懐かしの「昭和カルチャー探検隊」

バモスホンダ、フロンテクーペ、ミニカ、フェローMAX…オシャレでゼイタクな軽自動車現る

昭和のすてきカワイイ軽自動車 1970年代

2023.02.07

文=島崎七生人

2023.02.07

文=島崎七生人

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「人類の進歩と調和(Progress and Harmony for Mankind)」をテーマに大阪万博が開催されたのは昭和45(1970)年のことだった。ここで月の石やテレビ電話、人間洗濯機までをも見せられ、おそらく会場を訪れた人はみな「未来はもう始まっている」と実感させられたように思う。というより、あの万博を境に前と後とでは世相がガラッと変わった……というのが、この記事の打ち合わせの際の担当編集さんの説。

なるほど確かにそうで、銀座の歩行者天国も昭和45(1970)年に始まっており、翌年になるとマクドナルドの日本第1号店の出店があったり、インスタントラーメンがカップ入りの「ヌードル」と呼ばれるようになり、それをプラスチックのフォークで歩きながら食するようになった。世の中全体が新しい次のフェーズに入ったかのようだった。
前編で紹介した1960年代の黎明期に続き今回は、そんな1970年代に生まれた新しいフェーズの軽自動車を振り返ってみよう。

島崎七生人のプロフィール画像

しまざき・なおと モータージャーナリスト 、 AJAJ会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。1958年、東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に勤務。1991年よりフリーランスでの活動を始め、さまざまな自動車専門誌やWebでも執筆活動を展開。クルマに対しては、あくまでも一般ユーザーの視点で接し、レポートすることを信条としている。クルマ以外にオーディオやカメラなどにも造詣が深く、1970年代から集めたカタログの山に頭を悩ませる今日この頃。

モーレツからビューティフルへ

メーカー各社は1960年代(昭和35~44年)にそれぞれ初の軽乗用車を市場投入し、70年代に入ると今度はその進化・発展版を世に送り出し始めた。特にホンダ・Z(昭和45年)、スズキ・フロンテクーペ(昭和46年)やダイハツ・フェローMAXハードトップ(昭和46年)は、軽自動車でありながらスペシャルティカー(※)のジャンルに果敢に挑んだ。

  • スペシャルティカー……スポーツカーのような外見を持ちながらも、快適性や居住性を重視したスタイル。

1970 ホンダZ GT

1970 ホンダ・Z GT

そんな70年代的“スタイリッシュさ”が注目されたなかでも、ホンダ・Zは当時のNIII360(N360の発展型)をベースに仕立てたモデルで、「水中メガネ」と呼ばれた特徴あるリヤハッチのデザインが見どころ。

さらにデビューわずか2年後の昭和47(1972)年になると、ベース車がNIIIからライフに切り替わったことに伴いマイナーチェンジを実施。ホイールベースが80mmも伸ばされたほか、クーペ形状だったボディもサイドウインドーからセンターピラーを取り去ったハードトップ(※)へと華麗に変身させたのだった。軽自動車初の5段マニュアルミッション、前輪ディスクブレーキ、ラジアルタイヤなどクラスを超えた装備も追加された。

  • ハードトップ……センターピラー(サイドウインドー中央の窓柱)を持たないスタイル。

1971 スズキ・フロンテクーペ

1971 スズキ・フロンテクーペ

さらに当時のイケイケなムードを象徴するのがスズキのフロンテクーペ。このモデルは昭和45(1970)年登場の「スティングレイルック」といわれた2代目フロンテをベースとしており、ホンダ・Zと同様に軽自動車のスペシャルティカーとして誕生。しかも、イタリアが誇るカーデザイナーの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロがスタイルを手がけたクルマだったという点は特筆に値する。

実はフロンテクーペ登場の少し前、昭和44(1969)年に発売された商用車スズキ・キャリイもジウジアーロが手がけており、それに続く作品ではあったが、なんとも贅沢(ぜいたく)で夢のような事態に、当時のカーマニアは目をくぎ付けにさせられたのだった。

1971 ダイハツ・フェローMAXハードトップ

1971 ダイハツ・フェローMAXハードトップ

一方でダイハツ・フェローMAXハードトップは、昭和45(1970)年に登場したセダンをベースに翌年に登場。軽自動車初のハードトップ(ホンダ・Zがマイナーチェンジでハードトップ化されたのは昭和47年のこと)であり、このクルマもクラスを超えた贅沢さを体現した一台だった。なにしろレザートップなる、ルーフ(屋根部分)をレザー貼り仕様にした、当時の小型車ではやりのスタイル設定もあったほどだ。

1971 三菱ミニカ・スキッパー

1971 三菱ミニカ・スキッパー

スペシャルティカー分野ではもう一台、三菱ミニカ・スキッパーも忘れられない。ミニカ72(ミニカ70のマイナーチェンジモデル)の2ドアクーペ版で、なだらかな傾斜をもつシルエットや後部のサブウインドーが特徴だった。

70年代を彩った個性派たち

そのほか、いかにも1970年代風の軽自動車版“サイケ・ルック”ともいえたモデルに、どちらも昭和47年登場のマツダ・シャンテとスバル・レックスがあった。

1972 マツダ・シャンテ

1972 マツダ・シャンテ

シャンテは前作キャロルが昭和45(1970)年8月でカタログから消えた後、およそ2年のブランクを経て登場したモデル。当時、マツダ独自のロータリーエンジン搭載も模索されたようだったが、残念ながらそれは実現しなかった。それでも、未来的なスタイルとロングホイールベースによる豊かな室内空間など、独特の個性を感じさせた。

1972年 スバル・レックスGSR

1972年 スバル・レックスGSR

スバル・レックスはR2の後継車種として登場したモデルで、車名はラテン語で“王様”の意味をもつ。当時のスバル小型車である初代レオーネの縮小版といったスタイルは、よくいえばスポーティでもあったが、必ずしも市場で評価されたとはいえなかった。しかし昭和50(1975)年に軽自動車初の排ガス規制(昭和51<1976>年実施)に適合するクルマとして送り出され、翌年には550ccの新しい軽自動車規格に合わせたレックス5に移行するなど、息の長いモデルとなった。

1970 バモスホンダ

1970 バモスホンダ

70年代的なファッションといえばバンダナやベルボトムのジーンズなども思い浮かぶが、そうした時代のトラックとして登場したクルマにバモスホンダがあった。ルーフとドアがすべて取り払われた実にユニークなスタイルのクルマで、一見すると遊びに徹したレジャー車にしか見えない。しかし当時の東京モーターショーで配布されたパンフレットでは商用車版に掲載があり、ああ見えて実はレッキとしたトラックだったのだ。

1972 ホンダ・ライフ・ステップバン

1972 ホンダ・ライフ・ステップバン

同じように、ライフ・ステップバンも背の高い独特のスタイル(後にスズキ・ワゴンRで「おや!?」と思わされた)を売りとしたレッキとした商用車。ライフ・ピックアップの車名でボディ後半を荷台としたモデルも存在した。

前後編2回にわたってお送りしてきた昭和のすてきカワイイ軽自動車だが、本稿で取り上げた車種以外にも、実は中小の自動車メーカーが手がけたモデルも多く存在する。昭和45(1970)年に市場から撤退した愛知機械工業のコニー360など、当時をご存じの方には懐かしい車名かもしれない。昭和は遠くなりにけり……険しい今の時代からすると、なおさらそう感じる。
昭和の風景の中でけなげに走っていた軽自動車の姿は、それぞれ個性にあふれ、懐かしさとともに愛おしく感じる。 

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