懐かしの「昭和カルチャー探検隊」

「おどろおどろしくて怖かった…サイボーグハンド」鈴木おさむ氏と振り返る80’s大映ドラマ

2022.07.06

文=忍 章子

2022.07.06

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1980年代、日本のテレビ界では、とあるテレビドラマ制作会社が作るドラマに注目が集まりました。
その制作会社とは、映画会社・大映から独立した「大映テレビ」。
手がけた作品は“大映ドラマ”と呼ばれ、大きな話題となったのです。
そして昨今、放送作家・鈴木おさむさんが脚本を手がけたドラマが放送されると、ツイッターには「大映ドラマな雰囲気にハマる予感♡」「大映ドラマか、韓流か、はたまた昼ドラか!」「令和版・大映ドラマの出現か!?」といったつぶやきがあふれました。
今回は、そんな大映ドラマを大検証!
前編・後編にわたり、大映ドラマファンでもある放送作家・鈴木おさむさんとともに当時の作品を振り返ります。

鈴木おさむ

すずき・おさむ 1972年生まれ。放送作家。多数の人気番組の企画・構成・演出を手がけるほか、エッセイ・小説や漫画原作、映画・ドラマの脚本の執筆、映画監督、ドラマ演出、ラジオパーソナリティ、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

なんか変なことばっかり次々と起こる

「『奪い愛、冬』を作るとき、プロデューサーさんから“ドロドロの不倫ものだけど、なんか変なことばかり起きるドラマが作りたい”と言われました。この言葉が、雷が落ちたように、ものすごくしっくりきたんですよね。というのも、僕は子供のころ、大映ドラマを夢中で観ていました。『スチュワーデス物語』『スクール・ウォーズ』、そして『ポニーテールはふり向かない』。どれも展開が急激で、まさに“変なことばっかり起きる”んです」と、鈴木さん。

放送作家の鈴木おさむ

鈴木さんが脚本を書いた『奪い愛、冬』(テレビ朝日・2017年)では、「足がうずくの〜」と、事件に巻き込まれて動かなくなってしまった右足を差し出し、夫に迫るヒール役が出現し、『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日・2020年)では、ザーザーの雨に降られながら崖の上から「オレを信じろ! 走れ!」とヒロインに檄(げき)を飛ばす熱血漢や、「アユ、負けない!」と決意を固め、ペットボトル10本を背負いながら激走するヒロイン、そして現れる虹……などなど、大映ドラマを観て育った世代には、かつての雰囲気を感じずにはいられないシーンが随所に散りばめられている。

「大映ドラマのように作ったわけではないのですが、子供の頃に観ていたので、そのエキスが僕の中にあったのだと思います」

子供の頃に鈴木さんが大映ドラマから得た“エキス”とは、いったいどのようなものなのか。じっくり聞いていくことにしよう。

想像のはるか斜め上をいっていた、スター・堀ちえみの芝居

鈴木さんと大映ドラマの出会いはこうだ。

「親や親戚が“赤いシリーズ*”をよく観ていました。でも、“赤いシリーズ”は、なんだか、子供は観ちゃいけないものという感じがすごくあったことを覚えています。僕が小学校5、6年生の頃は、中学・高校の校内暴力が社会問題になっていました。不良だとか暴走族のニュースをテレビでよく目にしていて、そこにきて、これは大映ドラマではないけれど『積木くずし』。そして『不良少女とよばれて』が放送。『不良少女とよばれて』は、観てはいたけど、話が大人っぽすぎてついていけなかった記憶があります。学校で『東京流星会会長だ〜!』ってマネをしたりしていましたけどね(笑)」

*赤いシリーズ……1974年から1980年にかけて制作・放送された作品群のシリーズ名。タイトルがいずれも「赤い」から始まる。

仲間から管楽器の笙を受け取るヒロイン

写真提供:TBSテレビ「不良少女とよばれて」
大映テレビ初となる“実話”をもとに描かれたドラマ『不良少女とよばれて』(TBS・1984年)。母親の一言がきっかけで非行に走った笙子(しょうこ)(伊藤麻衣子)が、ひとりの青年(国広富之)の愛によって更生する軌跡を描く。劇中、笙子の率いる「相模悪竜会」と朝男(松村雄基)率いる「東京流星会」はたびたび抗争を繰り広げた。

「僕がしっかりちゃんと観た大映ドラマは『スチュワーデス物語』(TBS・1983年)が最初です。姉が堀ちえみさんの大ファンで、堀ちえみさんが主演するとあって、家族みんなで観ました。夜8時の放送だったから、当時、小学5年生だった僕もギリギリ観られる時間帯で、同級生たちもみんな観ていました」

