雨の夕暮れを走行するクルマの写真
文・撮影=koensha / 監修=島崎 敢

薄暮時はなぜ減速が必要? 停止距離と危険スポットから学ぶ安全運転のコツ

歩行者を見つけてからでは遅い。停止距離と「先回り減速」のポイントを解説
島崎 敢

薄暮時は歩行者や自転車の発見が遅れやすく、ブレーキ操作も遅れがちです。大切なのは、危険を見つけてから減速するのではなく、「見えている範囲で止まれる速度」まであらかじめ落として走ること。停止距離の基本と、夕暮れ時に減速すべき場所を紹介します。

目次

薄暮時は「見つけてからブレーキ」では遅い

車の停止距離イメージ写真

薄暮時は周囲が見えにくく、危険への対応が遅れがちです

車の停止距離イメージ写真

住宅街では、横断歩道や歩行者に注意しましょう

薄暮時は周囲が見えにくく、危険への対応が遅れがちです

住宅街では、横断歩道や歩行者に注意しましょう

車の「停止距離」は、危険を認知してブレーキを踏みブレーキが利き始めるまでに進む「空走距離」と、ブレーキが利き始めてから停止するまでの「制動距離」の合計です。

日本交通安全教育普及協会のデータでは、乾いた舗装路面で急ブレーキを踏んだときの最短の停止距離は30km/hで約14m、40km/hで約22m、60km/hで約44m。速度が上がるほど停止までに必要な距離は大きく延びます。雨天時は停止距離がさらに長くなるため、薄暮時は危険を見つけてからではなく、あらかじめ速度を落としておくことが重要です。

停止距離イラスト

停止距離は空走距離と制動距離の合計で、速度が上がるほど長くなります

1. 薄暮時は歩行者や自転車の発見が遅れがち
2. 発見→判断→ブレーキ操作にも時間がかかる
3. その間にも車は進む
4. だから「危険を見つける前に減速」が必要

急ブレーキの正しい操作方法についてはこちらの記事を参考に!

【専門家解説】「見つけてからブレーキ」では間に合わない

見えにくくなる注意ポイント画像

ヘッドライトの照射範囲外は、危険を発見しにくくなります

見えにくくなる注意ポイント画像

見通せる範囲で停止できるよう、速度を抑えましょう

薄暮時は、ヘッドライトが照らしていない範囲が、見えているつもりでも実際には見えにくくなっています。そのため歩行者や自転車が、日中に比べて急に視界へ飛び込んでくるように感じられます。
これを避けるには、以下のような対策が可能です。まず十分に速度を落とすこと。そのうえで「このあたりから人が出てくるかもしれない」と予測すること。加えて、危なそうな場所では、ブレーキペダルの上に足を乗せて構えておくこと。この「構えブレーキ」をしておけば、アクセルから踏み替える時間が短縮できます。(監修:島崎 敢先生)

薄暮時はこんな場所で“先回り減速”

秋や冬の薄暮時は日没が早まるため、家路を急ぐ学生や会社員、買い物客など人の移動のピーク時間と重なります。「見えにくい時間」と「人が多い時間」が重なることが危険を高める要因です。“先回り減速”が必要な場所を知っていれば安全につながります。

1. 横断歩道の手前ではアクセルを戻し減速

薄暮時は、学生や会社員の帰宅時間帯と重なりやすくなります

薄暮時は、学生や会社員の帰宅時間帯と重なりやすくなります

横断歩道に近づいたら、手前から減速しましょう

横断歩道に近づいたら、手前から減速しましょう

薄暮時は、学生や会社員の帰宅時間帯と重なりやすくなります

横断歩道に近づいたら、手前から減速しましょう

横断歩道では、歩行者が見えてからではなく、手前から速度を落としておきましょう。薄暮時は歩行者の発見が遅れやすいため、すぐ停止できる速度で走行することが大切です。

2. 駐車車両の陰に歩行者がいることを前提に走る

駐車車両が並ぶ道路

駐車車両の陰は死角になるため、歩行者の飛び出しに備えましょう

駐車車両や渋滞車両の陰は、歩行者や自転車が見えにくい死角です。「誰かが出てくるかもしれない」と考えて駐車車両や渋滞車両があれば、その手前で止まれる速度まで減速し、横断歩道が見通せない場合はいったん停止。可能であれば十分な間隔を取りましょう。

