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「カーステ」が羨望の的だった時代から… 音質に挑み続ける、カーオーディオの世界

昭和・平成の個性的カーオーディオ【純正編】

2024.05.22

構成=ダズ/文=島崎七生人

2024.05.22

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昨今のカーオーディオは、ナビゲーションやディスプレイオーディオとして、モニター部分がスペースのほぼ全てを占めているため、個性的なものは少なくなっているように感じる。一方、昭和・平成初期のカーオーディオは各車のアツい個性が輝いていた! そんな個性溢れる懐かしのカーオーディオを2か月にわたりクローズアップ。前編となる今回は純正オーディオを特集した。

カセットからCD・MDへ
スピーカーは海外ハイブランドへ

三菱・ランサー セレステ純正カーオーディオ

三菱・ランサー セレステ純正カーオーディオ

カーオーディオを“カーステ”“カーコンポ”と呼ぶと、いかにも昭和な時代の雰囲気が漂ってくる。とはいえかつては、大抵“カーラジオ”が標準で、カセットテープを聞くことができるカーステレオは、オプション扱いのいわばワンランク上の装備……そんな位置づけだった。読者の方の年齢層は幅広いと思うが、自動車の運転免許を取得して、初めての愛車を手に入れた頃に、まずカーラジオをカセットステレオに付け替えた……そんな経験をお持ちの方もいるのではないだろうか。

アナログレコードの音をカセットテープに録音して楽しむスタイルが一般化していくと、車でもそんな時代の流れを受けて、ラジオではなくラジオカセットステレオを標準装備とする車が増えた。そうなると今度は、より音にこだわりをもつユーザーが増え始め、オーディオ本体、スピーカーなどがさらにハイグレード化。高音質を求めるユーザーの期待に応える、意欲的で個性のあるカーオーディオも登場した。

さらに1980年代になると、市販のカーオーディオ専門メーカーから「自分の車にも付けてみたい」と思わせられるカーオーディオが続々と登場。これに対抗する形で、自動車メーカーも純正カーオーディオにより力を入れるようになった。きっかけを作ったのは1989年にトヨタがセリカ/カリーナED/コロナEXiVの登場を機に設定した「スーパーライブサウンドシステム」だった。 これはカセット一体AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ+CDプレーヤーに、さらにデジタル化により再生する曲に合った音場を再現できるデジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)と10スピーカー で構成されており、それまでの単なるカーステレオとは内容、音質ともに格段の進歩を遂げたものだった。この頃になると車のカタログでももはや“ステレオ”とは呼ばず、“オーディオ”の呼称が一般化した。トヨタではこのスーパーライブサウンドシステム(グレードによりライブサウンドシステムの呼称もあった)を他車種にも展開。メーカー純正のカーオーディオの中で一定の存在感を示した。

90年代に入ると再生メディアもレコードやカセットテープから、CDからデジタル・オーディオ・テープ(DAT)、ミニディスク(MD)などに進化。さらに世の中の高級化、ブランド志向が広まると、カーオーディオの世界にもその流れが。それまでホームオーディオで一部のマニアが愛好していたような国内外のブランドが、カーオーディオにも進出し始めたのだ。もちろんオーディオマニアにとっては「○○○に乗れば憧れの(愛用の)○○○の音が楽しめる」と歓迎すべきことで、純正カーオーディオの世界は、そうして文字通り世界を広げてきたのだった。

マツダ・ルーチェ(1986年)

“ENKA”を聞くためのボタンがあった正立カセットデッキ

マツダ・ルーチェ 純正カーオーディオ

マツダ・ルーチェ 純正カーオーディオ

80年代のホームオーディオというと、コンポーネントステレオ、いわゆる“コンポ”と呼ばれた、アンプ、テープデッキ等を個別に揃えるスタイルがマニアの間では主流だった。その流れを受けて登場したのがこのカセットデッキ。車用ながらスロット式ではなく「正立型」と呼ばれた、家族用のカセットデッキと同じく、カセットテープを立てて入れるスタイルを採用。さらに(これは比較的年齢が高めのルーチェのユーザー層を意識してか)音響特性を1ボタンで変えられるサウンドセレクターになんと“ENKA(演歌)”ポジションが用意された。

