神出鬼没! ヒャダインの適当旅

縁もゆかりも行くつもりもなかった由利本荘の、レトロ喫茶店で食べたリンゴのおいしさよ

適当極まる山形・秋田ドライブ。思い付き旅の心地よさに浸る

ヒャダイン
2023.10.21

文=ヒャダイン / イラスト=大山功一

2023.10.21

文=ヒャダイン / イラスト=大山功一

定期的に衝動がくるという旅行熱に浮かされ、未踏の地、山形・秋田へと降り立ったヒャダインさん。まずは海鮮丼でおなかを満たし、東北通の友人がすすめるレトロ喫茶を訪問。人気(ひとけ)のない日本海沿いの国道をドライブするなかで、あてのない旅で出会うモノ・コトに身を任せる楽しさに浸ります。

航空券とレンタカーだけ予約して山形・秋田へ出発!

2021年3月。私はストレスがMAXでした。旅行できていない……。翌日から連休ということもあり衝動的に航空会社のHPへ。行ったことないところがいいと思い、山形・秋田を攻略することに決定。47都道府県を制覇していくのは本当に楽しい。山形県・庄内空港へのチケットとレンタカーだけ予約をして、宿は現地調達。現地での行き先だって決めていない。ガチめの適当旅のスタートです。

とてもこじんまりとしたかわいい地方空港でレンタカーを借りて、カーナビとスマホをBluetoothで接続したら準備OK。パットメセニーグループを流しながらざっとGoogleマップを見て行き先を決めます。へえ。庄内空港って海沿いなんだー(そんなことすらも知らない)、てことは漁港あるよね、と経験則を頼りに調べると酒田市に漁港食堂発見。まずは昼飯を食わねばなるまい、と20分走らせて到着。

酒田市で食べた海鮮丼の定食

都会で食べたら4,000円くらいしそうなクオリティが2,000円台でした。

そうそうこれこれ。海鮮丼と焼き魚とあら汁。くーっ! 日本酒飲みたいぜ、となるのをぐっとこらえて完食。さすが米どころ、丼の白米も美味でした。さてどこに行こう。3月とはいえさすがの東北。気温は7℃。あちこち歩くのは億劫であります。あ! そうだ! 「久保みねヒャダこじらせナイト」で共演している能町みね子さんが東北通だった。LINEで「山形秋田でおすすめありますか?」と尋ねたところ「行ったことはないけど由利本荘にいい喫茶店がありますよ」とのこと。たまらんですねレトロ喫茶店。由利本荘市。読み方もわからない不勉強さのままカーナビに入れて海沿いを走ります。にしても午後の日本海は本当に素晴らしいですね。

秋田・由利本荘のレトロ喫茶で食べた“おりんご”の味

由利本荘に到着。ふむ。本当に何もない。人がそもそも歩いていない。お目当ての喫茶店「サモワール」っぽい場所に来たのですが看板すらなく「営業中」とだけ。うーん。おっかない。

純喫茶サモワールの外観

この外観である。

しかし中に入るとあらびっくり。昭和レトロ極まる素晴らしい内装。妙齢のおねえさま一人で経営されていて中には常連の女性が一人。お国言葉で楽しく会話されているところに入り込む都会人、なんとも肩身が狭い。「とりあえずコーヒーを」。曲線美が美しい内装を愛でながら時を過ごすとコーヒーが。ああ。おいしい。

由利本荘市の純喫茶、サモワールの内観

素晴らしいステンドグラス

「うちの店、雑誌に載っているのよ」とおねえさまが雑誌を見せてくださる。確かにこれは表紙にしたくなるよなあ。すると「おりんご食べる?」と。おりんご!! そりゃあもう。二つ返事を返すとかわいいかわいいりんごのプレゼント。

サモワールで食べたおりんご

葉のあしらいが見事。

「どこから?」「東京です」のようななんでもない会話が非常に心地よく、名物だというクリームソーダを追加注文。

サモワールで注文したクリームソーダ

ザ・クリームソーダ。

鮮やかな緑と爽やかなアイス、BGMで流れる洋楽が私を昭和へとふっ飛ばしてくれる。由利本荘。ここに昭和はあったのか。間もなく厨房からなにやら煮物のようないい香り! これはまさか煮物までご馳走になれちゃう!? と思ったら「夜ご飯作ってるのー」とチャーミング。さすがにご相伴にはあずかれず、想定より随分長くいた喫茶店をあとに。また来ます。

恒例の夕焼け撮影とナマハゲとの対面も達成

さて、本当に予定がない。まあとりあえず行ったことがない街、秋田市に行ってみるかと秋田市内のホテルを適当に取り車を走らせる。途中、日本海の夕焼けとともに自撮り。

秋田の海岸で撮った夕日ショット

肝心の太陽が写っていないという。

チェックインして繁華街に向かうと、まあ多い多い運転代行。地方都市って運転代行が異様に浸透しているところとまったくないところに分かれるんですよね。まあ電車の普及も影響しているとは思うのですが、やはり寒い街だから車で来たいのかな。とにかく日本酒と秋田名物を食べたいのでナマハゲがデデンといる店に決定。

秋田名物を求めて入ったナマハゲのいる居酒屋

しっかり怖い。

観光客用の店なのかなと訝(いぶか)しんでいた私ですが続々と地元の方々が入ってきて、ほっとしました。日本酒、海鮮、そしてなんといってもきりたんぽ! 米のお酒で米を食う。お米最高! あとは宿に帰って寝るだけなのでしこたまひとり酒。ひとり酒はペースが早くなっていけませんな。ふらふらになりながら就寝。

横手やきそばを完食し、秘湯に浸かって大満足

二日目、雨。庄内空港に戻るだけなのでとりあえずB級グルメの代名詞、横手やきそばを食べようとカーナビセット。闇雲に横手へGO! いやー、土地勘がないってのは恐ろしいもので横手市ってめっちゃ内陸なんですねえ。3月。あれ? 残雪だなあ。奇麗だなあ、からどんどん吹雪いていきます。スタッドレスタイヤで借りていてよかった! とはいえ無計画な自分を反省。白銀の世界の中、焼きそば求めて進みます。どうにか到着。少し列ができてるけどへっちゃらです。

B級グルメの横手やきそば

大盛り、いけました。

お店の人にサインしたらお土産で焼きそばセットもらっちゃった。ラッキー。温浴施設にも行きたいな、てことでこれまた適当に近くの温泉へ寄ることに。サウナはないけどお湯の水質が油臭のような温泉、という評価の山形県鮭川村の羽根沢(はねさわ)温泉へ。うん。これは油だ。ローションというより油。しかもかなりの山奥で秘湯感がすごい。なんだか「注文の多いレストラン」の客のような気分になって、少し足早に去ることに。

羽根沢温泉で飾られていた雛飾り

施設に複数個雛壇があった。

かくして無事に庄内空港へ戻ってきた私です。この旅ほど無計画なものはなかったなあ、と改めて思うのですが、こうやって記憶に鮮明に刻まれる経験ができたのは適当旅の醍醐味だよなあと感じております。その後「サウナを愛でたい」で山形や秋田を複数箇所巡ることになっても、この旅でのことを思い返してあの優しいかわいいリンゴをもう一度食べたいなあと由利本荘の方角を眺める私でした。さて次回はチェコでの適当旅。失敗からの成功の味をお届けします。

ヒャダイン

音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。さまざまなアーティストに楽曲提供を行い、自身もタレントとして活動。「musicるTV」「久保みねヒャダこじらせナイト」「サウナを愛でたい」「おはよう朝日です」などテレビのレギュラー多数。

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