ガソリン車、ディーゼル車、BEV。安東弘樹さんが3台の車を乗り分ける理由

エンジン派? EV派?の対立構造は残念!
安東弘樹

3台のマイカーを乗り分ける安東弘樹さんが「エンジン派」や「EV派」といった、クルマ好き同士ならではの対立について物申す! 無類のクルマ好きとして知られるフリーアナウンサー安東弘樹さんが、クルマにまつわるさまざまな出来事と自らの思いを伝えるエッセーです。

目次

パワーユニットによる特性、美点、欠点とは?

現在、私はガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、BEV(純電気自動車)に乗っています。用途に応じて使い分けている状態です。なぜなら、それぞれのパワーユニット(動力源)によって特性、美点、欠点が違うからです。

ガソリン車はMT(マニュアルトランスミッション)で、運転そのものを楽しむ趣味としての用途がメイン。ディーゼル車は燃費が良くボディも大きいので長距離を走るときや家族全員で移動する場合に使い、BEVは仕事移動や近所への買い物、または家族の送迎などに使っています。

私はクルママニアであり、仕事も1/3はクルマ関係。さらに都内ではなく郊外の住宅街に住んでいる、という特性や条件があるため、一人で3台を使い分けていますが、クルマが趣味ではない方は1台で、ご自分のライフスタイルに応じてクルマを選ぶ、ということになるのではないでしょうか。

ディーゼル車

ディーゼル車の例

クルマ好き同士が陥りがちな「対立構造」

以前、私は「クルマ好き」同士が、たとえば日本メーカー好きvs輸入車好きなど、対立構造になりがちなのが残念で、それぞれに良さがあるので、それを認め合えばいいだけ、という記事を書いて、多くの反響をいただいたことがあります。

そして現在は、それが内燃機関(ハイブリッド含む)vs BEVという構造に変わり、インターネットや投稿サイトの普及により、以前より過熱しているように感じられます。特にBEVに対しての「アレルギー」と言えるまでの論調が蔓延(まんえん)していることが残念でなりません。

たしかに、ひと頃、各国が内燃機関のクルマを締め出す、という類いのニュースばかりが報じられ、その反発もあるでしょう。しかも日本メーカーは遅れている、という趣旨の報道も多く見られたことから「ナショナリズム」が刺激された、という要因もあるかもしれません。

BEV一辺倒の風潮と「アンチ」の論調とは?

私も、この行き過ぎた報道には疑問を持っていました。

あたかも、内燃機関のクルマには近い将来、乗れなくなる、というニュアンスが伝わっていたからです。そうしたことから、ネットでは「海外メーカーはエンジンで日本メーカーにかなわないから、BEVに流れている」という、残念ながら、「的外れな」論調も見られるようになっています。

BEV一辺倒の風潮に大反対している日本のジャーナリストでさえ、エンジンで海外メーカーが日本メーカーにかなわないから、とは言っていません。多くの海外メーカーのエンジンの素晴らしさも知っているからです。これは燃費性能も含めて、です。

かつて、輸入車は「すぐに壊れる」などと日本メーカーの優位性を主張する方も見られましたが、今は、それがBEVに移行して、「冬場は使えない」「立ち往生になったら凍死する」「火力発電による電気を使っているからエコではない」「だからBEVはゴミ・完全終了」という主張が特にネットや動画投稿サイト上で大量に見られます。

しかし地球の環境負荷を減らすのは喫緊の課題で、それに対してさまざまな選択肢が必要なのは間違いないのです。このまま世界で15億台以上のクルマが排気ガスを出し続けていいわけはありません。

そのためには、一人ひとりの用途に合わせた効率的な動力のクルマを選ぶのが環境負荷減少への近道であると、私は考えます。

これからのカーライフに必要なのは「認め合い」

基本的には短距離しか乗らず、自宅が戸建ての方は確実にBEVが合っています。自宅で常に充電できるからです。それに特にエンジン小型車から乗り換えると、その加速の力強さ、気持ち良さ、さらに静かさに感動すると思います。私のようにソーラー発電を併用すると、ランニングコストは、ほぼかかりません。

燃料費が今後、劇的に安くなるとは考えにくいので、初期費用は数年で回収できるはずです。ソーラー発電は高騰する電気代対策としても有効です。しかも電気代が抑えられる、ということは、環境負荷が減っている、ということですので、美点のほうが多くなるのではないでしょうか。

BEV

充電中のBEV

一方、長距離を頻繁に走る、という方にはディーゼルエンジン。普段は短距離走行が中心でも長距離を走ることもまれではない、という方には、ガソリンハイブリッドエンジンがおすすめです。

そして、趣味としてのクルマがメインで基本的には週末しか乗らない、という方でしたら、ガソリンエンジンのスポーツカーやディーゼルのオフロード車など、自分が運転して気持ちの良いクルマを選んでいいと思います。

それぞれ、満足してクルマを楽しんでいれば、他の動力源を持つクルマを責める必要はないと思うのです。

燃料価格高騰の折、もう少しBEVが増えれば、燃料の需要が減り、燃料価格が下がるかもしれません。完璧な動力源が存在しない今、さまざまなクルマが共存するのが、もっとも健康的と言えるのではないでしょうか。

世界のメーカーもまさに試行錯誤しています。この混沌とした100年に一度、と言われる自動車の転換期、各国のメーカー同士は、かつてのライバル関係から、統合や協調へと流れが変わっています。

われわれユーザーも、たとえばエンジン車ユーザーがBEVを見たら「ガソリンの需要量を減らしてくれて助かります」、逆にBEVユーザーはエンジンユーザーに対して「電力需要を減らして、充電器の混雑を減らしてくれて助かります」と、皮肉ではなく、心から感謝し合うのが理想だと思いますが、いかがでしょうか?

安東弘樹

あんどう・ひろき 1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサー。1991年にTBSテレビに入社後、さまざまなテレビ、ラジオの報道やバラエティなどの番組を担当。19歳の免許取得から現在までに、45台以上のクルマを乗り継ぐ経験と知識を生かし、活躍の場を広げている。現在はTBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり~」、bayfm78 「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。2017年より「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」選考委員。2024年より日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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