当時のマツダのセダンのフラッグシップ。通算5代目に当たり、メルセデス・ベンツSクラス似? とも言われた。ハードトップとセダンを設定

当時のマツダのセダンのフラッグシップ。通算5代目に当たり、メルセデス・ベンツSクラス似? とも言われた。ハードトップとセダンを設定

三菱・ギャラン ラムダ(1976年)

名門ダイヤトーンの取り外し可能なスピーカーボックス

三菱・ギャラン ラムダ 純正カーオーディオ

三菱・ギャラン ラムダ 純正カーオーディオ

“システムコンポ”と呼ばれた、オーディオ一式をワンセットにしたステレオシステムが70年代に流行しており、その感覚をクルマに持ち込んだのが当時のギャラン・ラムダのカーオーディオ。リアトレイ部にセットされたスピーカーは木製エンクロージャー(スピーカーボックス)で、取り外して車外に持ち出すことができた。スピーカー自体もウーファー(低音用スピーカー)+ツイーター(高音用スピーカー)の2ウェイで、三菱電機のホームオーディオのブランドだったダイヤトーンの名を冠したものだった。

当時のギャラン・シグマ(セダン)のクーペ版として登場。国産車ではいち早く角型4灯ヘッドランプを採用するなど個性を放った。姉妹車としてギャラン ラムダ エテルナ(エテルナ ラムダ)も存在した

当時のギャラン・シグマ(セダン)のクーペ版として登場。国産車ではいち早く角型4灯ヘッドランプを採用するなど個性を放った。姉妹車としてギャラン ラムダ エテルナ(エテルナ ラムダ)も存在した

三菱・ランサー セレステ(1977年)

「1600GTシステム80」とグレード名が付いた本格オーディオ

三菱・ランサー セレステ 純正カーオーディオ

三菱・ランサー セレステ 純正カーオーディオ

国産のスペシャルティカー市場を切り開いたのは1970年登場のトヨタ・セリカで、73年に追加設定されたリフトバック(ハッチバック)でさらに盛り上がりをみせた。75年になってその市場に三菱が投入したのがランサー セレステ。さらに若いユーザーをターゲットにグレード名を“GTシステム80”としたモデルが登場。リアを2ウェイとしたスピーカーをはじめ、専用デザインの操作パネルを採用。低音補正、ノイズ防止、フェーダー調整(前後スピーカーの音量調整)など豊富な機能を搭載。

カローラ・クラスのセダンのランサーがベース。北米市場名はプリマス・アロー。振動や騒音を抑えるサイレントシャフト付きの1.6Lエンジンなどを搭載

カローラ・クラスのセダンのランサーがベース。北米市場名はプリマス・アロー。サイレントシャフト付きの1.Lエンジンなどを搭載

日産・パルサー(1986年)

外向きに鳴らせた!? 150度回転式のJBL製スピーカー

日産・パルサー 純正JBLラウンドスピーカー

日産・パルサー 純正JBLラウンドスピーカー

サニーと同じコンポーネンツから生まれたパルサーは、走りのよさなどで、当時の日本車の中でも欧州市場での評価が高い車の一台だった。トップモデルで1.6Lツインカムエンジン搭載のミラノX1ツインカムに設定された“サウンドセレクション”は、細かな音質調整が可能なグライコ(グラフィックイコライザー)や100Wアンプなどを搭載し、前後に150度回転させられるJBL製スピーカーを採用。低音を効かすバスレフ方式も採用するなどし、手応えのあるサウンドを楽しませてくれた。

チェリーの後継車として1978年に登場した初代は「パルサー・ヨーロッパ」がキャッチコピーだった。写真は3代目で4ドアセダンも設定

チェリーの後継車として1978年に登場した初代は「パルサー・ヨーロッパ」がキャッチコピーだった。写真は3代目で4ドアセダンも設定

トヨタ・セルシオ(1989年)

