渋滞を避けるため、あまり睡眠を取らず疲れが抜けないのに出発した。これって違反?
あなたの運転、ひょっとしたら違反かも運転歴が長くなると、違反行為かどうかを気にせずハンドルを握ることも多くなりがち。どこが違反にあたる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。今回は、渋滞を避けるために睡眠時間を減らして早く出かけるような際のクイズです。
大型連休に車で故郷へ帰省することになりました。休みを取るために前日遅くまで仕事をこなし疲れを感じていましたが、早く出かけないと渋滞に巻き込まれてしまうので、ほとんど寝ずに出発しました。
この行為は、以下の選択肢のうち、どれに該当するでしょうか?
- 1.運転前に8時間以上休息しなかったので違反
- 2.前日に遅くまで仕事をし、疲れたままほとんど寝ずに運転したので違反になる可能性がある
- 3.ほとんど寝ずに運転しても、違反ではない
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答え:2 前日に遅くまで仕事をし、疲れたままほとんど寝ずに運転したので違反になる可能性がある
道路交通法第66条は、「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」とします。条文にある「過労、病気、薬物の影響」は具体例を示すものですから、これらによらなくても「正常な運転ができないおそれがある状態」で運転することは禁じられています。
「過労」とは疲労がたまった状態をいい、正常な運転ができないほどの疲労の蓄積(過労)状態かは、その運転者の心身の状態から判断されます。
この運転者は、翌日に運転することがわかっていたにもかかわらず疲れるまで仕事をし、疲労を回復させるための十分な休息を取らない状態で運転していますから、居眠りや注意力散漫の原因となる「過労」状態にあたる可能性があると考えられます。
よって、正解は2の「 前日に遅くまで仕事をし、疲れたままほとんど寝ずに運転したので違反になる可能性がある」です。
具体的に前日までにどの程度の休息をとれば「過労」でなくなるかは、それぞれの体調や仕事の内容・量にもよるので、どれだけ休めばOKと決まるものではありません。運転前に8時間以上休息していても、正常な運転ができない状態(過労がとれないまま)で運転すれば、本規定の違反になることにも注意が必要です。
睡眠不足は判断力の低下や居眠り運転の原因となり、疲れがちな長距離ドライブと相まって大きな事故を招くおそれがあります。運転する前は常に適切な休息を取ることが必要ですし、運転中に眠気を感じたら、速やかに疲労回復のための休息を取るようにしましょう。
道路交通法
(過労運転等の禁止)
第66条 何人も、前条第一項(※)に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
(以下略)- ※第65条1項 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。