伊良湖(渥美半島)~鳥羽などにある「海上国道」って知ってますか?
道は地上にあるだけじゃない。海の上にだって道はあるんです!
今回のテーマは「海上国道」です。国道といえば地域の主要な幹線道路であることが多いのですが、中には歩行者しか通行できない階段の国道やアーケード商店街となっている国道など、風変わりなものもあります。今回紹介する国道42号も経路上に海上区間のある、ちょっと風変わりな国道の一つです。 「日本と世界の道の雑学」では道路にスポットを当てたお話をお届けします。これまで何げなく利用してきた道路にちょっぴり興味を持っていただければ嬉しいです。
海の上を通る「海上国道」ってどんな国道?
海の上の国道「海上国道」
国土交通省によると、道路は湖や海などで隔てられた区間に橋や海底トンネルなどの構造物がなくても、フェリーなどで補完されて一本の交通系統として機能していればちゃんと一本の道路として認められるそうです。もちろん国道も例外ではなく、中でも経路上に海を渡る区間のある国道を一般的に「海上国道」と呼んでいます。
国道42号の海上区間を利用してみました
今回利用したのは、国道42号の海上区間に就航する伊勢湾フェリー
伊勢市内の交差点。フェリー経由で伊良湖岬方面へ向かう案内表示
国道42号は静岡県浜松市中央区を起点に、太平洋に沿って紀伊半島をぐるりと回り、和歌山県和歌山市へと至る延長約520kmの路線です。路線の途中には伊勢湾があり、渥美半島側と紀伊半島側の道路が分断されています。
ただし、この分断された区間の両岸を伊勢湾フェリーがつないでいるため、連続した一本の国道となるのです。海上区間は愛知県の伊良湖(いらご)旅客ターミナル(道の駅 伊良湖クリスタルポルト)から三重県側の鳥羽旅客ターミナルまでの約23km。約1時間の航路です。
ちなみに陸路で伊勢湾沿いを走行すると軽く200kmを超えるので、かなりのショートカットとなります。
鳥羽港(鳥羽フェリーターミナル)
伊良湖港(伊良湖旅客ターミナル)
今回、鳥羽港から伊良湖港までの区間をフェリーに車を載せて利用してみましたが、ドライバーの立場で考えれば、移動の途中で1時間程度の休憩がとれるのは長距離移動の際には大きなメリットだと感じます。幸い今回は天候にも恵まれたこともあり、デッキで感じる風もとても気持ちよくリフレッシュできました。
デッキで潮風を感じるもよし、シートでくつろぐもよし、ゴロリと雑魚(ざこ)寝するもよし、の1時間弱
便数も1日8~9本(2024年1月現在)と十分で、旅客定員も最大で500人程度、乗用車の積載台数は最大43台または52台(船舶によって異なる)と余裕があって快適です。なにより紀伊半島の国道42号を走り、フェリーに乗っても実はその航路こそが国道42号。そして下船した先にまた国道42号の標識があるのはちょっと不思議な感覚でした。ちなみに乗船中にEVの充電等はできません。
伊良湖港で下船したら左が国道259号、右が浜松へ向かう国道42号。実は伊勢湾航路は2本の国道の重用区間でもありました
実は前日には逆ルートの、伊良湖港から鳥羽港に向かう便にも乗船する予定だったのですが、こちらは強風のため欠航となり陸路での移動となってしまいました。運航状況はフェリー会社のウェブサイトで事前に確認はできるものの、このあたりが海上国道ならではの弱点ではあります。
実は24路線もある海上国道
全国には24路線もの海上国道があります。残念ながらフェリーなどの廃止によって、現状では一本の交通系統として行き来できなくなってしまった路線もあります。沖縄の本島、宮古島、石垣島を結ぶ国道390号の大半は海上区間ですが、島と島とを結ぶフェリーは現在就航されていません。津軽海峡に海上区間を持ち、青森と北海道を結んでいる国道280号も現在フェリーは就航していません。今回利用した国道42号のフェリーも、実は最近まで廃止が危ぶまれていた航路だそうです。
海上国道の中には、国道280号の青森県外ヶ浜町(旧・三厩村)~北海道福島町間など、航路が廃止となってしまったものもあります
海に囲まれたわが国では、入り組んだ海岸線や大きな湾によって、陸路を移動する際に大きく迂回(うかい)を余儀なくされるところが多数あります。また離島も多く、橋やトンネルの技術が発達した現代でも船での往来が必要な地域も少なくありません。仮に航路で結ばれた二つの地域の道それぞれに違う国道番号が与えられたからといって通行に何の不便も生じません。たかが名前ですから。でも同じ名前の国道であること、そして航路自体も同じ名前の国道であることで得られる「一本の道としてつながっている感」には、ちょっと独特の感覚があり、されど名前とも思えます。
船が着いたら、国道の旅の続きです
筆者自身今回のドライブを機に知った海上国道。いろいろな地域で船+車のドライブを楽しんでみたくなりました。

高橋 学
たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。
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