DATデッキ付きスーパーライブサウンドシステム

トヨタ・セルシオ 純正スーパーライブサウンドシステム

トヨタ・セルシオ 純正スーパーライブサウンドシステム

静粛性の高さなどから「メルセデス・ベンツも震撼(しんかん)させた」と噂されるなど、登場するや否や世界中のプレミアムブランドから注目されたセルシオ。当然ながら恵まれたリスニングルーム環境を生かすオーディオシステムが用意された。「スーパーライブサウンドシステム」は当時の他のトヨタ車でも上級オーディオの呼称であったが、セルシオではCDだけではなく、同等の高音質と扱いやすさのDATをいち早く純正採用した。

クラウンの上をいく高級サルーンとして登場。北米のレクサス・チャネルではLS名義で、BMW、メルセデス・ベンツなどと比肩するモデルに

クラウンの上をいく高級サルーンとして登場。北米のレクサス・チャネルではLS名義で、BMW、メルセデス・ベンツなどと比肩するモデルに

マツダ・RX-7(1991年)

超個性派スピーカー「BOSEアコースティックウエイブガイド」

マツダ・RX-7 純正アコースティックウエイブガイド

マツダ・RX-7 純正アコースティックウエイブガイド

BOSE社というと、もともとは店舗など業務用音響機器を手がけるブランドとしてその名が広く知られていた。一方で車の分野では、車種専用設計のスピーカーシステムも手がけ、各社の純正オーディオへの採用が増えることに。RX-7では軽量、省スペースが条件のスポーツカー向けに、なんと全長2.7mものアコースティックウエイブガイド(リアスーパーウーハーユニット)を採用。重低音の迫力を楽しめる音響空間が作り出された。

RX-7としては3代目にあたり、車名からそれまでの名称にあった“サバンナ”は外された。ワイド&ローフォルムに高性能な13B-REWロータリーエンジンを搭載

RX-7としては3代目にあたり、車名からそれまでの名称にあった“サバンナ”は外された。ワイド&ローフォルムに高性能な13B-REWロータリーを搭載

トヨタ・ハリアー(1997年)

8スピーカーとパワーアンプ搭載の「JBLプレミアムサウンドシステム」

トヨタ・ハリアー 純正 JBLプレミアムサウンドシステム

トヨタ・ハリアー 純正 JBLプレミアムサウンドシステム

1997年12月に日本市場にお目見えした初代ハリアー。今につながる世界的なSUVのムーブメントのキッカケとなった一台でもある。当初、北米市場のレクサス・チャネル用のRXとして登場しただけに、同じアメリカの老舗オーディオ・ブランドのJBLとの親和性は高かったというべきか。“JBLプレミアムサウンドシステム”と銘打ち、今となってはシンプルな8スピーカーにカセット一体AM/FMマルチ電子チューナーが組み合わせられた。

乗用車のプラットフォームをベースに開発されたSUV。ホテルに乗りつけても様になる高級感、スムーズで上質な乗り味などを特徴とした

乗用車のプラットフォームをベースに開発されたSUV。ホテルに乗りつけても様になる高級感、スムースで上質な乗り味などを特徴とした

日産・スカイライン(1993年)

MDデッキを純正で初搭載

日産・スカイライン 純正カーオーディオ

日産・スカイライン 純正カーオーディオ

MD(ミニ・ディスク)そのものはデジタルの新メディアとして1991年に登場。メディアのサイズもデータ量もコンパクト化し可搬(かはん)性に優れ、録音も頭出しも可能と使い勝手もよく、カーオーディオ向けでもあった。そこでこの新デジタルメディアを楽しめるようにと、国産車ではR33スカイラインが、いち早く一部グレードへのオプション設定ながらMDプレーヤーを用意。ちなみに同車の装備一覧表を見ると、標準のカーオーディオではまだカセットデッキが中心、少しグレードアップさせてCDオートチェンジャーが設定されている……そんな時代のことである。