3. 交差点では右左折時に十分減速する

交差点

交差点では、右左折時の歩行者や自転車を見落とさないよう注意しましょう

交差点での右左折時は要注意。歩行者や自転車の巻き込み、右折時は対向車に気を取られて歩行者に気づくのが遅れる場合があります。暗さが増す薄暮時に安全を確保するためにはスピードを落とし、より慎重に周囲の安全を確認することが大切です。
また、薄暮時はまだライトを点けていない車や自転車も少なくありません。そういった車両は見落としやすいので、減速だけではなく、いつもより入念に目視確認をしましょう。

4. バス停・駅・商業施設の周辺では速度を抑える

バス停・駅・商業施設の周辺画像

バス停や駅、商業施設の周辺では、歩行者の動きが予測しにくくなります。停車中のバスの前後から横断する人にも備え、速度を控えましょう

5. カーブや坂の先が見えないときは、見える範囲で止まれる速度で走る

カーブや坂の先が見えないスポット

坂の頂上では、その先の状況を予測して速度を抑えましょう

カーブや坂の先が見えないスポット

坂のカーブでは、先の状況に注意して走行しましょう

坂の頂上では、その先の状況を予測して速度を抑えましょう

坂のカーブでは、先の状況に注意して走行しましょう

カーブや坂の頂上など見通しの悪い場所では、見えている範囲内で停止できる速度に落としましょう。

6. 自分の車の安全運転支援機能が「何に反応するか」を知っておく

衝突被害軽減ブレーキは、あくまで最後のバックアップです。しかも、歩行者に反応しない車種、夜間の歩行者には対応していない車種があります。カメラでセンシングしているシステムは、人間の目と同じように薄暮時や夜間には性能が落ちることもあります。自分の車の安全運転支援機能が何にどこまで対応しているのか、取扱説明書で一度確認しておきましょう。そのうえで、機能が働かないことを前提に速度を調整することが基本です。

薄暮時の先回り減速チェックリスト


□ 薄暮時は時間に余裕を持って走る
□ 横断歩道の手前では早めに減速
□ 駐車車両や、見通しの悪い交差点・脇道から人が出てくることを前提に走る
□ 右左折時は十分に速度を落とす
□ バス停・駅・商業施設の周辺では速度を控える
□ 見通しの悪い場所では、見える範囲で止まれる速度で走る
□ 街灯のない暗い場所ではさらに速度を落とす
□ 自分の車の安全運転支援機能の限界を知っておく

【専門家解説】薄暮時は「速度が遅く感じる」

薄暮時に起きる視覚の変化のうち、速度と直接関係するものが2つあります。
ひとつはコントラストの低下です。周囲が暗くなると、背景と歩行者との明暗の差が小さくなり、歩行者の発見が遅れます。暗い色の服の歩行者では特に顕著になります。
もうひとつが、速度感覚の低下です。人は、視界の周辺を流れていく景色から自分の速さを感じ取っています。ところが暗くなると、ヘッドライトの照射範囲の外がほとんど見えなくなり、この「景色の流れ」の情報が乏しくなります。その結果、実際より遅く走っているように感じてしまう。速度計を見ずに「これくらい」と感じている速度は、薄暮時には実際より速くなりがちです。

発見は遅れ、しかも速度は感覚より出ている。この2つが重なるのが薄暮時です。意識して速度計を確認し、「感覚では少し遅すぎるくらい」でちょうどよいと考えてください。(監修:島崎 敢先生)

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島崎 敢

しまざき かん 1976年東京都生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックドライバーなどで学費を貯め、早稲田大学大学院に進学し学位を取得(博士・人間科学)。同大助手、助教、防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学特任准教授、近畿大学准教授を経て、2026年より近畿大学教授。主幹総合交通心理士の他、全一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父。著書に『心配学〜「本当の確率」となぜずれる?〜』(光文社新書)等。「アベマプライム」、「首都圏情報ネタドリ!」、「ビートたけしのTVタックル」などメディア出演も多数。トラックドライバー応援Podcast「プロフェッショナルドライブ」を配信中。
島崎 敢公式サイト

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