“花の82年組”の一人である、スター・堀ちえみ人気に加え、幅広い世代が観られる時間帯での放送ということも手伝い、『スチュワーデス物語』は瞬く間に世間の注目を集めた。その話題の中心となったのは……。

「小学生が観ていてもわかるくらい、堀ちえみさんの芝居がめちゃくちゃヘタだったんですよね。ストーリーうんぬんより、そっちが先に話題になった。みんな、堀さんの芝居にツッコミを入れながら観ていませんでした? お笑い番組でも、早々に芸人さんがパロディにしていました。『スチュワーデス物語』の制作陣にはきっと、ド旬なアイドルを起用して、幅を広く見せようという気持ちがあったと思うのですが、堀さんの芝居は、おそらくまったくの想像外。もしも堀さんの芝居がうまかったら、『スチュワーデス物語』はきっと、あんなに話題になっていなかったと思います」

「グギギギギギギギギギギ、ヒロシ……」のおどろおどろしさ

『スチュワーデス物語』でインパクトが強すぎた記憶といえば、堀ちえみさん演じる千秋の伝説的なセリフで流行語にもなった「ドジでノロマなカメ」ともうひとつ、教官・浩(風間杜夫)の婚約者、真理子(片平なぎさ)の存在だ。

「子供ながらに、ものすごく怖かった。『グギギギギギギギッ……』とゾクゾクする音を立て、手袋をとると現れるサイボーグハンド。そして、その手を浩に突きつけて、『あなたのせいでピアノが弾けなくなったのよ!』って、もう、うわぁぁああ、どうすんの……どうすんの……、どうなっちゃうのよ……って。もう単純に怖かった」

乗客員がスチュワーデスに向かって手を見せる

写真提供:TBSテレビ「スチュワーデス物語」
ピアニストを目指していた真理子(片平なぎさ)は、スキーで浩(風間杜夫)と衝突し、手を粉砕骨折して義手になってしまうという設定で、浩に生涯にわたる責任を迫り続け、浩と恋心を抱き合う千秋(堀ちえみ)への嫉妬に狂い、執拗(しつよう)なまでの嫌がらせをし、千秋と浩の間に暗い影を落とす。

鈴木さんは当時、真理子の醸すおどろおどろしさを、恐怖心120%で観ていたそうだが、大人になってあらためて『スチュワーデス物語』を観ると、真理子は物語の中におけるフックとして「とてもよくできている」と言う。

「フック、“ひっかかる”というのは、ポジティブに言うと“気になる”、ネガティブに言うと“鼻につく”。2つの意味がありますが、真理子は、ただただ恐ろしいのだけど、とても気になる存在でしたよね」

たしかに、真理子が気になって仕方なかった人も多かったのでは? 毎回、真理子の登場を期待して、恐ろしがりながらも「グギギギギギギギ……ヒロシ」を待ち望んだ記憶がある。
そしてもうひとつ、長きにわたりテレビ番組の制作に関わっている鈴木さんが感嘆するのは、ドラマのロケーション。

「脱出訓練のシーンや、オープニングで滑走路を歩くところなど、日本航空の全面協力でドラマを制作できたというのはすごいと思います。本物の訓練所や客室モックアップで撮影していたそうです。当時は、特段気にもならず、ふつうのことだと思って観ていましたけど、今、観ると本当にすごいことだなと思います」

航空ドラマの制作には欠かせない、航空会社の協力。調整に多大な労力を要するため、なかなか航空ドラマは作れないといわれている。格納庫の実機や社員寮、紺のワンピースと赤のベルトを組み合わせた制服なども、当時の日本航空のものが使用されていた。

「それとオープニングで流れる、麻倉未稀さんが歌う『WHAT A FEELING〜フラッシュダンス〜』が格好よかったですよね。大映ドラマではよく、洋楽のカバー曲を主題歌にしていたけど、『WHAT A FEELING』は、映画『フラッシュダンス』ですでに大ヒットしている曲。それを自分たちのドラマに使ったっていうのもおもしろいなと思いますね。『フラッシュダンス』のシンデレラストーリーと『スチュワーデス物語』に重なるイメージがあったんでしょう」


放送当時、夢中で観ていた作品を、今、あらためて振り返ってみると、懐かしい記憶がさまざまによみがえってきますね。後半は、“あの”ドラマを検証していきます!

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