ヒャダイン台湾旅のイラスト
文=ヒャダイン / イラスト=大山功一

台北絶品ランチからの適当ドライブで廃墟にたどり着き…適当旅フォーエバー

タクシーで台北をお任せドライブ! 猫と廃墟に出会った旅
ヒャダイン

日本各地、そして海外へもひょいと身軽に旅に出るヒャダインさん。適当を愛し、気の向くままに旅をしてきた思い出を綴る「適当旅」の連載がついに最終回を迎えます。今回は台湾・台北が舞台。ラスト適当旅エピソードの始まり始まり!

目次

台北でお正月から適当旅はじめ

仲が良い友人3人と一緒にお正月休みに台北に行ってきました。大きい枠として「九份(きゅうふん)に行く」、「ガチョウを食べる」、「夜市に行く」といった予定は決めていたものの他はノープラン。すなわち適当旅でございます。類は友を呼ぶなんて素敵なことわざですよね。大切な正月休み、しかも海外で適当旅とはいい友達を持ったものです。
台北松山空港に着いて早速台北市街へ。まずはランチをしたいのですがこれまた適当旅。レビューサイトも見ないでふらふらしていると私の中の「濡れ頭巾センサー」がビクンとして入店です。小洒落た台湾料理店でチャーハンと卵焼きと棒々鶏(バンバンジー)を頼んだらうまいよ、うますぎるよ台湾。正直昔に比べて価格は高いですが価値ありだなあ。

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食べ散らかして汚いですね

食後間もなくむくむくと適当旅欲が湧き…

腹もいっぱいになったところなのですが、いかんせん目的地がない。九份にある宿に向かってもいいのですが、まだ時間がたっぷりあるので適当に冒険することにしました。Googleマップを開いたら車で30分くらいのところに海岸らしいところがあるじゃないか。とりあえず海でも見ていたら時間がつぶせるだろうという安易な考えのもとUberを頼みます。台湾語はまったくわからなくてもUberは目的地を設定できるから大変に便利ですね。ほどなくして女性ドライバーが来てくれて「Beach? 」と聞いてくれたので「YES! YES! 」と答えてニコニコ乗車、海岸へと向かいます。ワイワイガヤガヤしながら街を抜けて若干閑散とした街に到着。どうやら着いたようです。えっと……。確かに海岸ではあるんだけどめっちゃ狭い。ビーチというか漁村? 色気も素っ気もない水際に打ち付ける波は真っ白で激しく、まるで日本海です。台湾で日本海を感じるとは思わなかった。店なんてものはなにもなく、しばらく白波を見つめること5分。誰ともなく「行こうか…」と歩き出しました。

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また曇天ってのもあるんですよね

適当に任せて海を目指してクルマを走らせ

本当に何もない街でローカル客相手の弁当屋さんくらいしか見当たらない。とりあえず道沿いをとぼとぼと歩けど何も見当たらず。店の人のバイクに子猫が2匹戯れていて、「あらニャンちゃんこんにちは〜」なんて言いながら写真を撮っていると、向こうから車が来て我々の目の前に停まりました。誰かと思えば先ほどのUberの彼女で、携帯の翻訳アプリをこちらに差し出してきます。「ここら辺は景勝地ではありません。人々にここに行きたいかと質問したならば全員がノーと答えるでしょう」と書いてるではありませんか。少し変な日本語もあいまって全員大爆笑。ドライバーの彼女も大爆笑です。私も自分の携帯で「海が見たかったのですが残念でした。他に景勝地はありますか? 」と打ち込んで台湾語に変換! それを見た彼女はまたも大爆笑。「ほとんどないけど滝のようなものはあります。散歩もできます」と「黄金瀑布」と言う場所を勧めてくれました。ならそこに行こう、となったのですが彼女はタクシーではなくUberじゃないですか。料金とかどうしようとまごまごしてたら、「お金はいいから乗っけてってあげるから乗りな! 」。ええーー。台湾の方々親日家だとは聞いていましたが優しすぎる! 人として出来すぎてる。ご厚意に甘えさせてもらって乗車、運転している彼女に音声出力で「見るものがないから子猫を見ていました」と伝えるとまた爆笑。言葉の壁を機械が壊してくれる、まさにほんやくコンニャクの世界線、我々は未来に来たんだね、ドラえもん! そして黄金瀑布に到着です。

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黄金瀑布。見ようによっちゃ黄金

適当魂は言葉の壁を越え笑顔を生み出す

ドライバーの彼女にありがとう! といいお別れです。そういえばUberってチップ制度あったよな、と思い出し、お気持ちを送金して黄金瀑布見学です。ええ。奇麗だし不思議なんだけど3分見たらオッケーって感じ。ううう。ここまできてタダで帰れないと思っていたらちょっと離れた丘の上に廃墟があるじゃないですか。よし! 廃墟見学だ! 「散歩もできます」って言っていたのはこういうことなんだな、とハイキングが急遽スタートです。見ている分には近かった廃墟ですが思いの外に遠い。そしてしっかりと上り坂。重い荷物を背負って廃墟に向かって坂を登るお正月。え、なんか私悪いことしましたっけ? 罪を犯しましたっけ? まるで処刑されるような形相でみんなでぐちぐち言いながら登ること15分。ようやく到着の廃墟。説明文のパネルがあるものの台湾語。翻訳アプリを使ってもよくわからないのでとりあえず愛でることにしました。ふむ。しっかり廃墟である。サバゲーとかしたら楽しそうだな。やったことないけども。FF(ファイナルファンタジー)のような雰囲気にうっとりしていたら仲間の一人が「丘を降りたあたりになにかある! 」と言い出すじゃないですか。そりゃ向かうしかない。

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バイオハザード感もありますねえ

かくして逆方向に降りていく我々。いよいよ民家しかない。地元の人が訝しげに我々を見てくる。そりゃそうだよな、日本人が何しに来るんだよ漁村の住宅街に。しばらく歩けど目的の小屋みたいなところにはたどり着かず、ついに行き止まり。バス停があるんですが、1時間に1回しか来ない。やっぱりUberだよね。こんな僻地でもものの5分で来てくれるんです。おじさんのドライバーが迎えにきてくれたんですが、到着するやいなや台湾語で何か半笑いで語りかけてきました。我々誰も台湾語はわからないのですが、なぜか全員わかったんですよね。「お前らこんなところで何してんだ! 」。これまた運転手含め全員で爆笑でございました。

ところでこの連載ですがなんと今回で最終回でございます。皆様ぜひ適当旅を楽しんでください。人生適当くらいがちょうどいいんです、知らんけど!

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漁村の子猫ちゃん

ヒャダイン

音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。さまざまなアーティストに楽曲提供を行い、自身もタレントとして活動。「musicるTV」「久保みねヒャダこじらせナイト」「サウナを愛でたい」「おはよう朝日です」などテレビのレギュラー多数。

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