高速道路を走行中、思わぬガス欠に…。これって違反なの?
あなたの運転、ひょっとしたら違反かも運転歴が長くなると、違反行為かどうかを気にせずハンドルを握ることも多くなりがち。どこが違反にあたる運転行為なのかをクイズで再確認しましょう。 今回は、高速道路を走行中、ガス欠になった際のクイズです。
ガソリンの残量が気になっていましたが、途中のSAで給油しようとそのまま高速道路に入って走行中、ガス欠を起こしてしまいました。やむを得ず路肩に停車し、停止表示板を設置してJAFに救援要請をしました。
この行為は、下の選択肢の中でどれに該当するでしょうか?
- 1.発炎筒を使わなかったので違反。
- 2.ガス欠を起こしたので違反。
- 3.やむを得ない行為なので違反にはならない。
-
答え:2
道路交通法第75条の10は、高速道路で運転する際は、運転者にあらかじめ燃料やオイルの量などを点検し、燃料などの不足で走行できなくならないようにしておくことを義務付けています。この義務は、高速道路での燃料などの不足による走行不能とそれに続く二次的な事故の発生を防止するためのものです。ここでいう点検は、日常点検整備(道路運送車両法第47条の2)でよいとされており、予想外の渋滞のためにガス欠になった場合などは義務違反にならないとされていますが、今回は、ガソリンの量に心配があったのにガソリンを補充せずに高速道路を走行しています。したがって、正解は2です。
なお、道路交通法75条の10の点検と措置の義務に違反した結果、高速道路の本線車道等に自動車を停止させた場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金、過失による場合には10万円以下の罰金という罰則があります(道路交通法第119条1項19号、同条3項)。
高速道路では、SA・PA(主にSA)にガソリンスタンドが設置されています。しかし、すべてのSA・PAにあるわけではなく、ガソリンスタンドのあるSA・PAまで非常に長い距離を走らなければならない区間もありますし、夜間は閉店しているガソリンスタンドもあります。ガス欠による高速道路上の停車は、たとえ路肩に停止していても事故の原因になることがあり、大変危険です。高速道路では特に、燃料の残りに余裕があるうちに給油するようにしましょう。
道路交通法
第75条の10 自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。
第119条 次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
(略)
十九 第75条の10(自動車の運転者の遵守事項)の規定に違反し、本線車道等において当該自動車を運転することができなくなつた者又は当該自動車に積載している物を当該高速自動車国道等に転落させ、若しくは飛散させた者
(略)
3 過失により第1項(中略)第十九号(中略)の罪を犯した者は、10万円以下の罰金に処する。
道路運送車両法
(日常点検整備)
第47条の2 自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。
2 次条(※注 定期点検整備の規程)第1項第一号及び第二号に掲げる自動車の使用者又はこれらの自動車を運行する者は、前項の規定にかかわらず、一日一回、その運行の開始前において、同項の規定による点検をしなければならない。
3 自動車の使用者は、前二項の規定による点検の結果、当該自動車が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態又は適合しない状態にあるときは、保安基準に適合しなくなるおそれをなくするため、又は保安基準に適合させるために当該自動車について必要な整備をしなければならない。
松居英二
まつい・えいじ 弁護士。(公財)日弁連交通事故相談センターの委員・相談員として交通事故に関する法律相談、損害賠償額算定基準の作成などに参加。「JAF Mate」誌では2004年から2017年まで「クルマ生活Q&A」の法律相談を担当。