実際にはサージカルテープで保護することがほとんど。状況に応じて使い分けられるように、どちらも備えています」
ハーネスなどに連絡先を記しておけば、万一はぐれてもすぐに飼い主がわかる
ペットが驚いて逃げるなど、避難時に迷子になるペットは思いのほか多いそうです。
「トワンは保護団体から譲り受けた子です。新しい家族として迎えるときに、“万一のときも離れ離れにならないように”という約束をしました。普段から身につける首輪やハーネスには、飼い主の電話番号と名前を刻んでいます。
マイクロチップも装着していますが、専用の機械がないと情報は確認できません。だからこそ、見つけてくれた人がその場ですぐ連絡できるよう、わかりやすく表示することを大切にしています」
クルマにも、手元にも。重ねる備えが安心をつくる
ここで紹介しているのは、車中泊避難に特化して「クルマに入れておきたいもの」です。外出時に必要な備えのすべてではありません。
「私は普段から“防災ポーチ”を持ち歩いており、クルマで出かけるときも同じように携帯しています。家族の連絡先や小型ラジオ、モバイルバッテリー、常備薬や簡単なファーストエイド用品、携帯トイレ、そして気持ちを落ち着かせるアロマやちょっとしたおやつなどを入れた、小さな安心セットです。
大切なのは、“クルマだから”“災害だから”と切り分けるのではなく、自分が出かけるという日常の延長線上に、どんな備えがあると安心できるのかを考えておくこと。普段の行動を想定して選んだものは、もしものときにも迷わず使えます。クルマの備えと、持ち歩く備え。その両方を重ねることで、安心はぐっと厚みを増していきますよ」
クルマや家族構成などさまざまな要因で必要なものは変わります。
3月11日を前に、三沢さんの持ち物を参考に自宅で車中泊体験をして、自分にとっての車中泊避難セットに仕上げてはどうでしょう。
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