安東弘樹さんが熱く語る、電気自動車のF1「フォーミュラE 東京E-Prix」の魅力

東京の都市部・有明のストリートがサーキットに!
安東弘樹

安東弘樹さんが日本初開催となったフォーミュラE 東京ラウンドを観戦。公道サーキットならではのメリットと、電気自動車レースならではの魅力とは? 無類のクルマ好きとして知られるフリーアナウンサー安東弘樹さんが、クルマにまつわるさまざまな出来事と自らの思いを伝えるエッセーです。

目次

日本初開催! 新時代のモータースポーツが東京にやってきた!

2024年3月30日(土)、日本のモータースポーツ史に新たなページが書き加えられました。

その日、日本で初めてのレーシングカーによるストリートサーキット(公道を含む)での世界選手権、FIAフォーミュラE 東京E-Prix(東京ラウンド)が開催されたのです。

フォーミュラEとは電気自動車のフォーミュラカーによるレースで、10か国、10の「都市」で16戦が開催され、11チーム22人のドライバーが年間チャンピオンを目指して競い合います。

東京ラウンドはフォーミュラEの歴史の中で初開催。電気自動車で競うため、大きなエンジン音と排気ガスが排出されないことから、世界の「都市」で開催されている、というわけです。

安東さんも実感! 都市開催レースのメリットとは?

私は今回、東京E-Prixのプロモーション用動画のナレーションとリポーターを務め、この歴史的な瞬間に立ち会えました。

その仕事自体は2日前に終わっていましたので、レース当日はグランドスタンドの客席から観戦。

私は同日に行われる予選から観たかったため、朝10時にはコースの中心に位置する東京ビッグサイト近くまで、自分のクルマで赴きました。

そこで、あらためて、この世界選手権のレースが「新時代のモータースポーツ」ということを実感します。フォーミュラEは電気自動車のレースですので、それだけでも「新時代」と言えるのですが、理由はそれだけではありません。

これまでのモータースポーツは基本、多くは都市部から離れた場所に位置するサーキットで行われ、公道を走るラリーでも都市部で開催されることはありませんでした。

私は周囲の駐車場は早朝から満車になっているだろうと覚悟していましたが、周囲の商業ビルに、もともと多くの駐車場がある上に、会場の東京ビッグサイトには数々の公共交通機関でアクセスが可能で、恐らく多くの方が、それらを使って会場に足を運ぶのか、予選開始の1時間半前の午前9時近くの段階では会場近くの商業ビルの駐車場に止められたのです。

クルマをあっさりと止められたときには正直、来場者が少ないのではないかと心配になりましたが、現場に着くと「駅」のほうから沢山の来場者が集まっており安心しました(笑)。

まず、ここで「新時代」を感じることになります。周りには高層ビルが建ち並ぶ「有明」という都市部の駅近くにレース場がある、ということを実感したのです。もちろん、事前の取材で頭では理解していたつもりですが、実際に駅から来場者が直接、会場にアクセスできる、ということの意味を実感することになりました。

フォーミュラEが子供やレース初心者にもおすすめの理由

今回、チケット自体はなんと販売開始から2、3分で完売、という状況でしたが、イベントの種類によっては、チケットが売れても来場しない人が多い場合もあるので、実際に当日になってみないと来場者数は未知数です。

東京ビッグサイト周辺に設置されたフォーミュラE 東京ラウンドのコース

東京ビッグサイト周辺に設置されたフォーミュラE 東京ラウンドのコース

東京ビッグサイト周辺に設置されたフォーミュラE 東京ラウンドのコース

しかし、当日の様子を見て安心しました。天気に恵まれたこともあり、決勝では完全に席は埋まっていました。

しかも、これも都市部開催ならではの利点だと思いますが、ビッグサイトの大きな室内会場をファンヴィレッジとして、チケットを持っていない来場者に無料で開放し、そこに設置されている大きなモニターでパブリックビューイングをすることも可能です。

さらにリアルなシミュレーターやタイヤ交換体験ができるブースなどが置かれ、それも無料で楽しめました。さらには多くのキッチンカーが並び、さまざまなグルメも楽しめるのです。

そう、これまでのモータースポーツではチケットを持っていない来場者が楽しむことは不可能ですし、モータースポーツの裾野を広げる、という意味でも意義深いレースであったと実感しました。

実は私の長男はモータースポーツが大好きなのですが、次男は少し敬遠気味になっています。

というのも長男は幼児期から映像コンテンツなどを楽しんだ後に、小学校低学年のときにサーキットレースを初めて観戦したので、最初から興奮気味にリアル観戦を楽しんだのですが、次男は事前知識もなく、4歳で、いきなりサーキットで生のマシンの音を聞き、完全におびえてしまいました。

それ以来、「絶対にサーキットは行かない」ということになったのです……。

これは私の失敗なのですが、フォーミュラEが最初の生観戦だったら、音に驚くことはないですし、レース会場以外でも十分、楽しめますので、レース初観戦の方にもすすめられます。

勝者は日産? マセラティ? 東京ラウンドの結果は?

レースは2018年から参戦している、唯一の日本チーム、ニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランド選手がポールポジションから、正に激闘の末、2位表彰台を獲得し、大いに盛り上がりました。

優勝したマセラティMSGレーシングのマキシミリアン・ギュンター選手と最後の最後まで接戦が続き、私と一緒に観戦したマネージャーも最後は立ち上がって声援を送っていました。

ちなみにマネージャー、レース観戦は初めてで、ルールもまったく知りません。予選から隣で私が説明をしながらの観戦でしたが、決勝は「十分、楽しめました!」と話してくれました。

今回の東京ラウンドで2位となったニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランド選手

今回の東京ラウンドで2位となったニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランド選手

フォーミュラEはエンジンのレースと違って音も静かで排気ガスの影響もないため、客席とコースの距離が近いのも迫力を感じられる要因かもしれません。

今回、レース後に発表された来場者数は2万人、ということで、まだまだF1や他の人気レースと比べれば数は少ないですが、始まったばかりの日本のストリートサーキットレース。これから、どんな発展を遂げていくのか。メディアの側としてもファンとしても楽しみです。

安東弘樹

あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、TOKYO MX「バラいろダンディ」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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