写真・文=高橋 学

レインボーブリッジにも歩道が? 東京湾は歩いて渡れます

東京・愛知の個性的なデザインの巨大な橋を歩いて渡ってみました
高橋 学

今回のテーマは「橋」。川や海などを渡るために架けられた橋は、全国に70万橋ほどあるといわれています。規模の大きな橋の場合、歩道が設置されていないこともありますが、今回紹介するのはすべて歩道が設けられており、のんびりと歩いてみると、車で渡っていても気づかないような風景に出会えます。「日本と世界の道の雑学」では、これまで何気なく利用してきた道路を通るのがちょっぴり楽しくなりそうなお話をお届けします。

目次

大都市の風景を一望できる「レインボーブリッジ」(東京都)

今年30周年を迎えたレインボーブリッジのスペシャルライトアップと花火

今年30周年を迎えたレインボーブリッジの、7色に染まったスペシャルライトアップと花火。

レインボーブリッジは東京港の芝浦側とお台場側を結ぶ全長798mの吊り橋で、開通したのは1993年8月26日。正式名称を「東京港連絡橋」と言い、今年開通30周年を迎えた比較的新しい橋です。2階建ての構造で上部は首都高速、下部には中央に新交通システム「ゆりかもめ」が走り、その外には一般道の車道、そして端の部分には歩道があります。

2層構造の下段には歩道もあり、ここからの景色は格別

2層構造の下段には歩道もあり、ここからの景色は格別です。なお江戸文化の継承を表した江戸紫色のライトアップは8月25日のみの限定カラーでした。歩道は夜間閉鎖されるので注意。

この橋の特徴は何と言っても眼下に見渡す都心の眺め。車で走っても歩いて渡っても絶景で、個人的には車で渡る早朝の風景や、徒歩で楽しむ夜の晴海側(北側)の風景は特におすすめです。

レインボープロムナードと名付けられた歩道は、無料で通行できます。見上げれば巨大構造物、足元は海という高所恐怖症の人にはちょっぴりハードルが高いかもしれません。写真を撮ったり、ボーッと風景を眺めたりしながら歩いても片道40分程度で渡り切れるので散歩にも最適です。

開閉していた部分が緑色にライトアップされた勝鬨橋(かちどきばし) (東京都)

かつての可動部のみ緑色にライトアップされた勝鬨橋

かつての可動部のみ緑色にライトアップされた勝鬨橋。

勝鬨橋は、テレビでもおなじみの銀座のシンボルである和光の時計台や、銀座三越のある晴海通りが隅田川を渡るための橋。1940年に隅田川を行き交う船舶の航行のため、橋が跳ね上がる可動橋として開通しました。全長246mで両端のアーチ橋と中央部がハの字に跳ね上がる跳開橋(ちょうかいきょう)を組み合わせた独特のフォルムは、今見ても新鮮です。1970年の跳開を最後に可動橋としての役目を終え、現在は開かずの橋として都心の膨大な交通を支えています。機能が形となったフォルムや、可動部両端にある運転室や宿直室など4つの石造りの小屋などは現存しているので、歩いて渡ると特に歴史の面影を感じることができます。

道を歩いていると、かつて運転室や宿直室として使われていた石造りの小屋をくぐる。鉄鋼のアーチ橋と石の質感のコントラストに時代を感じる。

歩道を歩いていると、かつて運転室や宿直室として使われていた石造りの小屋をくぐる。鋼鉄のアーチ橋と石の質感のコントラストに時代を感じる。

勝鬨橋が再び跳ね上がる姿を見たいという声は、現在でもあるそうです。実現のハードルは高いものの、筆者もぜひ一度見てみたいものです。

日本を代表する建築家・黒川紀章による「豊田大橋」(愛知県)

黒川紀章によるデザインが印象的な豊田大橋。

黒川紀章によるデザインが印象的な豊田大橋。

建築家の黒川紀章による斬新なデザインが印象的なのが愛知県豊田市の「豊田大橋」です。車で走っていても、下を流れる矢作川(やはぎがわ)の河川敷から眺めても恐竜の骨のようなフォルムが圧倒的な存在感を放っています。隣接する豊田スタジアムも黒川紀章の手によるもので、こちらは世界ラリー選手権(WRC)・ラリージャパン のメイン会場となっています。名鉄豊田市駅とスタジアムを結ぶ豊田大橋は2023年11月16日から19日の開催時には、多くのラリーファンにも利用されることでしょう。

隣接する豊田スタジアムは2023年11月16~19日に開催されるWRCラリージャパンのメイン会場だ。

隣接する豊田スタジアムは今年11月16~19日に開催されるWRCラリージャパンのメイン会場だ。

黒川紀章が1970年代に描いた未来として多くの人に愛された中銀(なかぎん)カプセルタワービル(東京都中央区)は2022年に惜しくも解体されてしまいましたが、1999年に開通した豊田大橋はこれからも車や人の往来を支えながら目も楽しませてくれるでしょう。こちらも歩道がありますのでチャンスがあればぜひ空を見上げながら歩いてみてください。

中銀カプセルタワービルの画像

2022年に解体された中銀カプセルタワー。

中銀カプセルタワービルは、1972年に東京・銀座に竣工した黒川紀章設計のビルで、140個の交換可能なカプセル状の部屋で構成された集合住宅。そのアイデアの先進性と独特の形状で多くの建物好きに愛されたが、結局カプセルは一度も交換されることなく2022年に老朽化のため惜しまれながら解体された。

カプセルを保存する活動も行われており、北浦和公園(埼玉県さいたま市)や和歌山県立近代美術館(和歌山県和歌山市)などで展示されている。

黒川紀章による独特のデザイン越しに見る空が、不思議と気持ちいい。

黒川紀章による独特のデザイン越しに見る空が、不思議と気持ちいい。

今回ご紹介した橋はいずれも片側2車線以上の車道をもつ大型の橋ですが、日本には個性的な木造の橋や石橋、沈下橋など歴史的にも構造的にも個性豊かな橋が山のようにあります。ここでは今後もさまざまな橋に注目していきたいと思います。お楽しみに!

高橋 学

たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!