後部座席の同乗者に、シートベルトを着用させずに運転したら、違反?
あなたの行動、ひょっとしたら違反かも後部座席の同乗者にシートベルトを着用させないまま運転するのは、違反に当たるのでしょうか。それとも問題ないのでしょうか。運転歴が長くなると、違反かどうかを気にしないまま運転してしまいがち。どこが違反に当たる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。
夫婦で、車で買い物に出かけた先で、ばったり友人に遭遇。買い物を終えて歩いて帰るところだったそうですが、ちょうど雨が降り出し、帰る方向も同じなので車で送ることにしました。友人には後部座席に座ってもらいましたが、車で10分ほどの距離ですし、特にシートベルトを着用するようには言わず、シートベルトを着用しないまま運転しましした。
この運転行為は、以下の選択肢のうち、どれに該当するでしょうか?
- 1.後席の同乗者にシートベルトを着用させなかったので違反
- 2.一般道なので着用の義務はなく、違反ではない
- 3.わずかな距離の移動なので違反ではない
-
答え:1. 後席の同乗者にシートベルトを着用させなかったので違反
道路交通法は、自動車の運転者の義務として、座席ベルト(シートベルト)を装着しない者を、運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限ります。)に乗車させて、自動車を運転してはならないとしています(道交法第71条の3第2項本文) 。つまり、シートベルトを装着させないで、 運転席以外の席に乗車させて運転してはいけないということです。
ただし、けがや疾病、妊娠中など、特別な場合はシートベルトを装着させなくてよいとされています(同項ただし書き。道路交通法施行令26条の3の2第2項)。
従って、正解は1の「後席の同乗者にシートベルトを着用させなかったので違反」となります。
シートベルト着用は後部座席も含めて全席で義務です。一般道路、高速道路にかかわらず走行中にシートベルトを着用していなかった場合、「座席ベルト装着義務違反」となります。なお、6歳未満の子供と、6歳以上でも体格等のためにシートベルトを適切に装着できない子供には、チャイルドシートを装着させる義務があります(道交法第71条の3第3項 )。
2008年6月にシートベルトの全席着用が義務化されてからすでに16年以上になりますが、後部座席のシートベルト着用義務は高速道路のみと勘違いしている人も多いのではないでしょうか。それは、行政処分の違反点数1点が付されるのが高速道路で違反した場合だけだからかもしれません。
運転席と助手席のシートベルト非装着は、一般道路、高速道路ともに違反点数が1点となります。しかし、後部座席のシートベルト非装着は、高速道路・自動車専用道路においてのみ違反点数が1点であるものの、一般道路においては口頭注意となっています。
※座席ベルト装着義務違反には反則金はありません。
このように、一般道では後部座席でシートベルトを着用しない場合の罰則規定がないとはいえ、後部座席でシートベルトをしなくていいということではありません。乗員の安全を守るのはドライバーの義務。後部座席に座る人にシートベルトを着用させることは、ドライバーの義務であり、責任なのです。
事故のリスクは一般道であっても変わることはありません。後部座席でシートベルトを装着せず事故にあった場合には、車内で全身を強打したり、車外に放り出されて重傷・死亡事故となる可能性が大きくなります。また車内の他の人にぶつかって被害を拡大するなどの危険もあります 。 自分が誰かの運転で後部座席に座る場合には、率先してシートベルトを着用しましょう 。
道路交通法
(普通自動車等の運転者の遵守事項)
第71条の3
(中略)
2 自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限る。以下この項において同じ。)に乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この条において同じ。)を当該乗車装置に乗車させるとき、疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者を当該乗車装置に乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
(以下略)
道路交通法施行令
(座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除)
第26条の3の2 法第七十一条の三第一項ただし書の政令で定めるやむを得ない理由があるときは、次に掲げるとおりとする。
1 負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上又は健康保持上適当でない者が自動車を運転するとき。
2 著しく座高が高いか又は低いこと、著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に座席ベルトを装着することができない者が自動車を運転するとき。
(以下略)
後席シートベルトを着用しないとどうなる? JAFが検証しました
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松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。