安東弘樹さんが感じる「運転が目的になるクルマ」の条件

国産オープンカーを通じて、安東さんが自動車業界に伝えたいこととは?
安東弘樹

安東弘樹さんに「なぜこれまで愛車にしてこなかったのか」と後悔させ、「最上級の濃度でずっと運転していたい! 」とまで言わしめたクルマとは何でしょう? そして安東さんがそのクルマを通じて伝えたかった気持ちとは? 無類のクルマ好きとして知られるフリーアナウンサー安東弘樹さんが、クルマにまつわるさまざまな出来事と自らの思いを伝えるエッセーです。

目次

安東さんが後悔!? 「なぜこのクルマを愛車にしなかったのか」

先日、新しくなったMAZDA・ロードスターに乗りました。このクルマに関しての詳しい改良点や乗り味に関しては、私の他のコラムや記事をご覧いただくとして(笑)、今回、ここでお伝えしたいのは、このクルマが運転そのものを楽しむために作られている、ということです。

ご存じの方も多いと思いますが、このクルマは初代の「ユーノス・ロードスター」時代から最新の4代目まで、ずっと、二人乗りのオープンカーです。

初代の発売はバブル景気真っただ中の1989年。人々に経済的余裕があったことも影響して、不便? なオープン2シーターの、このクルマは売れました。しかも世界の自動車業界にも影響を与え、多くのメーカーが二人乗りのオープンモデルを続々と売り出したのです。

特に、このロードスターは、小さく、軽く、自分の運転操作にリニアに動いてくれる「人馬一体」感にあふれ、世界中に愛好家が誕生しました。

世界のファンの皆さんは、あらためて、クルマが自分の操作にリニアに動くと、運転自体がエンターテインメントになる、ということに気づいたのではないでしょうか。

私は、6年ほど前に、あるテレビ番組で初代モデルを初めて運転しました。その時の感想は「なぜ、このクルマを、これまで愛車にしてこなかったのか」という大きな後悔でした。

それほどまでに、運転自体が楽しかったのです。

MAZDAロードスター

MAZDA・ロードスター

安東さんが「最上級の濃度」で永遠に運転していたい理由

もちろん私は、どんなクルマに乗っても永遠に運転していたい、という想いは変わらないのですが、クルマによって、その気持ちの「濃度」は変わります。

初代ロードスターを運転したとき、いきなり「最上級の濃度」の楽しさが私の身体を駆け巡ったのです!

軽量コンパクトなボディに、普通のエンジン。前後重量比だとかパワーウエイトレシオ、などといった数字などどうでもよく(その恩恵があるから楽しいのですが)、とにかく自分の思うがままに進み、曲がり、止まる。それだけで運転というモノがどんなに楽しい行為か、それをあらためて教えてくれました。

逆に言うと、その基本的な運転の楽しさをドライバーに与えてくれるクルマが、実は少ない、ということにも気づかされます。

どちらかと言えば最近、ボディサイズの割に室内空間が広大、だとか、どれだけ荷物を積めるか、など、数字としての効率の話が優先されがちです。

ただ、キャンプが趣味だとか、子どもが多い、など物理的な理由でクルマを選ぶ場合以外は、道を走る車のほとんどが一人で運転されていることが多く、休日の家族連れでもない限り、3人以上乗って、車で移動する機会は、さほど多くはないのではないでしょうか。

移動する手段として、二人乗りのオープンカーを選ぶという感覚はない、という方は多いと思います。

ただ、もし独身で趣味が欲しい、一応、自動車の運転免許は持っている、という方。私はあえて二人乗りの、このロードスターのようなクルマの購入をお勧めします。都心部で駐車場事情が厳しい、という方には無責任に勧められませんが、そうでなければ考えてみていただきたいのです。

MAZDAロードスターの室内

確かに「オープンカー」というとハードルが高いように思えますが、輸入車ならともかく、ロードスターでしたら、周りの目も気にならないと思います。

本当にだまされたと思って、どこかに行く手段ではなく、運転すること自体が目的になるクルマに一度、乗ってみてください。

オートマチック限定免許だとしても構いません。もちろんMTの良さを知っていただきたいのはやまやまですが、まずは運転を楽しい、と感じてほしいのです。

そして、ロードスターというクルマ、特に中古車はATモデルのほうがリーズナブル、という特徴もありますので(笑)、ぜひ、試してみてください。

安東さんの願いは「関わる人が楽しくなる」クルマ作り

今回、もちろん宣伝がしたくて、このコラムを書いたわけではありません。

昨今、さまざまな問題で日本の自動車業界が揺れています。そして、どの問題にも、作り手の、特に現場の苦悩が見えてきました。

ところが今回のクルマを作っているエンジニアと話をしたとき、その若さに驚き、何より、説明する様子が楽しそうだったのです。運転が楽しいクルマを作るのは、やはり楽しいのだな、と実感しました。

関わる人が皆、楽しいクルマ。日本の自動車産業の活性化のヒントになるのではないか。今回の試乗で、そんなことを感じたのです。

安東弘樹

あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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