夜間の道路をハイビームで走行中、対向車線に自転車が…。その時、車のライトはどうする?
あなたの運転、ひょっとしたら違反かも運転歴が長くなると、違反行為かどうかを気にせずハンドルを握ることも多くなりがち。どこが違反にあたる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。今回は、夜間のライト点灯に関する問題です。
●夜間、市街地を離れた片側1車線の道路でハイビームをつけて走行中、対向車線にこちらに向かってくる自転車がいることに気づきました。ロービームではその姿が見えなくなるため危険だと思い、ハイビームにしたまますれ違いました。
この行為は、以下の選択肢のどれに該当するでしょうか?
- 1.ロービームに切り替えなかったので違反。
- 2.ヘッドライトを消さなかったので違反。
- 3.見落とすのは危険なので、違反にはならない。
-
答え:1
夜間道路にいる車両等は、前照灯、車幅灯、尾灯などを点灯しなければなりませんが(道路交通法第52条第1項)、他の車両等とすれ違ったり、他の車の直後を走る場合で、前照灯などの照度が強いため他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、灯火を消したり、灯火の光度を減らしたりしなくてはなりません(同条2項)。
ここでいう「交通を妨げるおそれ」とは、前照灯の照度が強いため他の車両等の運転者が眩惑(げんわく)され、運転に支障をきたすおそれがあることをいいますが、事例では反対車線を走行する自転車にハイビームがあたっている状態にありますから、自転車の運転者が眩惑されるおそれがあると思われます。従って正解は1です。
「灯火を消したり光度を減らしたりする操作」については道路交通法施行令第20条が具体的に定めており、すれ違い用前照灯や前部霧灯のある車両等ではこれらを点灯して前照灯を消灯すること(同条1号)、これらのない車両等では、前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすることとされています(同条2号)。夜間走行はハイビームが基本ですが、他車を眩惑するような場合はロービームにする義務があるのです。
100m先を照らせるハイビームは、夜間に周囲の状況を確認するために欠かせません。しかし、他車を眩惑することはトラブルや別の事故の原因につながることもあります。夜間はハイビームを基本に使いながら、対向車などを見かけたらロービームに切り替えるようにしましょう。
市街地など周囲の交通が途切れない場合、ロービームで走行を続けることもあるでしょう。その場合は、ロービームで危険を発見しても対応できるように速度を落とすことも重要です。
道路交通法
第52条 車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。
2 車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。
道路交通法施行令
第20条 法第52条第2項の規定による灯火の操作は、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める方法によつて行うものとする。
一 車両の保安基準に関する規定に定める走行用前照灯で光度が一万カンデラを超えるものをつけ、車両の保安基準に関する規定に定めるすれ違い用前照灯又は前部霧灯を備える自動車 すれ違い用前照灯又は前部霧灯のいずれかをつけて走行用前照灯を消すこと。
二 光度が一万カンデラを超える前照灯をつけている自動車(前号に掲げる自動車を除く。) 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。
(以下略)
松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。