1993年8月登場。シェイプアップを果たした先代(R32型)から一転、セダンもクーペも全幅1720mmの3ナンバー車に上級化した

1993年8月登場。シェイプアップを果たした先代(R32型)から一転、セダンもクーペも全幅1720mmの3ナンバー車に上級化した

スバル・レガシィツーリングワゴン(1998年)

スバルと言えば高級機“マッキントッシュ”

スバル・レガシィツーリングワゴン 純正マッキントッシュサウンドシステム

スバル・レガシィツーリングワゴン 純正マッキントッシュサウンドシステム

1989年1月登場のレガシィツーリングワゴンは4WD+ターボの高性能ワゴンとして、当時の日本のワゴンブームの牽引役を果たした。その3代目モデル(1998年)に、まさしくグランドツーリングのために用意されたのがマッキントッシュのサウンドシステム。同社は1949年創業というアメリカの高級オーディオメーカーの老舗だが、ホーム用と共通のブラックフェイスにブルーの表示が浮かぶユニットを採用。しなやかな音の広がりをみせる極上のシステムだった。

初代は1989年に登場。水平対向エンジンと4WDの駆動方式、それとハイルーフを採用した実用性の高さは初代以来の同車のアイコン

初代は1989年に登場。水平対向エンジンと4WDの駆動方式、それとハイルーフを採用した実用性の高さは初代以来の同車のアイコン

トヨタ・ソアラ(2001年)

ハイブランド「マーク レビンソン」初搭載

トヨタ・ソアラ 純正 「マークレビンソン」プレミアムサウンドシステム

トヨタ・ソアラ 純正 「マークレビンソン」プレミアムサウンドシステム

1981年の初代登場から20年の節目を迎えた2001年、4代目となるソアラが登場。電動開閉式メタルトップの採用、当時認可されたばかりのランフラットタイヤのオプション設定など注目だった。さらにさすがと思わされたのが、ホーム用のハイエンドオーディオとしてマニア垂涎(すいぜん)の的のブランド、マークレビンソンの採用だった。クーペ/オープンなど、さまざまな状況下で延べ1,000時間を費やしてチューニングされたというシステムは、オープントップ走行時の音響特性にもキメ細かく対応したものとしていた。

3代続いた2ドアクーペは、この世代から電動でルーフが開閉するコンバーチブルに。デザインは初代ヴィッツと同じデザイナーだった

3代続いた2ドアクーペは、この世代から電動でルーフが開閉するコンバーチブルに。デザインは初代ヴィッツと同じデザイナーだった

日産・ステージア(2001年)

スペアタイヤホイール内にBOSE製サブウーファー

日産・ステージア 純正BOSEサウンドシステム

日産・ステージア 純正BOSEサウンドシステム

ステージアは当時の日産によるワゴン専用モデル。ワゴンながら、スカイラインと同等の走行性能の高さも特徴としていた。そんなステージアに設定されたのがBOSE社との共同開発により誕生した専用のオーディオシステム。その中でユニークだったのが、ラゲッジルーム床下のスペアタイヤのホイール内に収まる設計のサブウーファー。スペースを有効活用し、厚みのある低音を生み出すためのアイデアだった。

写真の2代目モデルは、走りと居住性を両立させたパッケージングにこだわった。2WD車の前後重量配分は51:49

写真の2代目モデルは、走りと居住性を両立させたパッケージングにこだわった。2WD車の前後重量配分は51:49


昭和・平成に登場した個性的カーオーディオ、純正編いかがでしたでしょうか。個性的なカーパーツというと、自動車メーカー純正ではなくアフターパーツメーカーが手掛けたものが注目されがちですが、カーオーディオにおいては、純正でもかなり個性的でマニアックなものも多かったのです。次回、後編ではアフターパーツメーカーをお届けします! お楽しみに。

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