高齢ドライバーのヒヤリハット

EV、未だ残る静音の危険

シニア世代の思い込み運転を考える
2022.03.15

文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

2022.03.15

文=岩越和紀(NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事長)/イラスト=平尾直子

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高齢者の運転に詳しい専門家が、高齢ドライバーにありがちな思い込み運転やヒヤリハット体験を、同じ高齢者の立場からわかりやすく解説するこのコラム。今回は最近増えてきた電気自動車(EV)やハイブリッド車など、走行音が静かな車による危険。音が聞こえづらくなってきた高齢者にはとくに注意が必要だ。

鼻先をEVがかすめる!

閑静な住宅街のT字路を進行し右折。信号はないが一時停止標識がある。自転車などの飛び出しが多く、いつも緊張する場所だ。ここを通るときは、停止線で止まり、念のため、耳を澄まし、音をしっかり聞くようにしている。こちらの車はアイドリングストップ機能を搭載しているので、車が近づけば、すぐにわかるからだ。この日も集中して、音を確かめる。エンジン音はない。慎重に、ゆっくりと車の鼻先を交差点に進めていくと、左からシューッという音と同時に車が出現した。慌ててブレーキを踏む。電気自動車(EV)だった。

エンジンを使わず、モーターのみで走行可能なEVやハイブリッド車は、歩行者が車両の接近に気づきにくいことから、2018年3月からの新車には、低速走行時の注意喚起のため、車両接近通報装置が義務化(継続生産車は2020年10月から)されたが、まだ、義務化以前の車も走っている。住宅街の交差点、静かなる危険への対処、“高齢脳”へまた一つの課題。

この車両接近音だが、こちらにも注意が必要だ。その音色がメーカーごと車ごとに違うのだ。高齢者としても統一されることを望むが、現状では、住宅街など死角の多い交差点などで聞きなれない音と出会ったとき、EVが来ているのでは?と疑う注意深さが必要でもある。なお、車両接近音に関しては各メーカーのウェブサイトやYouTube等で確認しておくこともできる。

指をさす男性

EV時代が到来。エンジン音で危険を察知できないことも。

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