手信号の交差点。警察官が背中を向けて腕を水平にしているとき、交差点に入ったら違反?
あなたの行動、ひょっとしたら違反かも信号機が消灯し、警察官が手信号をしている交差点に近づいた際のクイズをお届け。運転歴が長くなると、違反かどうかを気にしないまま運転してしまいがち。どこが違反にあたる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。
雷雨が通り過ぎた後、自動車で片側1車線の道路を走っています。信号機の設置された交差点に近づきましたが、周囲は落雷のために停電しており、前方の信号機は信号灯がついておらず、交差点の中では警察官が背中をこちらに向けて、手信号で交通整理をしています。警察官はこちらを見ていませんが、交差する道路の左右から車が来ないことを確認し、十分に安全確認できたので、そのまま徐行して直進し交差点に入りました
この運転行為は、以下の選択肢のうち、どれに該当するでしょうか?
- 1.自分の車が進行する道路の信号も、交差する道路の信号も、どちらも赤信号にあたるので、交差点に進入するのは違反
- 2.自分の車が進行する道路側が赤信号で、交差する道路の側が青信号なので、交差点に進入するのは違反
- 3.交差点に先に入った方が優先なので、違反ではない
-
答え:2. 自分の車が進行する道路側が赤信号で、交差する道路の側が青信号なので、交差点に進入するのは違反
警察官が手を使った合図で交通整理を行うことを手信号といいます。警察官や交通巡視員は、手信号や灯火・旗を使って交通整理を行うことができ(道路交通法第6条1項前段)、この手信号等による交通整理がされている場合には、道路を通行する歩行者や車両等はそれに従わなければなりません(道交法第7条)。
警察官等は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るために特に必要があると認めるときは、信号機の表示する信号と異なる規制となる手信号等をすることまで認められています(道交法第6条1項後段)。
問題の交差点は信号が点灯していない状態にあり、警察官による手信号での交通整理が行われていますから、交差点を通過する自動車はそれに従う義務があります。
警察官による手信号の意味は道路交通法施行令で定められており、「警察官が腕を横に水平に上げている場合」は、警察官の腕と平行する道路は青信号、警察官の正面と背面の道路は赤信号を意味します(道交法施行令第4条1項)。
つまり、水平に上げられた腕と直角になる道路を進行する自動車は「停止位置を越えて進行してはならない」状態になるのです。
従って、答えは2の「自分の車が進行する道路の側が赤信号で、交差する側が青信号なので、交差点に進入するのは違反」となります。
それでは、警察官が背を向けていて、腕を上に、垂直に上げている場合はどうでしょうか。
この場合、警察官の身体の左右の道路は黄信号、警察官の正面と背面の道路は赤信号となります(道交法施行令第4条1項)。
今回の問題の交差点で、背中を向けていた警察官が横を向いて腕を上げたときには、黄色信号と同じ意味となります。
警察官による手信号は、停電や故障によって信号機が利用できないときや、事故や工事などで信号機の指示に従うべきでないときに行われます。ドライバーが警察官の手信号を守らなかった場合は、信号無視と同じ道交法7条の違反になります。
近年、日本では自然災害が多発しています。豪雨や地震などによって停電となり、道路の信号機が機能しなくなるケースが増えることも想定されます。そんなとき、交通整理をしてくれる警察官の手信号の意味を正しく理解していれば、戸惑うことなくスムーズに安全に通行できることでしょう。いざというときに慌てないよう、見直しておきたいものです。
道路交通法
(警察官等の交通規制)
第6条 警察官又は第114条の4第1項に規定する交通巡視員(以下「警察官等」という。)は、手信号その他の信号(以下「手信号等」という。)により交通整理を行なうことができる。この場合において、警察官等は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため特に必要があると認めるときは、信号機の表示する信号にかかわらず、これと異なる意味を表示する手信号等をすることができる。
(以下略)
(信号機の信号等に従う義務)
第7条 道路を通行する歩行者等又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(前条第1項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない。
道路交通法施行令
(手信号の意味)
第4条 法第6条第1項に規定する手信号の種類及び意味は、次の表に掲げるとおりとする。手信号の種類 手信号の意味 腕を横に水平にあげた状態(横に水平にあげた腕をおろし、引き続き身体の方向を変えないで交通整理をしている状態を含む。) 1 横に水平にあげた腕(腕をおろした場合においては、身体の正面。以下この表において同じ。)に平行する交通については、第二条第一項の表に掲げる青色の灯火の信号の意味に同じ。
2 横に水平にあげた腕に対面する交通については、第二条第一項の表に掲げる赤色の灯火の信号の意味に同じ。腕を垂直にあげた状態(横に水平にあげた腕を垂直にあげ、又は垂直にあげた腕を横に水平にあげた状態にもどすまでの間の状態を含む。) 1 腕を垂直にあげる前の状態における水平にあげた腕に平行する交通については、第二条第一項の表に掲げる黄色の灯火の信号の意味に同じ。
2 腕を垂直にあげる前の状態における水平にあげた腕に対面する交通については、第二条第一項の表に掲げる赤色の灯火の信号の意味に同じ。備考 第2条第1項の表に掲げる黄色の灯火又は赤色の灯火の信号の意味と同じ意味を表示する手信号の意味に係る停止位置は、同表の備考の3に規定する場所にあつては、手信号を行なつている警察官又は法第114条の4第1項に規定する交通巡視員(以下「警察官等」という。)の1メートル手前の場所とする。
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松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。