文=山岸朋央 / 撮影=乾 晋也

点滅信号、意味を理解しないと事故の危険も

目次

※写真はイメージです。車種や撮影場所は記事内容と関係ありません。
「JAF Mate」2019年6月号で掲載した「事故ファイル」の記事を再構成しています。役職・組織名などは当時のものです。

見かけることの少ない点滅信号。その意味を理解せず進入すると、出会い事故の原因にもなる。過去の事故事例から、事故の予防法を探る。

赤や黄色の点滅信号、意味を覚えていますか?

交通の安全と円滑を確保するための信号は、当然ながら、ドライバーや歩行者などが、ルールを正しく理解し、守らなければ意味を成さない。たとえば、車道にある赤と黄色の点滅信号の意味を知っている人がどれほどいるだろうか。また、知っている人でも、実際にルールを順守している人がどれだけいるのか。

昨年夏のある日の早朝、千葉県北西部で1件の死亡事故が発生した。軽自動車と大型トラックが、市道交差点で出会い頭に衝突したのだ。出会い頭衝突といえば、信号機のない交差点での事故が、全体の65%以上(2018年中・警察庁交通局調べ)を占めるが、今回の事故は信号機のある交差点で起きている。ただし、設置されていた信号機は、通常の「青・黄・赤」の3色の灯火ではなく、事故当時は黄と赤の灯火が点滅する信号だったのである。

千葉県警交通部によると、事故現場は片側1車線の交差点で、一般的な三灯式信号が設置されていたのだが、事故当時は、交通量が大きく減少する夜9時から翌朝6時までの9時間に限り、赤色と黄色の点滅信号になる設定だったという。

「大型トラックが通行していた道路側の信号が黄色の点滅で、軽自動車側の信号は赤の点滅でした。大型トラックと軽自動車の出会い頭衝突ですので、その被害は軽自動車に集中し、大破した軽自動車の男性ドライバーは、頭部などを強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認されました」(千葉県警交通総務課・松山一好課長補佐)

交差点の周辺は工場や倉庫などが多く、そもそも交通量が大幅に減る時間帯に発生した事故ということもあり、目撃者探しは難航。半年以上たった今年3月現在も、捜査は続いているという。しかし、点滅信号が事故原因に関係していることは警察も否定しない。

道路交通法施行令では、対面する信号が「黄色の灯火の点滅」の場合、「歩行者及び車両等は、他の交通に注意して進行することができる」と定められている。一方、対面する信号が「赤色の灯火の点滅」の場合、「歩行者は、他の交通に注意して進行することができる」が、「車両等は、停止位置において一時停止しなければならない」と定められている。

事故現場となった交差点は、道路沿いの敷地内に植えられた樹木や看板などによって非常に見通しが悪かった。赤色点滅側の軽自動車が、停止線の手前で一時停止するのはもちろんのこと、黄色点滅側の大型トラックも、交差道路の様子が見通せるところまでは、減速あるいは徐行するなどして、安全が確認できてから交差点内に進入すべき状況だったのである。どちらに非があるのか、事故の詳細や原因が不明だとしても、互いにルールをきちんと守ってさえいれば、十分に防げた事故であったことは間違いないだろう。

しかし、対面の信号が点滅しているとき、「点滅しているということは、交通量が少なくて、交差車両がほとんど来ないから、安心して走れる」と、根拠のない安心感を抱きながら、一時停止も他の交通に注意することもなく、交差点を通過しているドライバーも少なくない。また、「赤色の点滅は徐行して進め」だと、間違って覚えているドライバーや、さらには、点滅信号の意味やその存在さえも知らないというドライバーも珍しくない。

点滅信号のルールは自動車教習所で必ず教わるものだが、場合によっては、免許を取得してから実物を目にすることがなく、ルールを失念してしまったというドライバーがいても不思議ではない。この間違いや失念は、事故に直結する危険な事態なのだ。

点滅信号があったら危険な交差点と考えよ

警察庁も、老朽化した信号機の更新や設置基準の見直しを進めるなか、2015年12月に「一時停止の交通規制等の対策により代替が可能な場合は、一灯点滅式信号機などの撤去を検討するものとする」と通達した。この通達もあり、全国に約21万基ある信号機のうち、約3%といわれた一灯点滅式信号は現在、各地で撤去が進んでいる。

「千葉県内には、一灯点滅式信号はなかったのですが、県内166か所で、交通量の少ない時間帯に点滅に切り替えていた三灯式信号を、2‌01‌8年中にすべて通常の3色灯火に戻しました。今回の事故現場も含め、現在、点滅信号は県内に1基もありません」(同県警交通規制課・小川幹人課長代理)

一方、一灯点滅式信号の廃止が進む愛知県などでは、設置されていた点滅信号が、ほとんどのドライバーにルールが浸透している「止まれ」の標識や標示の一時停止規制に切り替えられている。

「そもそも、信号とは危険がある場所だからこそ設置されたものなのです。事故を未然に防ぐためには、ルールの順守はもちろんですが、点滅信号と対面した場合は、とても危険な場所なのだという意識を持ち、より細心の注意を払った運転を心がけることが肝要です」(前出・松山課長補佐)

交通量の少ない道路や時間帯にこそ、事故の危険が潜んでいることを、ドライバーは忘れてはならない。

点滅信号での走行シーン

  • 対面する信号が黄色の点滅でも、「自分が優先」と考えるのは危険。「横の道から、車が出てくるかもしれない」と想像しながら、安全第一で運転しよう。

まとめ

信号が赤点滅なら必ず一時停止を。黄色点滅でも、安全が確認できなければ徐行か一時停止をすること。

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