高速道路を運転中、急ぎの電話が…。路肩に停車して電話に出たら違反?
あなたの運転、ひょっとしたら違反かも運転歴が長くなると、違反行為かどうかを気にせずハンドルを握ることも多くなりがち。どこが違反にあたる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。今回は、高速道路で運転中、電話がかかってきた際の対応に関するクイズです。
高速道路を運転していたら、急ぎの電話がかかってきました。運転中に電話に出ることは違反だと知っていましたが、停止すれば問題ないと思い、周囲の安全に注意しながら路肩に停車して、10分ほど通話しました。
この運転行為は、以下の選択肢のうち、どれに該当するでしょうか?
- 1.5分以上停車したので違反
- 2.事故や故障などやむを得ない場合の停車ではないので違反
- 3.安全を確保して路肩に停車して通話したので、違反にはならない
-
答え:2. 事故や故障などやむを得ない場合の停車ではないので違反
自動車等の運転中(※)は、傷病者の救護または公共の安全のために緊急やむを得ず行うものを除き、当該自動車を停止せず携帯電話やスマートフォン等で通話したり画面を注視(見つめる)することが禁止されており(道路交通法第71条5号の5)、その違反には罰則があります(同118条1項4号)。違反行為によって事故を起こしたり、後続車等に急ブレーキをかけさせるなどの道路交通に対する具体的な危険を生じさせた場合には、さらに重い罰則も定められています(同117条の4第1号の2)。
- ※自動運転装置の付いた自動車で当該装置を使用している場合を除きます(道路交通法第71条の4の2)
自動車を停止させてからスマートフォンを使用したのであれば、携帯電話等の使用禁止については違反になりませんが、設問の運転者は高速道路を走行中ですから、その停止行為が問題となります。
高速道路を走行する自動車は、「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。」とされています(同第75条の8第1項本文)。ここで禁止された停車には、路肩への停車も含まれます。
故障など、駐停車することがやむを得ない場合に路肩に停車することが認められていますが(同項2号)、かかってきた電話に出ることは、「やむを得ない場合」にはあたりません。
従って、正解は2の「事故や故障などやむを得ない場合の停車ではないので違反」です。
高速道路で電話がかかってきた際は、SA・PAの駐車場など停車や駐車が許された場所に停車してから、折り返すようにしましょう。ハンズフリー機能を使えば通話は可能ですが、通話に気を取られて安全確認がおろそかになる場合は、安全運転義務(同第70条)の違反が問題となる可能性もあります。
ハンズフリーの通話であっても、最小限にとどめることが必要です。
道路交通法
(運転者の遵守事項)
第71条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
(中略)
五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。(略))を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(略)に表示された画像を注視しないこと。
(以下略)
(自動運行装置を備えている自動車の運転者の遵守事項等)
第71条の4の2
(略)
2 自動運行装置を備えている自動車の運転者が当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転する場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該運転者については、第71条第五号の五の規定は、適用しない。
一 当該自動車が整備不良車両に該当しないこと。
二 当該自動運行装置に係る使用条件を満たしていること。
三 当該運転者が、前二号のいずれかに該当しなくなつた場合において、直ちに、そのことを認知するとともに、当該自動運行装置以外の当該自動車の装置を確実に操作することができる状態にあること。
◇罰則
第117条の4 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
(略)
二 第71条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者
(以下略)
第118条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
(略)
四 第71条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反して無線通話装置を通話のために使用し、又は自動車若しくは原動機付自転車に持ち込まれた画像表示用装置を手で保持してこれに表示された画像を注視した者(第117条の4第1項第二号に該当する者を除く。)
(停車及び駐車の禁止)
第75条の8 自動車(これにより牽引されるための構造及び装置を有する車両を含む。以下この条において同じ。)は、高速自動車国道等においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる場合においては、この限りでない。
一 駐車の用に供するため区画された場所において停車し、又は駐車するとき。
二 故障その他の理由により停車し、又は駐車することがやむを得ない場合において、停車又は駐車のため十分な幅員がある路肩又は路側帯に停車し、又は駐車するとき。
三 乗合自動車が、その属する運行系統に係る停留所において、乗客の乗降のため停車し、又は運行時間を調整するため駐車するとき。
四 料金支払いのため料金徴収所において停車するとき。
(安全運転の義務)
第70条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。