ホタテを求めて北海道の猿払へ弾丸ドライブ。北の大地をひた走り無敵のウニ丼を経てノリで延泊
年季の入ったカローラスパシオを相棒に、極上のホタテ食べたさに道北を行くヒャダインさんが適当に旅した思い出を綴るエッセイ。4回目は、北海道・猿払を訪れます。とある番組で長州力さんが「うますぎて、トブぞ!」と評したホタテを求めて、相棒の"平成感あふれる"レンタカーで道北をドライブ。果たして、ホタテでトブことはできたのでしょうか……。
「トブほどのホタテ」が食べたくて…
時は少し遡(さかのぼ)りまして2020年9月21日敬老の日、コロナが未曽有の猛威を振るうなか、私はストレスMAXでした。「ああ、適当旅がしたい」。緊急事態宣言が明け、県を跨(また)ぐことが許されたタイミングで、ぽっかりと2日間休みがあるじゃないか、そして北海道が全面的に晴れではないか。てなわけで急遽(きゅうきょ)飛行機の予約を取って北海道へと。(1日前に決めるので天気にハズレがないのも適当旅の醍醐味ですね。)というのも、テレビ番組「相席食堂」で長州力さんが北海道の北の端、猿払(さるふつ)でホタテを食べて「これ食ってみろ、トブぞ」と名言を落とされていてそれがネットで話題になっていたんですね。トブほどのホタテ、そりゃあ食べたいじゃないですか! しかも秋の北海道。気持ちいいに決まっている。しかし猿払村は遠い。一番近い空港からでも車で1時間半。ま、なんとかなるでしょ! とオホーツク紋別(もんべつ)空港までの航空券と、猿払の道の駅の中にある宿舎の予約完了。いざ北の地へ。
北海道旅の相棒、レンタカーをなんとか確保
おっと。忘れてた、レンタカー。北海道は足がなかったらどうにもなりません。さて予約しよう……。え? 満車? ちょっと離れた街でいいか。え? 満車? やばいやばい。エアも宿も取ったのに! そうだ忘れてた。今は敬老の日と秋分の日ががっちゃんこして連休になっているんだった。そりゃ取れないよね!! 自分の間抜けさを恨みつつ、手あたり次第電話攻撃。すると遠軽(えんがる)という、空港から車で1時間の町のガソリンスタンドで1台貸してくださると! 拾う神登場ですね。本当にありがたい。遠軽まではタクシーで行こう。高くつくが勉強代だ。
飛行機降りたら歩くタイプの空港。
飛行機降りたらすぐにタクシーに乗って遠軽へと。タクシーの運転手さんに事情を説明したら笑ってくれて、そこから最近のシャケ事情や鹿の捌(さば)き方まで教えてもらう。基本私は旅で人と交流しないので嬉しいですね、こういうのも。1時間くらいして到着。ガソスタに行ってレンタカーの旨を伝えると、「ああ、どうぞどうぞー」と明るく対応していただいた。えっと。どの車かな? ん? これ? スパシオ。カローラスパシオじゃないか!! うわー。久しぶりに見るな。しかも4WD。デザインが平成って感じでゾクゾクします。いざ出発! えっと、スマホつなぐケーブルは……ないよね! そりゃそう。じゃあラジオでも……音質が昭和。戦後まもなく感。アクセルを踏むとブボボボボボ。さながら工事現場のようです。いやいや、車があるだけありがたいじゃないの。2日間よろしくね相棒、と言ったら排気音にかき消されました。
相棒の写真。丸っこくてかわいいですね。
さあさあ、いざ猿払へ! オホーツク海沿いをひたすら北上です。天気も良くて気持ちがいい。そして道北あるあるですが、だんだん植生が変わってくるのが楽しいです。風を遮るものがない、ということもあり風力発電の数も桁違い。まるで知らない国に来たみたいな感覚で走り続けます。空は夕焼けに染まり始め、パット・メセニー・グループのメランコリックな楽曲が頭で鳴り始めます。ブボボボボボボボ。
この景色は一生忘れないほど美しかったです。
ようやくたどり着いた猿払。待望のホタテにありついた!?
適当旅の醍醐味、自分のペースで適当に車を停めて撮影したり、スマホから曲を聴いたり。なんだかんだで猿払に着くのが遅くなってしまいました。道の駅はすでに閉店。お土産買うチャンスを逸する。まあいいや、今から「トブ」ホタテを食べられるんだから問題ない。ペコペコになった腹の虫をなだめすかしながらチェックインです。すると食事の時刻を決める際に従業員の方が申し訳なさそうに言うではありませんか。「あのー。実はですね、昨日、海が大シケで漁に出ることができず、今日のお料理のホタテは冷凍ものになります、申し訳ございません」。ん。はい? なんですと? え! えええ? ホタテってそういうシステムなの? 前日の海で左右されるものなの? 嗚呼、あまりに都会人な私。無知が辛い。脳みその半分で「こんな遠くまで来てるんだから勘弁してくれよー」と「なんで事前に電話確認しなかったの無知で馬鹿で都会人な私」という二派が大喧嘩。これ、誰かと来てたら喧嘩になったかもしれませんが、適当一人旅だから自分と自分の喧嘩です。ふてくされながら冷凍のホタテの定食を食べてさっさと寝る。
無敵の生ウニ丼を堪能してホタテリベンジ!
さて翌日何をしよう。何も決めていない。せっかくだから日本海側を通ってみたい、と自分リクエストが通り、宗谷岬経由で留萌(るもい)、そして旭川からの紋別空港へと。まず1時間くらいで北端へ。ホタテの恨みもあるので豪勢に海鮮丼をやってやりました。ツイッターにのせたら軽くバズりました。ウニ、最強。
「無敵の生ウニ丼」。たしかに敵などいないクオリティーでした。
しかし、私は北海道の縮尺を舐めていた。全然着かない。標識を見てもえげつないkmが表示されている。人間っておもしろいもので、そっちで順応するんですねえ。「ああ、あと200kmか。もうすぐじゃん」的な。途中、まるでオープンワールドゲームに出てくるような神社を発見、寄り道しちゃいますねえ。ゴースト・オブ・ツシマ感。
アイテムもらえるか、中ボスいるか、て感じですね。
走れども走れども着かない目的地。延泊を決め旭川泊
しかし、途中で気づくわけです。「こりゃ間に合わねえぞ」と。帰りのエアは取っていなかったのでとりあえずレンタカー屋さんに電話したら「大丈夫ですよー」と相棒の延長に成功。少しゆったりした気分で旭川泊を決定。パリ街という趣のある飲み屋街にある行きつけの店でおでんと日本酒でしっかり2日目を終わらせました。
味がしみた車麩が絶品です。
かくして適当が過ぎて延泊することになったホタテ旅。お目当ての「トブホタテ」は結果食べることができませんでしたが、スパシオ越しに見た数々の絶景、空に吸い込まれそうになるかと思ったオロロンラインは何にも代え難いものとなりました。また今年も秋の北海道へ飛んでいきたいものです。さて、次回はマレーシアの首都クアラルンプールでの適当旅。駅ガチャからの廃虚探索です。お楽しみに!
ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。さまざまなアーティストに楽曲提供を行い、自身もタレントとして活動。「musicるTV」「久保みねヒャダこじらせナイト」「サウナを愛でたい」「おはよう朝日です」などテレビのレギュラー多数。